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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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夜会当日

 朝がやってきた。

 布団から出たくないという欲求をなんとか抑え、目を擦りながら体を起こす。

 窓のカーテンを開け、外から差し込む日光を全身で浴びる。

 おぉ、これがビタミンDが作られる感覚……!

 いや全く分からねぇけど。

 そもそも、ビタミンDが作られる感覚ってなんだよ。


「うぅん……うん……?」


 可愛らしい声とともにもぞもぞと布団が動き出し、中からエナが出てきた。


「エナ、おはよう」

「……うむ、おはようなのだ」


 エナは俺に気づくと、挨拶を返してくれた。


 ここでの生活もだいぶ慣れてきた。

 朝起きても見慣れない天井に困惑することもなくなったし、エナが居ることも当たり前となった。

 まぁ、無防備な姿で布団に潜り込んでるのには、未だに慣れてないけど。


「じゃあ、適当に飯を済ませてギルドに行くか」

「……じゃな」


 短く会話を済ませ、俺達は街に出た。


     *     *     *


 適当な店で飯を軽く済ませ、月猫団の建物に入る。


「おはようございまーす」

「おはようなのだ」


 そう言いながら、建物に入る。


「おはよう、アスカルくん、エナちゃん」


 一番に、シェリアさんが挨拶を返してくれる。


「おはよう、お二人さん」


 と、続いてジオルクや他の冒険者からも挨拶を返される。

 相変わらずみんな早い。

 まぁ、冒険者で真面目に働いているやつって少ないし、みんな暇なのだろう。

 暇人の集まりである。


「はぁ、もう既にドキドキが止まらないわね……」


 シェリアさんが胸に手を当てながら言う。


「夜会まではまだ時間もあるし、普通に過ごしてれば落ち着くだろ」

「いや落ち着くって……、勇者に会うのよ? どうしたら落ち着けるのよ……」


 ジオルクとシェリアさんがそんなやり取りを交わす。

 シェリアさんが朝から落ち着いていないのには、理由がある。

 なんて言ったって、今日は夜会の当日なのだ。

 多くのギルドのギルマスが、俺のクラスメイトと会う日。

 俺がそこに居ないのは少し悲しいことだが、それも仕方のないことだ。


 夜会には各ギルドのギルマスと俺のクラスメイトの他、王族や各騎士団の団長なども出席するらしい。

 流石、俺達異世界人が勇者と呼ばれることなだけはある。豪華すぎるメンバーだ。

 特に女王様や王女様は一目見てみたい気持ちは多少ある。

 この世界に来てから王様には会ったことがあるが、他の王族には会ってないからな。

 この世界に来たときは、グリニア城には不在だったからな。

 とは言っても、結局のところ王様と考え方はあまり変わらないのだろう。

 もし違ったら、それはそれでどうなのかという感じだが……。


「夜会に出席するギルマスって、ざっと何人くらいなんですか?」

「私の把握してる限りでは、四十人くらいかしらね」


 大体勇者と一対一くらいか。

 ギルマス以外にも夜会に出席する人は居るし、そのくらいがいいのだろう。

 というかグリニア城、まじで広いなぁ……。


「四十人でもかなり絞った方ね。でも今回はアルストラに拠点を構えるギルドだけじゃなく、他国のギルドからも来るみたいなのよ。私が把握してないギルドも居るかもね。小規模ギルドを含めたら、世界中のギルドは数え切れないくらいあるから」

「へぇ、他国からも。やっぱり勇者ってだけあって凄いですね」


 心配はいらないと思うが、冒険者相手に気圧されるなんてことはないよな……。

 冒険者ってジオルクみたいに、体格が良くて一見怖そうなやつが多いからなぁ。

 まぁ、仮にもギルドの長であるギルマスだから、人を怖がらせるような真似はしないだろう。

 それに、西園寺先生も居るから大丈夫だ。

 でもやっぱり心配だなぁ……。


「なんか……アスカルはあまり興味なさそうだな」

「確かにそうねぇ……」


 シェリアさんは、ジオルクに同意するように首を縦に振る。

 決して興味がないわけじゃないんだが……。

 それでも周りと比べたら熱もないだろうな。


「なんていうか……あまり実感がわかないんだよ。俺は夜会に出席するわけじゃないし……」


 街の人が呼ぶ勇者と俺はクラスメイトだし、顔も名前も知ってるからそんな胸を踊らせるようなことじゃないってのが、本当の理由だけど。

 そんなことを言えるはずもないので、適当に言って誤魔化す。


 もし俺が異世界人だということを月猫団のみんなが知ったら、どんな反応をするのかちょっと気になる。

 エナやシュバルツさんは反応は薄かったからな……。

 それに比べて、シェリアさんやジオルクは良い反応をしてくれそうだ。


「まぁ、確かにそうだな。俺ら一般人が勇者と関わることなんてねぇだろうからな」

「勇者と関わる機会が夜会だけ、なんてこともありそうよねぇ」


 俺のクラスメイトがしてることは、一般人が立ち入り禁止の地下迷宮の攻略だしな。

 攻略も騎士団と異世界人で行われてるし、一般人と関わる必要なんてないからなぁ。


「でももしかしたら、また勇者と関わる機会が訪れるかもしれぬぞ?」


 一瞬、俺にちらっと目を向けて、エナが何食わぬ顔で言った。

 何なら既に関わっちゃってますけどね。

 同じギルドに所属しちゃってますけどね。

 本人の知らないところで、本人の望みは叶っているのだ。

 エナは俺が異世界人だということを知っているくせに……。


「うーん……それはそうなんだけど……、あまり期待はしないでおくわ。こういうのは、期待するだけ損だしね」

「シェリアさんって、意外とドライですよね……」


 でも、期待しないっていう気持ちは分かっちゃう。

 俺もテストの点とか期待しないからねっ!

 ……それとこれとは訳が違うか、うん。


 何はともあれ、今日はグリニア城で夜会が開かれる。

 今日どんなことがギルマス達に伝えられ、明日の街はどんな風になっているか。

 少しばかり楽しみだ。

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