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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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疑念

 二人の冒険者と分かれたあと、宿屋へと向かう。後ろには二人の部下がついて来ている。


「団長への報告は私一人で来るように言われている。お前達は持ち場に戻れ」

「分かりました」


 二人の部下はそう言って宿屋とは別の方向へと歩いて行った。


 もう昼も過ぎているし、早く報告しに行かないとな。

 そう思いながら、宿屋へと歩いて行く。

 街を離れていた間に特に何事も無かったようで一安心だ。


 歩くこと数分、団長が居る宿屋に入り、部屋へと向かう。

 連れが居ない所為で冒険者がチラチラと見てくるが、いつものことなのでそれほど気にはならない。こんなことに慣れたくはないのだがな……。


 部屋のドアの前に立ち、軽くノックをする。


「クラナッハです。偵察の報告をしに来ました」

「入りたまえ」


 その言葉が聞こえると、ドアを開けて部屋に入る。


「失礼します」


 部屋には一人椅子に座り、こちらを向いている団長が居た。

 団長に机を挟んで向かい合う形で椅子に座る。


「それで、どうだったかね?」

「あの少女が言った通り川の近くに洞窟があり、最近出来たと思われる魔物の足跡や爪痕があったことから、洞窟に魔物が潜んでいるのは確かかと思われます」


 団長に偵察で獲た情報を伝える。


「なるほど……」


 団長は一切表情を変えずに小さく頷いた。


「お前は洞窟を攻略すべきかそうではないかどっちだと思う?」


 こう言われることは覚悟していたが、いざ決めるとなると判断に迷ってしまうな。

 洞窟が本当に今回の件の原因だという可能性はあれど、確実ではない。

 実際に魔物も見ていないので、普通の冒険者やヴァルガの兵士だけで対処できる魔物かどうかも分からない。


 案内をしてくれた青年と少女によると、街を襲った魔物と同じ個体だと言っていたから、ここは彼等の言葉を信じるかどうかか……。

 魔物の足跡があったことから、魔物が居るのは確かなようだし、原因では無いにしてもこのまま放置するわけにもいかないか。


 もしあの洞窟から魔物が出てくるようなことがあれば、あの近くを通行した人間が被害に遭う可能性もあるだろう。


「洞窟に魔物が潜んでいるのであれば、今回の件が関係無かったとしても見過ごすわけにはいかないと思います」

「……分かった。なら騎士団で攻略隊を作り、明日洞窟の攻略をしよう」


 団長は私の意見を聞くと、少々考えた後そう言った。

 その言葉に驚いたが、冷静に話すように意識をして会話を続ける。


「明日……ですか。少し急では?」

「最初の魔物の襲撃から今日で既に四日目だ。騎士団の調査で何か成果があれば話は別だが、今のところ成果は何も無い。それが原因で日に日に住民の不満も高まって来ている。その不満を解消するためにも早めに行動するほうがいいだろう」


 確かに最近、騎士団を見る住民の目が少し変化しているのは薄々気がついていたが……。

 そうか……確かに現状の騎士団がやっていることとすれば、魔物の撃退しかない。

 住民が不満を持つのも頷ける。この状況が続くのは騎士団にとっても好ましくないだろう。


「分かりました。他の騎士にもそのように伝えておきます」


 皆このことを聞いたら困惑するだろう。

 何にせよ、騎士団内で洞窟の攻略をする隊と街に残る隊で分ける必要がありそうだ。


「それで、あの青年の件だが……。お前はどう思う?」

「私の見た限りでは報告にある特徴とほとんど同じに思います。ただ報告にある人物を見たことが無いので本人かどうかは判断しかねますが……」

「そこに関しては俺も同じ意見だ」

「本部への報告はどうしますか?」

「本部への報告は止めておこう。まだ特徴が同じというだけに過ぎない。探せばあのような容姿の青年は何人もいるだろう」


 まあ、黒髪ショートヘアで蒼眼の青年など、世界中を探せば何人かは見つかるかもしれない。


「分かりました。では私は先に戻ります」


 私はそう言って椅子から立ち上がり、部屋から出る。


「もし彼が不審な行動をしたときは私に報告をしてくれ」


 ドアを出る直前に団長が私にそう言った。


「分かりました」


 私はそう返事をして、ドア閉じた。


 アスカル=トキサカくんか……。

 彼がトオル=カワサキである可能性は無いとは言い切れない。

 この二ヶ月半くらいで何があったかは分からないが、二ヶ月半もあればギルドに所属していることはおかしくないし、交友関係を作ることも出来るだろう。


 彼がもし本当にトオル=カワサキだとすれば、何故そのことを明かさないのだろうか?

 普通ならば王城に戻ろうとするはずだ。それなのに何故、彼は王城に戻ろうとしない?

 何か戻れない理由、戻りたくない理由でもあるのか?


 そう思い、いろいろと推測をするが、いまいちピンと来るものがない。


 ……駄目だ。これ以上は憶測の域に過ぎない。それに彼がトオル=カワサキだと決まっているわけではない。

 彼に直接聞いたとしても、本人でなければ違うと言うだろうし、本人であっても誤魔化すだろう。


 今は彼のことではなく、洞窟の攻略が最優先事項だ。

 彼のことは今回の件が片付いてからにしよう。もしかしたら何処かでボロを出すかもしれない。

 彼に聞くとしたらそのタイミングだ。

 今は副団長としての責務を果たそう。

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