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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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冒険者登録証の発行

 カーテンの隙間から差し込む日差しが、俺の目を攻撃した。

 もう朝か……。などと思いつつ、体を起こす。

 ベッドから起き上がり、カーテンと窓を開ける。


「さ、寒い……」


 朝の冷たい風が窓から入り、俺の体を冷やす。

 俺は慌てて窓を閉め、椅子に掛けたままのコートを着た。

 寝起きで薄い格好なのを忘れていた。反省反省。


 窓から外を見ると、しんしんと雪が降っていて、街を白く染めていた。

 どうりで寒いわけだ。コートは必要不可欠だなこりゃ。

 できることならマフラーや手袋なんかも欲しいが、無駄遣いの出来ない俺は我慢するしかない。


「あれ、エナどこ行った?」


 部屋の中を見渡すが、エナの姿は何処にもない。

 そして、エナがいつも着ているローブも一緒になくなっていた。

 まさかここでの生活が嫌になって出ていった……なんてことはないよな?

 散歩に出掛けただけの可能性もあるし、早とちりするのはやめよう。


 部屋の時計を見ると、既に午前九時を回っていた。

 うむ、エナが先に起きて、いなくなっているのも納得だ。

 今日は特にやることがない。というか決めていない。広場の掲示板でも見て、何か新しい情報でも見よう。


 部屋を出て、宿屋の一階へと降りる。

 宿屋の中は暖房が効いていて温かい。魔導具は燃料が要らないし、とても便利だ。


「寒すぎる……」


 宿屋を出た俺は、手を擦ってポケットに入れる。

 昨日と比べてかなり気温が低い。

 広場を行く人々も、みんな着込んでいる。

 幸いなことに広場はまだ人が疎らで、掲示板の前は人が少ない。


「えーっと……」


 掲示板を眺めるが、新しい情報はあまりない。

 あるとすれば、昨日解決したばかりのヴァルガの事件のことくらいだ。

 主に活躍したのは騎士団で、冒険者はその手伝いをした。という書かれ方が少し気になるが。


 他には……、夜会に関する情報。これは前からあるやつだな。

 初雪の観測……は今日のことだなこれ。そこまで重要そうな情報ではない。


 凶暴化した魔物……のこれは注意喚起の記事だな。

 王様はかなり緊迫した雰囲気だったが、この三ヶ月平和に……過ごしてはないな。

 むしろ、命の危険が何回もあった。

 でも強力な魔物と対峙したのは、ヴァルガでも一件のみ。

 うーん……俺、弱すぎない?


 他の記事は店のチラシばかりで、ここにはそれ以外の情報はなさそうだ。

 ギルドにでも行こう。行くとこに困ったら、取り敢えずギルドに行っておけばいい。他には図書館で時間を潰すくらいか。


「おはようございまーす」


 というわけで、早速ギルドの建物に入った。

 外の寒さから一転、ギルドの中は暖かかった。生き返る〜。


「おはよう、アスカルくん」

「はい、おはようございます……ってエナここに居たのか」


 シェリアさんに挨拶をされたので返す。


「うむ。おはようなのじゃ」

「ああ、おはよう」


 エナにも挨拶を返して、頭を軽く撫でる。

 シェリアさんは受付ではなく、他の冒険者と同じように椅子に座って月猫団の面々と話していた。

 その隣には、起きたときには姿がなかったエナもいる。


「よっ、体の調子はどうだ?」


 月猫団のやつに話し掛けられる。


「今のところは何ともないな。むしろ、寝すぎて体がだるい」

「はははっ、その様子だと大丈夫そうだな」


 笑いながら、背中をバシバシと叩かれる。

 この人は酒飲みじゃない分、いくらかマシな人だ。

 というか、月猫団のやつらは酒さえ飲んでなければ良い人ばかりなんだし、禁酒したらどうなんだ?

 まずは隣の宿屋の店主であるカレンさんから禁酒させよう。そうした方がいいと思います。まる。


「ジオルクは体の調子はどうだ?」


 適当な場所に座り、近くに居たジオルクに声を掛ける。

 ヴァルガから帰ってきたときは何ともなさそうだったが、もしかしたら。ということもあるかもしれない。


「ちょっと腕を擦りむいたくらいだ。利き腕じゃないし、特に支障はねぇな」


 そう言って、腕の擦りむいたところを見せてきた。

 本人の言うとおり、そこまでの傷じゃない。そのうち治るだろう。


「よくあの戦闘の中、それぐらいの怪我で済んだな。俺はあまり前線に出なかったから、ほとんど怪我なんてなかったが……ってエナ?」


 ジオルクが傷を見せていると、エナがそこに手をかざした。

 そして魔法陣が出現し、一瞬で傷を治した。

 その行動に周りいる連中は驚いて、エナは注目を浴びる。


「あの傷を一瞬で……。やっぱ魔術ってのはすげぇな」

「あれぐらいの傷は魔術なら簡単に治せるのじゃ」


 エナは少しドヤ顔をしていた。

 ここには魔術が使えるやつが居ないから、自慢げにできるよなあ。

 俺も治療魔術を学んでいれば自慢できたかもしれないのか。

 ……図書館で勉強でもしてこようかな。

 学院付属の図書館なら、魔術書なんかもあるはずだし。


「こんな人のためにやってあげるなんて、エナちゃんは優しいね〜」


 シェリアさんはそう言って、エナを優しく撫でる。傍から見ていると、何だか姉妹みたいだ。


「こんな人って……」


 一方でジオルクは落ち込んでいた。


「……ドンマイ」

「まあまあ、そこまで落ち込むなよ」

「そうそう、ギルマスからしたら俺達みんな同類だ」

「悲しいこと言うなよ……」


 落ち込んでいるジオルクを、周りの連中が慰める。

 おい、なんか落ち込んでいるやつ増えてるけど大丈夫か。なんか余計に傷負ってない?

 このギルドの上下関係を改めて認知させられた気がする。

 シェリアさんまじで強いな! 逆らわないようにしなきゃ……。


「でも、戦闘以外であまり魔術を使わない方がいいわよ?」

「何故じゃ?」

「魔術を使える人は、どの業界からも万年引く手数多だからよ」


 魔術はあらゆる分野において活躍できるからな。

 建築、研究、護衛等々。

 魔術学院が出来てからは魔術が使える人も増えたらしいが、それでも人手不足らしい。


「特に冒険者なんかは、金銭によるやり取りでの引き抜きはよく聞くわね」

「別のギルドから自分のギルドに入らせるっていうことだよな?」

「その通りよ。でも私はエナちゃんを離したくないし……」


 エナに抱きつきながら、シェリアさんが言う。エナのこと気に入っているのか。

 エナも嫌そうな顔はしてないし、このギルドに馴染めているようで何よりだ。


「そう言えば、エナちゃんってまだ冒険者登録してなかったわよね?」

「うむ、しているのはアスカルだけじゃ」

「せっかくだし、エナちゃんも冒険者登録しておく?」

「うーむ……吾輩は……」


 どうすればいいといった目で、俺を見つめる。

 俺とエナは一緒に行動するつもりだから俺だけでも大丈夫かもしれないが、身分証明になるし、登録しておいて損はないだろう。


「登録してもいいんじゃないか? このギルドなら、エナも安心出来るだろ?」

「う、うむ。ではよろしく頼む、シェ……シェリア……」

「うんっ! よろしくー!」


 名前を言われたことが嬉しかったのか、またエナに抱きつくシェリアさん。

 うんうん。仲良しなのはいいことだ。


「そうだ。アスカルくんにも冒険者登録証を発行するから一緒に来てくれる?」

「冒険者登録証?」

「何処のギルドに冒険者登録しているかを証明するカードみたいなものよ。魔導具を使って写真も撮る必要があるの」


 なるほど。免許証みたいなものか。

 俺が持っているのは特務機関に所属していることを証明する、ASO日本支部第三課隊員証くらいだな。

 今はもう使う機会がないけど。元の世界に戻れるまで、ずっと倉庫に眠るんだろうなあ……。


「へー、そんなのがあるんですか」


 冒険者もそういう制度はかなり整備されているんだな。


「冒険者登録証があれば身分を簡単に証明出来るから、国外に行くなら持っておいた方がいいわよ」

「そういうことなら貰っておきます」


 俺とエナはシェリアさんに連れられ、建物の二階へと上がった。

 そこでエナは俺のときと同じように名前を書いて、一人ずつ写真を撮った。

 書類に簡単に記述をし、手続きは終わった。


 冒険者登録証はギルド管理協会に申請して、発行してもらう必要があるらしい。

 今日申請すれば、明日にはギルドに届くとのこと。

 旅をする上で知っておくべきことは、まだまだありそうだ。

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