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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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魔物狩り

 翌日、俺はジオルクと約束した通り、昼食を食べたあと昨日と同じように城を出て街へと向かった。


 ジオルクの店に到着し中に入る。そこにはジオルクともう一人、冒険者らしき人が居た。


「二十万バルグになるぜ」


 ジオルクがそう言うと冒険者は金を払い、剣を買うと店を出た。


「お、来てたのか、準備をするからちょっと待っててくれ」


 ジオルクは店の奥に行ってしまったので暇潰しに店に並んでる剣を眺めていると気になるものがあった。

 剣の柄に魔法陣が刻まれているものがあったのだ。


「待たせたな。ってどうした? この剣が気になるのか?」

「あぁ、この柄に刻まれてる魔法陣は何だ?」

「それは〈刻印〉だな。その剣に魔力を込めるとそこに刻まれてる魔術が使えるんだ」


 そんな便利なものがあるのか。俺のナイフや刀にも付与出来るのだろうか。


「あれ? 魔術は諦めたって言ってなかったか?」

「刻印は他のところに依頼を出してやってもらってるんだよ」


 刻印が付与されている武器や防具は他のと比べて高いしかなり商売になるようだ。


「それより自分の武器は持ってんのか?無いんだったら適当なの貸してやるが」


 武器か……ナイフと刀があるにはあるがこの店を見た感じ刀のように片刃の剣は無く両刃の剣ばかりだ。

 だとすると片刃の剣は珍しいだろう。変に目立ちたくないし使わないほうがいいな。となるとナイフになるわけだが……。


 ナイフは間合いがほとんどない。向こうでは狭い空間で使っていたが、正直魔物を相手に戦える武器かは分からない。


 ナイフをジオルクに見せると剣を渡された。


「それで魔物を狩る気か? ほら、この剣を使え」


 流石にナイフは駄目だったか。

 剣を使わせて貰えるということだが、後で使った分はきちんと金を払おう。


「武器も持ったことだし魔物のいるとこまで行くぞ」


 俺とジオルクは店を出て街の外へと向かった。


 ジオルクに連れてこられたのは街を出て数分歩いた平原だ。


 周りには人がおらず、俺とジオルクさんと魔物と思われる生き物がここにいる。


「ほら、よく見とけよ」


 ジオルクはそう言い、魔物に近づくと剣で魔物を斬る。


 魔物は死んだように動かなくなった後、塵となって消えた。


「スライムは動きが鈍いし、襲われても怪我しないから初心者にはちょうどいいだろう」


 俺もスライムに近づく。うねうねと動いていて、少々気持ち悪い。


 スライムはこちらに気付いて逃げようとするが動きは鈍い。

 俺はスライムに刀を振り下ろした。

 スライムを倒したがほとんど感触がなく、まるで水を斬っているようだ。


 スライムが塵となって消えると何か落ちているのが見え、拾いに行こうとすると、目の前に人ではない影が落ちる。

 反射的に後ろへ剣を振ったが間に合わず、後頭部に魔物の攻撃が直撃し、地面に顔面を強打した。


「痛っ!」

「おらっ!」


 ジオルクは俺が魔物に突進されたのに気が付くとすぐにこちらに駆けつけて魔物を倒してくれた。


 ジオルクがうさぎを斬ったときに血が飛び散ったがそれも死骸とともに塵となって消えた。


「……大丈夫か?」


 ジオルクに心配された俺は起き上がり、体を確認する。

 痛みはあるが外傷は無く、特に問題は無かった。


「あぁ、特に怪我はない。大丈夫だ」


 魔物に不意をつかれて思いっきり攻撃を喰らうとは少し情けないな……。


 普段ならあれくらい反応出来るんだが、やっぱ超能力を制限されてると厳しい。それだけ普段は超能力に頼ってるってことか……。


「間に合ってはいなかったが魔物にはちゃんと反応出来てたし、なかなか素質はありそうだな。今日はキラーラビット狩りにするか」


 さっきのうさぎはキラーラビットって言うのか。名前聞いただけだったら滅茶苦茶強そうなのにあの攻撃といいジオルクの剣で一撃で死ぬ辺り名前負けしすぎだろ。


 俺は立ち上がると地面にキラキラ輝いている青紫色で半透明の球体が落ちているのが目に入る。

 その物体が気になり、次の魔物を探しているジオルクを静止して尋ねる。


「あ、ちょっと待ってくれ。これは一体何だ?」


 キラーラビットの死んだ場所に転がっているものに指を差してジオルクに尋ねる。


「お、珍しいな。魔物を倒したらその魔物の肉や皮といった素材が手に入るんだが、それは魔核って言ってギルドで魔物の素材より少し高く換金できるぜ」


 ってことはギルドで依頼を受けるだけじゃなくて魔物を倒すだけでも金を稼げるのか……。


 魔物を倒し続けていると平原に魔物が見えなくなった。


 普段は人間を相手にしていたが人間以外の生物を相手することは無かった。そのため魔物の動きの読みを誤ったりするなど課題を見つけることができた。初めてにしては十分な収穫だ。


 そろそろ夕暮れも近づいているということもあり、街へ帰ることとなった。


「かなり魔物の素材が集まったしそれなりの金にはなりそうだな。ざっと二百バルグくらいか」


 俺とジオルクは換金するべくギルドに向かった。 


     *     *     *


「ジオルクとトオルくんどうしたの?」


 ギルドに入ると受付のシェリアさんに声をかけられる。


「これを換金してくれ」


 ジオルクはそう言うと平原で手に入れた素材をカウンターに置く。


「これまた随分と持って来たわね。といってもすぐそこの平原の魔物っぽいから一つ一つが安いけどね」


 シェリアさんは素材を抱えてギルドの奥に行き、こちらに戻ってくると二百バルグがカウンターに置かれた。


「はいこれ、換金額よ」


 俺は金が欲しいところだが今回はジオルクに全額を受け取って貰いたい。

 俺に付き合ってくれて剣まで貸してくれたからな。


「ジオルクさんが全部受け取ってくれ」

「いやそれは出来ねぇよ。お前だって十分倒してたじゃねぇか」

「いや、付き合って貰ったし、この剣を貸してくれたんだ。全部受け取ってくれ」

「ジオルクが全部受け取ればいいのに。トオルくんもこう言ってるんだし」


 シェリアさんナイス援護射撃。


「まぁそういうことなら……」


 結局全額ジオルクが受け取るという形になった。


「そう言えばトオルくんはギルドに登録しないの? 登録すればいろいろ便利だと思うけど。今の換金だってジオルクさんが居たからいいけどギルドに登録してないと出来ないからね」


 依頼を受けるのもギルドの登録が必要。換金するにも登録が必要か。


 いずれ登録する羽目になるだろうし、今登録しても問題はないか。


「じゃあ折角だしギルドに登録するよ。で、何をすればいいんだ?」

「この書類に名前を書いてくれればそれで登録完了よ。ただし何か不祥事を起こしたらそれなりに責任取ってもらうからね。ギルドの信頼度にも関わるから」


 そう言えばジオルクもそんなこと言ってたな。


 昨日の夜に俺の世界の文字を俺の能力でこの世界の文字に変えることが出来るのは確認済みだ。


 目に見える文字は日本語で表示されるが、こちらの文字で見るように意識すればこちらの文字で目に見えるみたいだ。

 まぁ、こっちの文字は自分の名前しか分からないが。


 俺はカウンターに置かれたペンを手に取り、契約書に自分の名前をぎこちなく書いていく。


「はい、じゃあこれでギルド登録完了。それじゃあ……ようこそ、ギルド『月猫団』へ! 私達は君を歓迎するよ」


 シェリアさんは腕を精一杯広げて笑顔で俺に言う。もし自分と同じ背で同い年くらいだったら惚れているかもしれない。

 しかし、背が低い所為で可愛らしいという感情しか出てこない。あれだ、小動物を見ている気分だ。


 気を抜いたら猫を愛でるかの様にシェリアさんの頭も撫でてしまいそうだ。

 シェリアさんは亜人の中でも猫人族という種族らしいし、受け入れられる可能性もないことはないか?


 でも昨日のジオルクさんのやり取りを見る限り、子供みたいに見られるのが嫌みたいだしその可能性はないな、うん。多分撫でたら殺される。


「月猫団は小規模だけど、冒険者同士みんな仲いいから居心地はいいと思うわよ。それなりの実力者もいるから困ったときはぜひ皆を頼るといいわ」


 頼ってと言われても流石にこれ以上迷惑はかけたくないしな……。


 一応魔物がどんなのかも分かったし金稼ぎついでに今夜もう一度平原に行って狩りをしよう。


 俺はギルド登録を完了し、ジオルクやシェリアさん、冒険者達に別れを告げると城へ戻った。

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