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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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元騎士団団長

 気まずい空気もいつの間にかなくなり、俺がグラスに口をつける回数も減っていた。


「俺は元騎士団団長でな。情報の入手経路くらいはある」

「……デューク先輩、あまり無茶なことはしないでくださいよ。元団長といっても、許可はされていないんですから」


 あ、やっぱり正規ルートで入手したわけではないんだな。

 まぁ、元騎士団団長なら人脈はあるだろうし、騎士団内に協力してくれる人間が居てもおかしくないか。

 情報を完全に封鎖しておくなんて、相当難しいからな。


「って、デューク先輩?」


 元騎士団団長だから……みたいな?


「今現在、リーリアが騎士団団長を務めているのは、俺が推薦したからなんだ」

「『団長をやれ』と言われた時は驚きましたよ。デューク先輩の下で働いていた人は他にも居たのに……」


 確かになんでフレデリクさんを推薦したんだろう。年齢もまだまだ若いはずなのにな……。

 それを言ったら、シュバルツさんも相当若く見えるけど。


「俺とリーリアの話はもういいだろう」


 これ以上話す必要もないと言わんばかりに、シュバルツさんが途中で話を切った。

 シュバルツさんの話が気になるが、それは後にしておこう。

 そんな話をするために集めた訳じゃないだろうし。


「お前はこれからどうするつもりだ」

「どうって……」

「リーリアと一緒にグリニア城に戻るか、このままアスカル=トキサカという冒険者として生きるかだ」


 グリニア城……確かあの王城の名前だったよな。

 衣食住の安定した生活を求めるならグリニア城に戻るべきだろう。

 しかしそうなると、元の世界に戻る方法を探すことができない。

 それに……。


「?」


 横にいるエナに視線を向けると、どうしたという風にエナは首を傾げる。


「いや、なんでもない」


 俺はそう言って、エナの頭を優しく撫でる。

 もしグリニア城に戻ってしまったら、エナと簡単に会うことはできなくなるはずだ。

 俺は異世界人という理由で戻れるが、エナはただの一般人でしかない。

 俺が駄々をこねても、一緒に来れる可能性はゼロだろう。


「グリニア城に戻るというなら俺も協力はしよう。だが冒険者として生きるというなら、お前のことは同じ冒険者としてしか扱わない」


 城に戻るなら特別扱いするけど、そうじゃないなら特別扱いはしないということか。

 まぁ、俺にとってはどうでもいいことだな。


「俺は冒険者として生きます」

「ほう……」

「ど、どうしてだ? 君も友人と会いたくはないのか?」


 俺の答えを聞いても、シュバルツさんは至って冷静な態度。

 対してフレデリクさんは、驚きの表情を見せる。


「俺も友人には会いたいですよ」


 前までの俺だったら、三ヶ月も友人や家族に会わないとか考えられなかった。

 でも現に、三ヶ月は持ちこたえたんだ。

 ここまで来て諦めるかわけにはいかない。


「だったら……!」

「リーリア、落ち着け」


 シュバルツさんのその言葉で冷静さを取り戻したようで、フレデリクさんは前のめりになっていた体を戻した。


「何故そっちの道を選ぶんだ?」

「俺は今、元の世界に戻る方法を探しています。城に戻れば、街に出ることは簡単ではないでしょう。ですので、今はまだ城に戻るわけにはいきません」


 目先の感情ばかりで動いていては、本来の目的から逸れていくかもしれないからな。

 元の世界に帰る方法が見つかるまでは、暫くの辛抱だな。


「で、何か見つかったのか?」

「いえ、まだ何も……」

「見つかっていないのか」


 俺は小さく首を縦に振る。

 改めて認識させられると、この三ヶ月一体何をしていたのか分からなくなってくるな……。


「ま、俺は止めはしない。お前がどうしようが、俺には関係のないことだ」

「ちょっ、デューク先輩!?」


 フレデリクさんにとっては俺を引き止めてほしかったんだろうけど……、シュバルツさんにとって俺は特別でもなんでもないんだろうなぁ。


「だが、この国で面倒事を起こすのは遠慮してくれ。いろいろと面倒だからな」

「は、はい」


 もう面倒事を起こしかけてるのは言った方がいいのだろうか……。

 いやでも俺は被害者だし、その時はその時だ。


「俺の方でも、お前たちが元の世界に戻る手がかりを調べておこう」

「いいんですか?」


 こっちの世界の人達にとっては、異世界人は救世主のような存在にはず。

 その救世主を、元の世界に返してしまっていいのか? もし元の世界に返せば、それを実行した人は非難されると思うんだが……。


「あの洞窟で見たような、凶暴化した魔物が各地に出現して以来、魔王がどうとか噂されているのは知ってるな?」

「えぇ、そのくらいは」


 最初に聞いたのはこの世界に来たばかりのとき、王様から直接言われたとき。

 それ以来も、何度か耳にしたことはあった。


「この世界のほとんどの連中は、お前たちのような異世界人に助けてもらおうと思っている」

「実際、街でも異世界人に対する期待がすごいですもんね」

「だが、本来はこの世界に住む自分達で解決すべきことだ。他人の出る幕じゃない。だから俺は、お前達はあるべき場所に戻るべきだと思っている」


 自分の庭は他人に整備させるものじゃないってことか。

 もしこの人が国の重役とかだったら、俺達がこの世界に来ることもなかったんじゃないか?

 王様が命令したのか知らないが、異世界召喚を提案したやつ許せねぇ……。


「君達異世界人に訓練を指導している私が言うのも何だが、私も同意見だ」

「騎士団は国の組織だからな。上の決定に逆らえないのは仕方がない」


 フレデリクさん、真面目すぎるが故に騎士団団長は大変そうだなぁ……。

 俺も心配かけてしまって負担になっていただろうし、今度改めてお礼をしたいものだ。

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