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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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魔術師と再会

 ギルドでシェリアさんの話を聞いて時間を潰していると、ギルドに客がやって来た。


「トキサカくんは居ますか?」


 そう言って訪ねて来たのは、魔術師のエレナ=ザイートだった。


「あ、あぁ。ここに居るぞ」


 シェリアさんに伝言を頼んでいたとはいえ、夜会があったのは昨日。

 会いたいと言ったのは俺からだが、まさか夜会のあった翌日に来るとは思っていなかったから、ちょっと驚いてしまった。


「知り合いか?」

「えっ?」


 ジオルクがそう聞いてきたので、思わず声が出てしまった。

 まさか、あいつがグリニア城に居る魔術師だってことを知らないのか?


「あー……うん、一応知り合いだ」

「へー、そうか」


 この様子はまじで知らないみたいだな。

 まぁ、詳しいことは言わなくていいか。

 色々と質問されて面倒なことになりそうだし。


「エレナちゃん、こんにちは」

「えぇ、こんにちは」


 シェリアさんと魔術師が挨拶を交わす。


「シェリアも知り合いなのか?」

「学生の頃にちょっと付き合いがあってね。まぁ、頻繁に会う仲じゃないわね」

「同い年には見えねぇけど?」

「彼女は飛び級だから、私より若いわよ。というか、同い年に見えないってどういう意味かしら?」


 ジオルクの言葉を一言一句逃さず、シェリアさんはニッコリと笑う。

 ジオルク、シェリアさんの怒りに触れちゃったなぁ。

 まぁ、喧嘩するほど仲が良いって言うし、放置でいいか。


「ここで話すのはなんだし、場所を移動しないか?」


 魔術師にそう提案してみる。

 実際、ここで話せる内容じゃないしな。


「そうですね。では場所は何処にしますか?」

「前と同じで、俺の泊まってる宿屋の部屋でいいか?」

「分かりました」


 あそこならカレンさんも配慮してくれるだろうから、人が来ることもないだろう。


「エナも来るか?」

「よいのか?」

「一応、関係ないわけじゃないからな」

「ならば、吾輩も行こう」


 エナは俺の事情を知っているし、これからも一緒に過ごす仲間だからな。


「おいアスカルっ、行く前にシェリアをどうにかしてくれっ」


 シェリアさんに笑顔で詰め寄られるジオルクに、助けを求められた。


「悪いな、ジオルク」

「おいぃ!?」


 だが俺はジオルクの助けを断り、そのままギルドを出た。


 宿屋はギルドのすぐ横なので時間もかからず、カレンさんも受付にいたのですぐに部屋に戻ってこられた。


「適当に座ってくれ」

「ありがとうございます」


 魔術師を座らせて、俺とエナもテーブルを挟んで向かいに座る。


「まずは礼を言っておく。わざわざ来てくれてありがとう」

「いえいえ、構いませんよ」


 俺と魔術師のやり取りを、エナは首を傾げながら見る。


「アスカル、こやつは何者だ?」

「グリニア城の魔術師だ。俺の事情も知っている」

「ふむ……。なら、話す内容は気にしなくてもよいのだな?」

「まぁ、そうだな」


 俺の事情を知っているエナだからこそ、普段の会話で不意に俺のことを言ってしまわないように、気をつけていたのかもしれない。

 俺が自分のことを話したせいで、余計な苦労をさせてしまっているのかも。


「それで、私に用事というのは?」

「一番は俺の今後についてだな。それと、みんなの今の様子を聞きたい」


 重要なのは前者で、後者はついでみたいな感じだ。

 前に魔術師と会ってから、三ヶ月ほど経過している。

 その間は城の情報は全く入手していないから、みんなの様子は気になる。


 最初は情報を得るために城を出たはずなのに、今度は城の情報を得るために行動してしまっているのは反省するべきだな……。


「今のところ、俺はまだ行方不明者ってことになっているのか?」

「そうですね」


 まぁ、そうだよな。

 義明や西園寺先生は、絶対に理由もなく話さないだろうからな。


「俺の今後についてなんだが、アスルトラを出てみようと思う」

「それは……他国に行くということでしょうか?」

「あぁ」


 頷いてそう答える。


「一応聞きますが、何処に行かれるのですか?」

「まずはタンゲルに行こうと思う。シェリアさんやジオルクから聞いた限りでは、一番良さそうだったからな」

「そうですか……」


 魔術師は手を顎に当てて考える仕草をすると、俺に一つ提案をしてきた。


「良ければ、馬車は私が手配しておきましょうか?」

「それは……素直に好意として受け取っていいのか?」

「……私ってそんなに信用できないですか?」

「普通の人と比べたら、信用しにくいな」


 そう言うと、魔術師はしょんぼりと肩を落とした。

 本音を言っただけだが、なんか申し訳ないないな……。

 いくらこの魔術師でも、女の子を悲しませたみたいだし……。


「それはさておき、どういう理由で馬車を手配しようと思ったんだ?」

「本当にただの好意なのですが……、敢えて理由を申し上げるのならば、現在グリニア城にいらっしゃる勇者のうち、十名が二週間後にタンゲルに行く予定だからですね」

「本当なのか?」

「えぇ、既に誰が行くかは決まっています。昨日の夜会でこのことはお伝えもしたので、本当のことです」


 城に居たままでも外に出られたってことか。

 いよいよ、俺が城を出た意味が薄くなっていくな……。

 でも行動に縛りがないという点では、かなり意味があったか。


「長い間知り合いの顔も見てないでしょうし、顔を見るくらいなら……と思ったのですが……。馬車の手配は不要ですか?」


 確かに、話を聞くだけだと不安が消えないのも確かだ。

 百聞は一見にしかずという言葉の通り、実際に見たほうが安心もできる。


「……いや、もし手配してくれるなら、手配しててくれると助かる」


 ここは素直に、好意を受け取っておくか。


「分かりました。馬車は二人とも乗られるんですか?」

「それは……」


 シェリアさんと話していたときも、エナはどうするのかと聞かれたが、俺はすぐに答えることができなかった。

 そして今も、本当に一緒に行くべきなのか迷っている。

 月猫団のみんなは優しいから、ギルドにずっっと居れば平和な日々は過ごせるだろう。

 答えが出せないままそう考えていると、エナが先に答えてしまった。


「もちろんだ。吾輩は前から、アスカルと一緒に居ると決めておるからな」

「分かりました。では二人の分、馬車を手配しておきます」


 エナの言葉を聞いて、俺は固まってしまった。

 驚きと同時に嬉しさがこみ上げてきて、何とも言えない感情が湧いてくる。


「何をボーッとしておる。もしかして……嫌じゃったか?」

「そんなことはない、嬉しいに決まってる。けど、まさか一緒に来てくれるとは思ってなかったから……」


 エナは少し不安そうにしながら言う。

 それに対して、俺は首を横に振って否定した。

 するとエナは嬉しそうに、笑顔を向けてきた。


「何をのたもうとる。吾輩のことは吾輩が決める。それに、今の暮らしを吾輩にくれた責任、しっかりと取ってもらわぬとな」

「……だな」


 他人の行動を決めるなんて権限、俺にはないはずなのに、エナの安全を考えるあまり、危うく縛りそうになっていた。

 エナ自身が一緒に来ると決めたのなら、俺はそれに全力で答えるだけだ。


「ほれ、この話は終わりじゃ。他に聞きたいことがあるのであろう?」

「あぁ、そうだな」


 そこからも魔術師に色々と聞いた。

 今のみんなの様子や、城の様子。

 その他に、夜会のことだったりギルドのことだったり、少しだけ世間話をした。

取り敢えずはこの辺りで一区切りとなります。

アルストラ王国での話も終わり、そろそろタンゲル公国でのお話となっていきます!

感想やレビュー、評価など、もしよろしければお願いします。

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