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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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勇者の印象

 日付が変わり、朝がやってきた。

 今日も今日とてギルドで暇を潰す。

 こんなに寒い中、ギルドに来ている依頼をわざわざしようとは思わない。

 今は生活にも余裕があるし、寒さが多少マシになるまではのんびり過ごすのも悪くない。


「……シェリア、昨日の夜会はどうだったんだ?」


 すぐ横で同じくだらだらとしているジオルクが、書類整理をしているシェリアさんに聞いた。


「ふっふっふっ……それを聞いちゃうのね……」


 その質問を待ってましたと言わんばかりに、シェリアさんが笑みを浮かべる。

 それを見てジオルクは半分呆れている。

 何せ、ジオルクが聞くまでシェリアさんは俺達や他のギルドメンバーをちらちらと見ていて、とても仕事に集中できている様子ではなかった。

 シェリアさんが何も言わず、モゾモゾしているからこっちは気になって仕方がない。


「私はほぼすべての勇者様と話たのよ〜。すごいでしょ〜」

「おーそうかー、そりゃ凄いなー」


 楽しそうに話すシェリアさんとは反対に、棒読みのジオルク。


「最初話した勇者はね――」


 そして、シェリアさんは勇者と話した内容や印象を事細かに語り始めた。


「おいジオルク、これ長くなるやつじゃないか?」

「確実に長くなるだろうな」

「ジオルクがシェリアさんに聞くから……」

「あの状況で聞くなって方が無理だろ……」


 シェリアさんには聞こえないよう、ジオルクとこそこそ話す。

 その間もシェリアさんの話が止まることはなく、一時間以上が経った。


「――それでね……って、みんなどうしたの?」

「気にしないでくれ……」

「そう?」


 ギルドメンバーの様子を見て、シェリアさんは不思議そうに首を傾げた。

 一時間以上もシェリアさんの話を聞かされ、ギルドメンバーのほとんどはぐったりとしてしまっている。

 俺も途中からボーッとしだして、窓から外を歩いている人を数えていた。

 なんて無意味な時間を過ごしてしまったのだろうか。


「ほー、吾輩も勇者に会ってみたいのう」


 そんな中唯一、シェリアさんの話を興味津々に聞いていた人物がすぐ横に。

 最初はシェリアさんの話を聞いているやつは何人か居たのに、途中から話を聞いていたのはエナ一人だ。


 一応、勇者にはもう会っているだろというツッコミはなしか?

 まぁ、俺以外の勇者に会ってみたいという意味だろう。


「……一番印象に残っている勇者とか居ましたか?」


 ちょっと気になって、そんなことを聞いてみた。

 やっぱり、印象に残っているとしたら来馬だろうか?

 イケメンだし、クラスの中心みたいな存在だからな。あとイケメンだし。

 シェリアさんの話をほとんど聞いてなかったから来馬と話したのかは知らないが、まぁ少しくらいは話しているだろ。


「そうねぇ……。強いて言えば、シズル=サイオンジっていう勇者様かしら」

「へ、へぇ……」


 西園寺先生は予想してないぞ。

 クラスメイトの誰かだろうと思っていたから、自然と選択肢の中から除外してたな。

 まぁでも、よく考えたら西園寺先生だけは生徒じゃなくて教師だしな。

 俺達はまだ高校二年生でまだ大人とは言い難いけど、西園寺先生は年の離れた立派な大人だし。

 一人だけ大人っていうだけでも、印象に残るかもしれない。


「何だか落ち着いた雰囲気で、言葉遣いも丁寧で、正に大人って感じで格好良かったわね」

「ぶっ!?」

「い、いきなりどうしたの?」

「いえ、気にしないでください」


 これまた予想していない言葉が飛び出てきて、思わず吹き出しそうになってしまう。

 か、格好良いか……?

 確かに落ち着いた人だけど、格好良いとは一度も思ったことがない。

 駄目な大人だなとは思ったことあるけど。


「私もあんな大人になってみたいわぁ」

「…………」


 シェリアさんの様子を見ていると、同じ人のことを考えているとはとても思えない。

 シェリアさんの話と様子から得られる情報が、俺の知っている西園寺先生とは全く違うんだが……。

 本当に同一人物のことを考えているのか疑ってしまいそうだ。


「シェリアがそこまで言っていると、ちょっと会ってみたくなるな」


 すぐ横から覇気のない声が聞こえてきた。

 ちらっと横に目を向けると、ジオルクが僅かに動いた。


「……起きてたのか」

「お前とシェリアが会話を始めた辺りからだけどな」


 なら少しくらい会話に混ざっても良かったんじゃ……と思ったが、そんなに話せる様子じゃなさそう。

 ギルドメンバーを見ても、俺はまだ元気な方だ。


「吾輩もそのシズル=サイオンジ? とやらに会ってみたいのう」


 エナも西園寺先生にちょっと興味がありそうだ。

 でも会わないほうが良いんじゃないかな。

 会ってガッカリするより、会ってないけど良いイメージを持っているだけの方がお互いとっても良いと思うけど。

 まぁ、俺は知っているからそう言えるだけで他のみんなは知らないから、もし会う機会が訪れたら止めたりはしないけど。

2/17に第一話を少し改稿しましたが、大筋は変わっていないので読み返していただかなくても大丈夫です。

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