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エピローグ 収穫祭

 それから俺は「ドラゴン魔神を勇者アレスが倒す際に補助的な役割を果たした」として、王から報奨金の50万ガランを受け取り、サラと折半した。


 俺はついでに王に頼み込んで、ドラゴン岩のいざこざがあったラニカ村の領主にさせて貰った。領主が空席だった事もあり、王はすんなり承諾してくれた。

 

 後で判明したことだが、あのドラゴン魔神は魔術院の残党が復活させた古代兵器だったとのことだ。残党は全員捕まったのでこの件は一件落着だろう。

 

 そして、俺達は以前とあまり変わらない生活を送っていた。

 変わった事と言えば、サラと小さな屋敷を買った事と、ラニカ村に多額の投資をしてぶどう畑を作って、紆余曲折ありつつ初収穫に成功した事だろうか。

 

 それと最近は指輪のお陰で訓練の効率が上がり、たまにサラとコボルド退治に手を出すようになった。

 

「ではこれより、第二次収穫祭を始める!」


 ラニカ村でも盛大に収穫祭をやったが、家ではまだやっていなかった。

 リビングのテーブルには、いつものようにサラとクリスタとカミココとピ太郎が集まっていた。


 テーブルの上には多種多様なぶどうや、ぶどう菓子や、ワインやぶどうジュースの瓶が並んでいる。


「ケンスケさん! よろしくおねがいします!」


 サラはガチガチに固まってしまっている。


「そんな畏まるなよー」


 クリスタが茶化すように言った。


「ぶどうおいしい!」


 カミココは素知らぬ顔でぶどうを摘まんでいる。


「おいまだ乾杯してないだろ! 勝手に食べるなカミココ!」


「はーい」


 カミココが口に含んだぶどうを飲み込むのを待って、俺はなるべく荘厳な口調で宣言した。


「えーっと! 今日は皆さんに報告があります!」


「おっ! サラとの子供でも出来たか?」


「バカ! 何言ってんだクリスタ! 違うよ!」


「……もうクリスちゃん!」


「ごめんごめん」


 サラは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 俺はサラが落ち着くのを待って、大きな声で言った。


「俺達、付き合う事にしました!」


 俺がサラの肩に手を回すと、サラは照れながらもそっと腕を握ってくれた。


「……はあ? 結婚じゃねえのかよ?」


「結婚じゃねえよ。そういう事は段階踏んでいく物なの!」


「私もダリム君と付き合ってるよー」


 ――は? ……マジか。


 俺はカミココの言葉に耳を疑った。

 そして思わず口をあんぐり開けてしまい、ショックを隠し切れなかった。


「……まだちょっと早いんじゃないか?」


「人の勝手じゃん! シスロリコン!」


「ケンスケさん! シスコンはダメですよ!」


「ダメだぞーケンスケ!」


 カミココは中身こそあまり変わっていないが、見た目はすっかり成長してしまっていたし、彼氏の一人くらい出来ていてもおかしくないか。


「分かった! ただし、エッチな事はするんじゃないぞ!」


「はいはーい」


 ――昔は「お兄ちゃん大好き」とか言ってたのに寂しいもんだな。

 遠い目をする俺をよそに、クリスタがハッとしたように言った。


「ちょっと待てよ、じゃあこの中で相手がいないのって私とピ太郎だけか?」


「……ピー!」


 ピ太郎がクリスタの肩に寄りそうようにそっと舞い降りた。


「ピ太郎……私さみしいよお。あ、そうだケンスケ! ミザキさん紹介してくれよ!」


「……お前ああいうのが好みだったのか」


「……へークリスちゃんがねー。……意外ですねー」


「うるせーなー! 顔が好みなんだよ!」


「ダリム君もカッコいいよ!」


「何だと! お兄ちゃんよりもか?」


「うん!」


 ロビーに笑い声が響く。


 ――幸せだ。

 俺は家族との楽しいひと時を心の底から楽しんでいた。


「じゃあ、そろそろ行くか!」


 俺がそう言うと、一同は静まり返って俺を見つめた。


「我が家族と、アドラント大通りと、ラニカ村の益々の繁栄を祈って! 乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 立ち込めるぶどうの香りの中に、グラスがぶつかり合う音が響き渡った。



ここまで読んでいただきありがとうございました!

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