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11話 マジメカタッグバトル!(前編)

「あれ? 今日はスライム討伐クエストないんですか?」


 そう尋ねたサラに、ギルドのお姉さんが答えた。


「……はい。最近雨が少ないせいかスライムは殆ど出ていません」


 ……と言う訳で、今日は休みになった。

 仕方ないので、俺はピ太郎を肩に乗せて北西広場で初心者用の魔導書を読んでいた。

 サラはというと噴水の近くで熱心に素振りをしている。


「おい! ケンスケ!」


 顔を上げてみると大鎧マジメカのゴレタを侍らせたベルベが立っていた。


「……ベルベか。何か用か?」


「ふっふーん! 今回はお前にも良い話を持って来てやったぜ!」


 ベルベはいつものスパッツの上から赤いスカートを履いているし、白いシャツもフリルが付いているし、おめかししている感じだ。……悔しいが少し可愛いと思ってしまった。

 ――しかし悪くない話って何だ? また限定ぶどうゼリー転売とか下らない事考えてるんじゃないだろうな……。


「これを見ろ! ケンスケ!」


「マジメカダッグバトル世界大会?」


 ベルベが掲げたチラシにはデカデカと赤文字でそう書いてあった。


「そうだ! マジメカを2対2で戦わせて優勝したら10万ガラン貰えるんだぜー! 私のゴレタとお前のピ太郎なら優勝間違いなしだ!」


「壊れたりはしないのか?」


「大丈夫。マジメカは中心の術印が完全に破壊されなければ自動で修復できるようになってるんだ」


 そういや以前ピ太郎がゴレタを結構強烈に倒したはずだが、今は何ともなさそうだ。


「ピピー!」


 ピ太郎はやる気満々と言った感じで軽く炎を吐いた。

 まあ、ピ太郎も男の子……なのかは知らないが、そういうのが好きなんだろう。

 ……俺も嫌いじゃないぜそういうの。


「よしいいだろう! 賞金は折半だからな!」


 最近いい加減金欠が限界に来ていて、ピ太郎用のオイルも安いのしか買えない有様だったのでこの提案は渡りに船だった。

 優勝して悪目立ちするのは嫌だが、表彰式はベルベに任せて賞金だけ受け取れば問題ないだろう。


 早速俺はピ太郎を肩に乗せてベルベとゴレタと共に、北門の傍に停まっている大きな貸し切り飛行船に乗り込んだ。

 飛行船の中は人とマジメカでごった返していて窮屈だった。


「頑張ってくださいケンスケ様!」


「優勝したら焼き肉奢れよー!」


「おう! 頑張ってくるぜー! な? ピ太郎」


「ピピー!」


 おっさんにギュウギュウ押されて窓ガラスに顔が貼りついた俺を、サラとクリスタが手を振って見送ってくれた。

サラは応援に来たがっていたが、マジメカ使いでないと飛行船に乗ることはできないらしい。


 飛行船が南に飛び立つと窓から見える大通りがどんどん小さくなっていった。やがて景色は青々とした海一色になり、5時間程で目的地のガランゴ島が見えてきた。


 ガランゴ島はゴツゴツした山のような岩礁に囲まれている。

 まるでRPGの飛行船じゃないと入れない島みたいだ。


「うおー! すげー!」


 ベルベは俺の後ろで馬鹿デカいゴレタにおんぶされながら、窓の外を覗いている。

 俺も少しだけワクワクして来た。


「頑張るぞ! ピ太郎!」


「ピ!」


 ピ太郎はそう返事して俺の指を甘噛みして来た。

 ――何とも頼もしくも可愛い奴だ。


---


 島に降りて登録を済ませ、言われた通りに第4コロシアムに入ると、早速1回戦が始まった。


 フィールドは荒野。

 相手はおっさんの頭に乗ったカラスのような黒光りするマジメカと、婆さんが持つやたらファンシーな日傘みたいなマジメカだった。

 手筈通りフィールドの四隅にそれぞれが自分のマジメカを配置する。


「バトル開始!」


 覆面を付けた怪しいレフェリーの叫びと共にゴングが鳴り響いた。


「先手必勝! 火炎攻撃だ!」


 俺が叫ぶと、ピ太郎は大きく息を吸って胸を赤く膨らませ、思いっきり吐き出す。

 向かってくるカラスと傘はピ太郎の炎に包まれた。


 ――かに見えたが炎は火の粉になって散ってしまった。どうも傘の回転で防がれてしまったようだ。……厄介だな。


「ゴレタ! サンダーアタックだ!」


 ベルベがガラケーを握って叫んだ。ゴレタの突き出した大きな腕から、青白い電撃が傘に降り注ぐ。


 ――しかしまたしても傘の回転防御によって電撃は弾き飛ばされてしまった。


「甘いわね!」


 傘の持ち主の婆さんは、口に手を当ててほくそ笑んだ。


「攻撃は任せて母さん! フェザークロー!」


 おっさんのカラスは刃のように鋭い羽を広げ、斬りつけるようにピ太郎の手前で旋回してきた。

 直撃はしなかったが、ピ太郎は少しダメージを負ってしまったようだ。


――まずい……このままだと負ける!

 まず防御の要となっている傘をなんとかしなければ……。


「ピ太郎! 傘にヒートアローだ!」


 ピ太郎は燃えるように赤く光る爪を振り上げた。


――しかし急降下してきたカラスに弾かれてしまった。


 カラスが物理防御を担当し、傘が魔術防御を担当しているのか……。

 相手は攻撃と防御の役割分担もコンビネーションも完璧だ。


「ケンスケ! やばいぞ!」


「くっ……どうすれば」


 このまま攻撃を続けても削られる一方だろう。

 ――そうだ!


「ベルベ! ゴレタに地面を殴らせてくれ!」


「はぁ? そんなことして何の意味があるんだよ!」


「いいから! 俺に考えがあるんだ」


 実際、俺には考えがあった。


「……わかった! ゴレタ! 地面を殴れ!」


 ゴレタが拳を渾身の力で地面に叩きつける。荒野フィールドはひび割れ、砂埃が辺り一面に巻き上がった。


「ピ太郎! ウィンドストームだ!」


 ピ太郎は扇ぐように羽を羽ばたかせた。砂埃が強烈な砂嵐となって傘とカラスを襲う。


「フン! 見掛け倒しね! ブレコちゃん! スピンガードよ!」


しかし傘はガガッと何かが詰まったような音を上げて荒野に落ちてしまった。


「しまった! ……スピンギアに砂が詰まって!?」


 ――狙い通り!


「とどめだ! 火炎攻撃!」


「いっけー! サンダーアタック!」


 傘とカラスは黒焦げになって動かなくなった。


「勝負あり!」


 レフェリーの掛け声で俺達の勝利が決まった。


「「やったー!」」


 俺とベルベは舞い上がってハイタッチした。

 嬉しそうに肩に舞い降りたピ太郎を撫でてやる。


 ……おいちょっと待て、何か思った以上に楽しいんだが。


「よくやってくれたなピ太郎!」


「ピー!」


 ピ太郎となら……ついでにゴレタとベルベとなら、行ける気がして来た!

 よっしゃ! 二回戦も突破してやる!


 ……しかし、ピ太郎の銀の羽には少し傷が残っている。

 しっかり休ませてやらないと。


 俺達がベンチに戻って休憩しようとした時、不気味な男の声のアナウンスが響いた。


「……ヒッヒッヒ! それでは第2回戦を開始する!」


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