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エーテル・グレイス  作者: クロビー
第一章 タンゲル公国編
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アクアガーデンの市長

 昼食を食べ終わった後、俺達は市長の居る建物までやってきた。


「この扉の奥に、ソフィア様がいらっしゃいます。くれぐれも失礼のないように」


 アクアガーデンの市長、ソフィア=イルヴァーナ。

 長年アクアガーデンの市長を努めている人物だ。

 アクアガーデンは元々港町というだけだったが、近年急成長を遂げ、今のようなリゾート特区が出来上がったらしい。

 現在は国営カジノの誘致も行っているとか。

 そのような功績から、住民に尊敬と信頼をされている人らしい。


「ウィステリアです。先日お話したアスカル=トキサカさんと、エナ=ルージュさんを連れてまいりました」


 ヒューゲルが扉をノックする。


「どうぞ、入りたまえ」

「失礼します」


 扉の奥から女性の声が聞こえ、ヒューゲルは扉を開けた。

 長年努めているっていうことらしいし、貫禄のある人なんだろうなぁ。

 そう思いながら扉の奥に入ると、女性がいた。

 他に人の姿はない。

 ということは、あの人がアクアガーデンの市長なのだろうか。


「よく来てくれたね」


 優しさを感じさせる笑みを浮かべながら、真っ直ぐに俺達を見据えている。

 比べて俺は緊張しっぱなしで、動きもぎこちない。


「君がアスカル=トキサカくん、君がエナ=ルージュくん……でいいのかな?」

「え、えぇ、初めまして」

「初めまして。もっとこっちに来てくれて構わないよ」


 椅子に座っている女性に言われるが、本当に行ってもいいのだろうか。

 隣に居るヒューゲルにちらっと視線を送ると、小さく頷いてくれた。


「もう気づいているとは思うが、私がアクアガーデンの市長、ソフィア=イルヴァーナだ」

「アスカル=トキサカです」

「エナ=ルージュじゃ」


 俺とエナは会釈をして、自己紹介を済ませる。


「立ったまま話をしていては、疲れるだろう。ソファにでも座りたまえ」

「……では、お言葉に甘えて」


 市長に促され、俺とエナはソファに座る。

 ヒューゲルは立ったままだ。

 ということは、俺達はこの人と直接話すってことか……。


「すまないね、急に呼び出したりして」

「いえ、特に急ぎの用事があるわけでもありませんから……」


 俺達の前に市長が座る。

 落ち着いていて柔らかい印象を感じるが、それと同時に威圧感……みたいなものも感じる。


「あの……」

「なにかな?」

「俺達はなんで呼ばれたんですか?」


 イルヴァーナ市長がわざわざ外国から来た人に会うなんて、普通はしないだろう。

 しかも、ここは観光都市。

 外国からの客も多い中、何故俺達だけが呼ばれたのか分からない。

 一緒に居たパラメアさんは呼ばれていないのに。


 ちなみにパラメアさんもついていくと言ったのだが、ヒューゲルが却下した。喫茶店の店長にも却下されていた。


「ヒューゲルから君達の話を聞いて、少し興味を持ったのでな」


 ヒューゲルから話を聞いた……って言っても、何処から何処まで話したのだろうか。

 俺が異世界人だということも知っているのか?


「それにしても……、君は面白い子と一緒に居るのだね」


 隣に座るエナのことをじっと見て、イルヴァーナ市長は微笑んだ。


「ヒューゲル、君は席を外してもらえるだろうか。それと、誰もこの部屋には入れないように」

「畏まりました」


 ヒューゲルは頷いて、ドアの前まで行く。


「お二人とも、また後で」

「おう」

「うむ」


 部屋を出ていくヒューゲルに、小さく手を振る。

 ヒューゲルが居ては駄目な理由があるのだろうか。

 俺が異世界人ということは知っているから、特に問題はないように思えるが……。

 というか前にヒューゲルが言っていた「上の人」って、もしかしなくてもイルヴァーナ市長のことなのか?


「つかぬことを伺いますが、ヒューゲルとイルヴァーナ市長はどのようなご関係で?」

「ただの上司と部下みたいなものだよ。ヒューゲルは私の手伝い役、といったところかな」


 俺と同じくらいの年齢でか……。

 ヒューゲルが優秀なのは言動からも見て取れるが、そこまでとは思ってもいなかった。


「なんでヒューゲルを? 俺と大して年齢は変わらないですよね?」

「私は彼の祖父にお世話になってね。彼自身も優秀だったから、側に置いているわけさ」


 てことは、ヒューゲルの祖父も優秀な人だったのだろう。

 まぁでも、学校とかには行かないのだろうか。


「ま、本人のいないところで話をするのは、あまり気分のいいものではないだろう。ヒューゲルの話は終わりにして、本題に入っても良いだろうか」

「それもそうですね」


 ヒューゲルのことは気になるが、それはまた今度本人の口から聞けばいいだろう。

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