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エーテル・グレイス  作者: クロビー
第一章 タンゲル公国編
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白服の青年

 ギルドで時間を潰し始めてから少し経った頃。

 外の広場が段々と騒がしくなっていた。

 ふと時計を見ると、出発の時間まであと十数分くらいになっていた。


「じゃあ、俺達はそろそろ行きます」

「もうそんな時間か。あっという間だったのう……」


 エナと一緒に席を立つと、シェリアさんも席を経った。


「私も一緒に行くわ」

「見送りなら別に気にしなくていいですけど……」


 まあ、されるのは嬉しいけど。

 ただ、勇者の中に紛れて行くわけだから、そうなると少し恥ずかしい。


「それもあるけど、勇者様の姿も見ておきたいのよ」

「あー……、じゃあ俺も行くか」


 シェリアさんの言葉を聞いて、ジオルクも席を立った。

 俺達のやり取りを見ていた面々が、俺も行くかと次々に広場に出ていった。

 結局お前らも行くのかよ。

 まあ、勇者なんて見る機会ないからな。

 見に行って損はしないだろう。


 そんなこんなで、俺は広場で魔術師が手配した馬車を探している。

 勇者が乗った馬車は、もうすぐグリニア城からこっちに来るはずだ。


「困りましたね……」


 馬車を探してふらふら歩いていると、そんな声が聞こえてきた。

 近くに居るであろう声の主は、掲示板の前で額に手を当てていた。

 雪に紛れるような白い服をきた青年だ。


「……あれ? 確か……」


 見覚えのある姿に、思わずじっと見てしまった。

 勘違いか?

 そう思いながらも、声を掛けてみる。


「あのー……」

「はい、なんでしょうか……って貴方は……」


 向こうも俺に見覚えがあるらしい。

 どうやら勘違いではなさそうだ。


「あ、もしかしてあのときの……! その髪は?」


 あ、そういえば髪色変えているんだったな。

 初対面は黒髪だったし、銀髪にもなればだいぶ印象が変わっているか。


「これだ」


 そう言って、首に掛けているネックレスを見せた。


「あぁ、なるほど」


 青年も納得したようだ。

 髪色を変えるネックレスは意外と知られているのだろうか。


「改めて礼を言うよ。あのときは助かった」

「それより、あの後は大丈夫でしたか?」

「あぁ」


 あれ以来、俺が誰かに襲われるということもなかった。


「知り合いか?」


 エナに聞かれる。


「少し前にちょっとな」


 街中で俺が襲われていたときに、助けてくれた青年だ。

 何で俺のことを知っているのかは、未だに分からないが……。

 危害を加えてくるような相手じゃないことは確かだ。


「それで、何をしてるんだ?」

「今日タンゲルに行こうと思ったのですが、空いている馬車が無いようでして……」

「今日は勇者がタンゲルに行く日だからなぁ」

「まあ、事前に確認していなかった僕の落ち度です。仕方ありません」


 タンゲルに行くのは諦めたのか、きびすを返す青年。

 それを俺は引き止めた。


「もし良かったら、一緒に行くか?」

「タンゲルにですか?」

「あぁ」

「でもどうやってですか? 馬車は勇者が使うので無理なはずですよ?」


 どうするのか分からない青年は、首を傾げる。

 それが普通の反応だと思う。


「実は事前に馬車を手配していたんだ。だから、俺らの乗る分はある」

「それ、僕の分の空きはあるのですか?」

「……聞いてみる」


 魔術師に手配を頼んだのは、俺とエナの二人だけ。

 もしかしたら、普通の人は乗ることが出来ないだけであって、空きがある可能性はある。

 空きがあるからと言って、見ず知らずの人を乗せられるかは分からないが。

 まあ、聞くだけ聞いてみよう。

 無理だったら諦めるしかない。


「一緒に来てくれるか?」

「分かりました」


 青年は快く頷いてくれた。


「エナもいいか?」

「吾輩は構わぬ。アスカルを助けたとのことじゃからな」

「そ、そうか」


 助けられたことは事実だから認めるしかないけど、やっぱり恥ずかしいな……。

 エナに鍛えられたというのに結局手も足も出なかったんだから、情けない話だ。


「アスカル?」

「……俺の名前だ」

「……なるほど」


 俺が異世界人だということを知っているから、らしくない名前に一瞬戸惑ったみたいだが、すぐに察してくれたようだ。

 ……やっぱり、聞きたいことが山ほどあるな。


「僕の名前はヒューゲル=ウィステリアです。ヒューゲルで構いません」

「俺はアスカル=トキサカだ。よろしくな」

「吾輩はエナ=ルージュだ」


 互いに名前を名乗り終わり、用の済んだ掲示板の前から離れた。

 それから手配されていた馬車を必死に探し回ったが結局見つからず、勇者を乗せた馬車が来てしまった。

 それと同時に人の波が押し寄せ、馬車を探すどころではなくなってしまった。

 そのまま三人で、勇者を乗せた馬車の前近くまで来てしまった。


 勇者を乗せている馬車の御者は騎士団の騎士達みたいだ。

 馬車も周りに護衛と思われる騎士も何人か居る。

 知っている顔は居ない……というより、グリニア城に居た期間が短くて、顔を覚えていないだけかもしれないが。


 うーん……、どの馬車か分からん。

 騎士団の誰かに聞いてみよう。

 最前列は移動の妨げになるだろうし、後方の騎士に聞いてみるか。

 ちょっと目立ってしまうのは仕方ない。諦めよう。


「あのー……すみません」

「何かな?」


 騎士は警戒するような仕草を一瞬だけ見せたが、すぐさまそれを隠した。

 勇者の護衛をさせるだけあってか、腕の良い騎士なのだろう。


「エレナ=ザイートに馬車の手配をお願いしていた者なんですけど……」


 そう言うと、騎士はすぐさま警戒を解いた。

 その様子を見て、胸を撫でおろす。


「君がエレナくんの友人か。話は聞いているよ」


 どうやら知っているみたいだ。

 警戒されているときは何を言われるかとヒヤヒヤしたぞ……。


「馬車は街の門をすぐ出たところにあるんだ。すまないが、そこで待っていてくれるかい?」

「分かりました。わざわざありがとうございます」

「いやいや、礼には及ばないよ」


 騎士はそう言って、馬車の護衛に戻った。

 最初警戒していたとは思えないくらい丁寧な対応だ。

 それにしても、馬車の場所くらい確認しておくべきだったな。

 とんだ無駄足を踏んでしまった。


「そういうことらしいから、先に街の外に行くか」

「エレナ=ザイートが馬車を手配したのですか?」

「そうだけど……というか、知っているのか?」


 ジオルクとかギルドのやつらが知らないから、てっきり一般人にはあまり知られていないのかと思っていたんだが。


「えぇまあ、あなたを助けたのも彼女に頼まれたからですので」

「……詳しく聞きたいな」

「僕の話せる範囲であれば、馬車の中でお話しますよ」

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