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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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酒場の経営者

 今日は雪が降っていて、街の外で魔物と遭遇すると危険だから、依頼を受けるのも止めておいた方がいい。

 街を出る冒険者も少ないし、馬車も最低限しか街を出入りしていない。

 今日は街で大人しくしておくのが吉だろう。


 冒険者登録証の発行の手続きを終えた俺とエナは、シェリアさんと一緒にギルドの一階に降りていく。


 そして、俺が階段を降りきったとほぼ同時に、ギルドのドアが開かれた。


「邪魔するぞ」


 ギルドに入ってきたその人物は、金髪で黒い服に身を包んだ男。

 ヴァルガの洞窟で突然現れて、魔物をあっという間に倒したあの人だ。


「デュークの旦那!」

「デュークさんじゃないっすか!」


 ギルドの仲間達は次々とその人の名前を呼び、とても慕っているように見える。

 というかみんな知り合いなのか?

 でも、この人は月猫団の人ではないはずだし……。


 デュークと呼ばれている人は俺達に気がつくと、こちらに歩みを進めてきた。

 え、俺何かやらかしたか?

 などと思っていると、後ろにいたシェリアさんが、後ろから降りてきた。


「あら、デュークさん。何か用事?」

「シェリアか。そこの二人に用事があってな。少し貸してくれないか?」


 まじで気づかない内に、何かしてしまったのだろうか。


「それなら二人に直接聞いたらどう?」

「……ついて来てくれないか?」


 シェリアさんに指摘されたその人は、俺達の方を見て言った。


「えっと……用事って何ですか?」

「昨日のヴァルガの件ついてだ」


 なーんだ。全然普通の用事じゃん。変に怖がってしまった俺が馬鹿みたいだね!


「そういうことでしたら、全然大丈夫ですよ」

「急で悪いな」


 ヴァルガの件で俺のところに来るってことは、騎士団関係者か?

 それなら、ギルドのみんなが知っているのも納得出来るが……。


「話は俺の酒場でしよう。ついて来てくれ」

「は、はい」


 酒場……ってことは、騎士団関係者じゃないのか?

 騎士団関係者が未成年の俺達を酒場になんて連れて行くとは思えないが……。


「デュークさん、その二人は酒なんて飲めないっすよ?」

「酔って子供に酒を飲ませようとするような、酔っ払いのお前と一緒にするな。あと、少しは俺の酒場に来い」

「暇があったら行きますって〜」


 それ、結局来ないやつじゃ……。

 見た限り、ギルドのみんなはこの人と仲が良さそうだし、警戒する必要はないだろう。


「そういうことだから、この二人を貸してもらうぞ」

「ええ、分かったわ」


 俺とエナはその人について行き、ギルドを出た。

 あんなに強かった人が、ヴァルガの件で俺に訪ねて来るとは思わなかったな……。

 一体、何を話すのだろうか。


     *     *     *


 ギルドを出て暫く歩き、ギルド街の近くまでやって来た。

 周りを歩く人の中は冒険者の姿が増えている。

 一般人はギルド街に近寄らないため冒険者しか見なくなるのだが、この辺りはまだ一般人が比較的居るようで、一般人と冒険者が入り混じっている。


「ここだ」


 人通りの多い通りで立ち止まって、前を歩いていた男が向いた建物を見る。

 この通りにある店に比べたら小さい建物だが、酒場ならこのくらいがちょうどいいのかもしれない。

 入口には「閉店中」という掛け看板がしてある。


 その建物に男が入っていったので、俺とエナも続いて建物に入る。

 中はカウンター席とテーブル席がいくつか設けられ、階段を上がった二階にもテーブル席があるようだ。


「二人とも、ドリンクはアップルジュースでいいか?」

「は、はい」


 俺とエナが頷くと、男はカウンターに行って俺とエナの分まで飲み物を準備してくれた。

 カウンターの席に座り、少し待つとアップルジュースを注いだグラスが置かれた。

 そのアップルジュースはシュワシュワと泡立っていた。

 酒場なのに、アップルジュースがあるんだな……。と思いつつ、グラスに口を付けた。


「これは……炭酸?」

「もしかして苦手だったか?」

「いえ、むしろ好きです」

「それはよかった」


 隣に座っているエナは、炭酸という未知の飲み物を飲んで、そのシュワシュワに驚いていた。

 一口飲むとすぐに二口目を飲んだので、どうやら気に入ったらしい。


「自己紹介がまだだったな。俺はデューク=シュヴァルツ。一応、この酒場の経営者だ」

「アスカル=トキサカです。で、こっちが……」

「エナ=ルージュじゃ」


 この酒場の経営者か。

 でもあれだけ強いってことは、冒険者でもあるのだろうか?

 ジオルクも自分で鍛冶屋を開いてるし、冒険者で酒場を経営してる人が居ても不思議ではないか。

 それでも、自分の店を持っているのは少数派だろうけど。


「それで早速聞くが、あの洞窟で何か気づいたことはないか?」

「気づいたこと、ですか」


 あの洞窟での出来事なら、第四騎士団に聞けばいい気がするが……。

 わざわざ俺達に聞く理由は何だ?


「お前があの洞窟を発見したと聞いている。お前達しか知らないことも、あるんじゃないかと思ってな。それに、俺は後に行ったからな」

「なるほど」


 確かに俺達があの洞窟の第一発見者だし、そう思うのは当然か。

 俺達の後に来たから、最初の状況を知らないもんな。


「そうですね……ヴァルガの街を襲撃してきた魔物は統率が取れているように感じたんですが、騎士団と一緒に洞窟に入ったときは、統率が取れていないように感じました」

「魔物の統率か……。他には?」

「最初に発見した時と比べて、洞窟の中に魔物が異常に少なかったのと、奥に居たあの魔物が弱っていたこと。別の誰かの魔術の痕跡が洞窟内にあったことですね」


 騎士団でも冒険者でもない誰かが、先にあの洞窟で魔物を倒したとしか思えない。

 その誰かが分からないから、探しようもないんだが。

 魔術の痕跡で誰が使ったまでは、流石に分からないからな。


「誰かが先に魔物を倒していったか……」

「俺もそう思っています」

「……それについては、こっちでも調べておこう。情報提供、感謝する」


 本当にヴァルガの件について聞かれただけだったな。

 無料で炭酸のアップルジュースが飲めたし、ラッキーだな。


「じゃあ、俺達はこれで……」


 話は終わったと思ってカウンター席を立ち上がると、シュヴァルツさんに静止された。


「すまない。もう少し居てくれないか」

「まだ何かあるんですか?」

「お前たちに会ってほしいやつが居てな。もうすぐ来るはずだ」


 会ってほしい人って言われても……俺達は顔が広いわけではないから、月猫団以外に知り合いなんてほとんど居ない。

 知らない人だったら知らない人で、面倒事が増えそうで嫌だなあ……。


「お、来たみたいだな」


 入口のドアが開く音がしたので、カウンターから後ろを振り返って入ってくる人物を見る。

 腰まで伸びている赤い髪は、外から差し込む冬の綺麗な日差しで燃え盛る炎のように照っている。

 スラッとした体つきはまるでモデルのようで――。


「――えっ?」


 その人物の顔を見て、その言葉以外は何も出てこなかった。

 それは相手も同じなようで、俺の顔を見て驚いていた。

 エナは初めて会う相手なので、状況をよく理解していない様子。


 酒場に入ってきた人物は、あまりに予想外にの人物で、約三ヶ月ぶりの再会だった。

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