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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
36/72

第四騎士団

 エナと話しながら歩いていると、いつの間にか街の前まで来ていた。

 戦場となったここに今は冒険者がおらず、全員街の中に居るようだ。


「そこの君、ちょっといいかな?」


 街の中へと入ろうとすると、入り口の警備をしていた兵士に止められた。


 見たところ、王都から派遣された騎士団みたいだな。

 騎士団……となるとあまり失礼のない態度で対応したほうがいいか?

 礼儀正しくするのはあまり得意じゃないんだが……、仕方がないか。


「俺に何か用が?」

「魔物との戦いのときは見事でした。我々もつい見惚れてしまったよ」


 やはりここでの戦闘で目立っていたみたいだ。

 刻印のお陰でかなり早く戦闘が終わったとはいえ、もう少し控えめにすべきだったのかもしれない。


「ありがとうございます。ですが俺達はまだまだ未熟な故、自慢できるようなものではありません」

「いやいや、その歳であれほどの腕前を持った者は少ないよ。十分誇っていいと思うよ」


 その騎士の言葉に偽りはなく、本当に褒めてくれているみたいだ。

 騎士の言ったことが言葉通りなら、俺と同じくらいの歳で俺と同じか、それ以上の実力を持った人は居るようだ。


「そうそう、団長が君達のことを探していたよ」

「俺達を……?」


 今回の戦闘の件だろうか? まさか俺の正体がばれたとか……?

 俺が行方不明なのを一体何処の誰まで知らされているのか分からない以上、覚悟はしていたほうが良さそうだ。


 それに騎士団の団長に会えるなら洞窟のことを話せるかもしれない。ちょうどいいタイミングだな。


「その団長様は何処におられますか?」

「団長ならアクリスっていう宿屋にいると思うよ」

「わざわざありがとうございます」


 俺は騎士に礼をする。

 騎士は話を終えると警備に戻った。


「それじゃあ、俺達は宿屋に向かうか」


 俺はそう言ってエナを見ると、信じられない光景を目の当たりにしたかのように、目を丸くしていた。


「何をそんなに驚いてるんだ?」

「アスカルが礼儀正しいことに驚いただけじゃ」

「あぁ、そういうことか。俺は向こうの世界で組織に属してたから多少の礼儀は身についてるんだ」


 そういえばエナと会ったときはタメ口だったか? 礼儀正しいとは言い難い態度だったのは覚えているが。

 初めてあったときは子供だと思ってたから敬語で話そうとは思わなかったな。


「組織に所属するというのも大変だのう」

「確かにいろいろと大変だったなぁ……」


 部隊に入れられる前の訓練はかなりスパルタで、訓練が終わったらすぐに寝てしまい、自由な時間がないことなんてざらだった。

 だがそのお陰で今の自分があるのだから後悔はない。


「取り敢えず、騎士団の団長に会いに行くか」

「うむ。あの洞窟のことも知らせねばならぬからな」


 そうして俺とエナは宿屋へと歩き出した。

 街の中は魔物との戦闘前より冒険者が増えているように見えた。

 戦闘があったばかりで街は騒がしく、ヴァルガの住民は不安そうにしている。


 街の外では冒険者が調査をしており、今は近くの森を探索しているようだ。

 しかし、未だに魔物の襲撃の原因へと繋がる手掛かりが一つ得られない所為か、冒険者達からも前向きな話は聞こえてこない。


「魔物の襲撃初日から日が浅いからか、エナが見つけた洞窟のことは発見されてないんだな」

「あそこを調査していたとしても、普通の冒険者では洞窟があることは分からなかったであろう」


 もしそうだとしたら俺達がヴァルガに来ていなかったらここはどうなっていたんだ……?

 エナの言う普通が俺と同じかは分からないが、それなりの実力者なら分かるということだろう。

 そう考えると俺があの横穴を見て分からなかったのは悔しいな。


 それから歩くこと数分後。騎士団の団長が居るであろう宿屋に着いた。


「ここがアクリスっていう宿屋か」


 俺とエナは宿屋の名前を確認して宿屋の中へと入る。


「冒険者が多いな」

「それだけ問題が大きくなっているということであろう」


 宿屋の中はほとんどが冒険者で、酒を飲んでいる人も居る。お前らヴァルガに何をしに来たんだよ。


 そんな宿屋の中に騎士団の服を着た強面の男と綺麗な女性がおり、その周りだけ冒険者が避けていた。


 すると強面の男は俺とエナが見ていることに気が付くと、俺とエナを睨みつけるように見た。

 冒険者があの周りを避けるのは強面の男が原因だろう。


 俺とエナは恐る恐る騎士団の二人に近づく。


「すみません。貴方が騎士団の団長でしょうか?」

「いかにも。私が第三騎士団団長のグラム=オルゲルだ。君達は確か……」


 騎士団団長の男は見た目通りの低い声でそう言った。

 周りの冒険者は怖いと思いながらも、騎士団団長と話している俺のことが気になるようで、注目を浴びている。


 滅茶苦茶怖いんですけど!?

 この人絶対既に何人か殺ってるよ。映画とかで出てくるマフィアのボス役が似合いそうだな。

 でもその見た目だと部下まで周りの冒険者みたいに怖がってない? 大丈夫?


「北門の警備をしている者から、貴方が俺達に話があると聞きました」

「そうか、君達か。だがここで話をするのは止めたほうがいいだろう」


 騎士団団長は周りを見てそう言った。

 すると俺達のことを見ていた冒険者は慌てたように目を逸らした。

 騎士団団長は椅子から立ち上がり、受付へと歩く。


「すまない。部屋を借りたいのだが……」

「は、はい! すぐにお持ちします!」


 騎士団団長に話しかけられた男性は怖がって声を震わせ、慌てて店の奥へと鍵を取りに行った。

 その男性の様子を見て、話し掛けた本人は肩を竦めているようだった。


 もしかしたら本人も顔が怖いことを気にしているのかもしれない。誤解が生まれやすいってのは嫌だよなぁ……。


 騎士団団長は奥から戻ってきた男性から部屋の鍵を受け取ると、こちらに戻ってきた。


「では部屋で話をしよう」

「分かりました」


 俺とエナは部屋へと向かう騎士団の二人の後を歩く。

 四人で二階の一番奥の部屋に入り、それぞれ椅子に座った。


「さて……、まずは先の戦闘は見事な戦い振りだった。お陰で我々の負担も少なかった」

「お、お役に立てたようで何よりです」


 俺は失礼にならないようにと、言葉に気をつけながらそう言った。


「はいはい、ちょっとストップ」


 すると騎士団団長の隣に座っている女性の騎士が会話を遮り、騎士団団長のほうを向いた。


「この子達が怖がっているぞ? もう少し優しく言ってあげられないのか?」

「俺はこれでも優しく言ったつもりなんだが……」


 この二人、仲良さそうだな。俺が宿屋に来たときも二人で話していたみたいだし。


 話を遮ったときには、俺が何か失礼なことでもしてしまったのかと思ったが、どうやら違ったみたいだ。


「あーもう。私がこの子達に話すぞ」


 女性は騎士団団長にそう言うと、俺とエナのほうに向き直る。


「私は第三騎士団副団長のアルマ=クラナッハだ。そう畏まらなくて構わない」


 俺はクラナッハさんにそう言われると、肩の力を抜いた。


 女性は副団長を務めているようで、この怖い団長に対して口出しができるというのに納得がいく。

 それに仲が良さそうに見えたのも、お互いを信頼しているからかもしれない。

 団長から信頼されている人でないと副団長を務めるのは難しいだろうからな。


「まず君達への報酬の件だ」


 報酬か……。

 魔物の襲撃に関する調査は何一つ報告していないはず……、となると北門での戦闘の件だろうか?


「先の戦闘で被害が少なかったのは、あの場に居た君達二人を含める四人の冒険者の力が大きかったと我々は思っている」


 クラナッハさんがそう言うので、北門での戦闘の風景を思い出そうと、記憶を辿る。

 すると確かに俺とエナ以外にも、相当な数の魔物を倒している人物が三人居たことを思い出す。


 あの場でまだ余裕があったように見えたのは俺とエナの二人を含めて五人。その内一人は騎士団の服を着ていたな。

 顔は鮮明には覚えていないが、確かオルゲルさんだったような気がする……。

 だとしたら冒険者は四人……いや、三人だな。エナは冒険者登録はしていないはずだ。


「そこで君達にはそれなりの報酬を支払うつもりだ」

「報酬、ですか……」


 依頼の内容は魔物の襲撃の原因の調査だったはずだ。街の防衛をしたというだけで報酬を支払って大丈夫なのか?

 ま、貰えるんなら有り難くもらうけどな!


「それで、君達の氏名と所属ギルドを教えてほしい」


 名前と所属ギルドか……。それぐらいなら問題はなさそうだ。


「俺はギルド月猫団所属のアスカル=トキサカです」

「吾輩はエナ=ルージュだ」


 俺とエナがそう言うと、クラナッハさんは少し考えごとをするように、顎に手を当てた。

 そして、何かを確認するようにオルゲルさんよ話し、首を傾げてエナのほうを向いた。


「エナ=ルージュという名前は月猫団の冒険者名簿には無かった記憶があるのだが……」

「彼女はギルドに所属してなくて、所属してるのは俺だけですね」

「む、そうなのか……」


 するとクラナッハさんはまたしても考え込んでしまう。今度は分からない……というよりは何か悩んでいるようだ。

 報酬のことで何か不都合なことでもあるのか……?


「そう不安そうにしなくていい。ちゃんと報酬は支払う」


 思考を巡らせていると、クラナッハさんは俺が不安そうにしていると思ったのか、俺を見てそう言った。


 依頼の報酬は必ずギルドを介して払われる……。

 なるほど、クラナッハさんが悩んでいるのはそれが原因か。


「報酬のことなら俺達二人分をギルドに渡してもらって構ないです。エナもそれでいいか?」

「吾輩は構わぬぞ?」


 ギルマスのシェリアさんはエナのことを知ってるから大丈夫だろう。


「まぁ、君達がそれで構わないのならそれで良いが……」

「ギルマスもエナのことは知ってるので大丈夫だと思います」

「そうか。なら報酬の件はこれで一旦終わりとしよう」


 するとクラナッハさんはさっきまでの柔らかい表情とは打って変わって、真剣な表情になった。


 ……さっきまでの話はおまけって感じか。クラナッハさんの様子を見るに、ここからが本題みたいだな。


 時刻は昼前。

 街中には賑やかさがまだ残りつつも、住民の不安は加速していた。

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