表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
35/72

川辺の洞窟

 坂道を上って平原が見える場所まで来て辺りを見渡すが、エナは見当たらない。

 近くの地面を見ると僅かに小さい足跡が残っており、その足跡を辿ることにした。


 足跡を辿りながら周りにエナが居ないか探していると、川の近くの横穴の入り口にエナが居るのが見えた。

 俺はエナに近づいて声を掛ける。


「何してるんだ?」

「む?」


 エナは突然声を掛けられたことで警戒するが、俺だということが分かると警戒心を解いて再び横穴の中を見る。


「気になることがあると言ったであろう?」

「あぁ、言ってたな」

「その気になったことの正体はどうやらこの横穴の中にあるようだ」


 エナがそう言うので横穴の中を見てみるが、特に何もない。

 穴はそこまで長くなく入り口もそこそこ広い為、奥まで光が届いていて明るい。


「特に何の変哲もない横穴みたいだが……」

「見た目は確かにそうだが、壁の奥から魔物の気配がするのだ」

「それは本当か!?」


 壁の奥から魔物の気配がするということはこの横穴は洞窟になってて、まだまだ続いているということか?

 あの壁を人が作ったようには見えないし、天井が崩れて道が塞がったようにも見えない。

 別の場所に入り口があるのかもしれないな。


「でもここって街からかなり離れてるぞ? どうして気が付いたんだ?」

「魔力反応が大きいとあの距離でも特定はできなくとも感じるものはあるのだ」


 でもあの距離で魔力を感じ取れるとなるとそこらの魔物とは比べ物にならない程強い魔物なのかもしれないな。


「もしかしたら街を襲って来た魔物と関係があるかもしれぬな。それほど大きくないが、魔物の数は百を軽く越えておる」

「もしそうだとしたらこの奥にある洞窟を制圧しない限り魔物の襲撃が続く可能性があるのか」


 このままあの数の魔物の襲撃が続けばいずれヴァルガは陥落するかもしれない。

 それに街からそこまで距離がないこの洞窟に魔物が潜んでいる以上、放置するわけにもいかないだろう。


「一度中を覗いてみるか?」

「うーん……、まだここが原因と決まったわけじゃないから中を覗いてみて確かめるのもいいかもな」

「なら決まりじゃな」


 エナはそう言うと横穴の中に入っていく。


「あれ? そっちは行き止まりじゃないのか?」

「中へと続くのはここだけじゃ。恐らく魔物か何かが魔術を使って入り口を塞いだのであろう」


 エナの言ったことから察するに、魔物でも魔術を使う奴は居るみたいだ。魔物以外が塞いだとなると……本で見た魔人とかだろうか?


「でも塞がってるぞ? どうするんだ?」

「道が無ければ作ればいいのだ」


 作ればいい……? それってつまり……。


 エナが何をしようとしているのか考えようとした時にはエナの拳に魔法陣が展開されており、次の瞬間洞窟内に轟音が鳴り響いた。

 洞窟を塞ぐ壁は跡形もなく破壊され、真っ暗で先の見えない洞窟が現れた。


 またしても殴って破壊。エナにとって物理攻撃は使い勝手がいいんだろうなぁ。

 俺も訓練すればできるようになるだろうか?


「よし。それでは中に入るぞ」


 エナは洞窟の中へと入っていく。俺もその後に続いて洞窟の中に入る。

 洞窟内を少し進むと、広く暗い場所へと繋がっていた。川の近くにあるからか天井から水滴が落ちており、その音が響いている。


「アスカルは超能力で暗闇の中でも周りを見られるのであったかの?」

「あぁ、今も使ってる」

「ならこのまま進むとしよう。明るくすると目立ってしまうからの」


 俺の超能力による目の改変で夜目が利くようになるといっても、完全な暗闇では周りを見ることは難しい。

 だが洞窟内にある魔光鉱石が光っているお陰で、周りを十分に見ることができている。このまま進んでも問題は無いだろう。


 にしても魔光鉱石が光ってるってことはここは魔力が多いのか?


 洞窟内は入り組んでおらず、道は一つしかないので迷うことはなさそうだ。

 俺とエナは洞窟の奥へと進んで行っているが、魔物は未だに一体も見ていない。

 洞窟内は俺とエナの足音と、水の落ちた音だけが聞こえていた中、突然石が転がった音が聞こえた。


 するとエナは歩くのを止め、その場で立ち止まる。


「エナ、どうしたんだ?」

「まずい……」

「え?」


 立ち止まって感覚を一生懸命研ぎ澄まそうとしているエナの顔は青ざめていて、ただごとではないことが起きているのはすぐに分かった。


「急いでこの洞窟から出るのだ!」


 エナはそう言って俺の腕を掴んで引っ張る。


「あ、あぁ……分かった」


 エナの言ったことに従って、身体能力を強化し、エナと共にこの洞窟へと入って来た場所に向かって全力で走る。

 洞窟内は地形が悪く、地上のように走ることができない。足元に注意していないと、石で躓いてしまいそうだ。


 急いで外へと走り、洞窟の入り口から僅かに入る光が見えたところで後ろを振り向くと、数えきれないほどの魔物が俺とエナを追いかけてきていた。


「何がどうなってるんだ!?」

「吾輩にも分からぬ! それよりあと少しで外だ!」


 魔物はすぐそこまで迫ってきており、全力で走っていると視界が明るくなり、外に出た。

 エナは洞窟から出ると入り口で振り返り、急いで入り口を結界で塞いだ。


 魔物は結界の向こうで結界を破ろうと、何回も攻撃しているが、結界が破壊される様子はない。


「はぁ……はぁ……」


 まさか全力で走る羽目になるとは思わなかった……。こうも立て続けに動くとなると流石にしんどいな……。


 体力は魔力のように超能力で消費する前の状態に戻せるわけではないからなぁ……。


「それにしてもなんで突然魔物が襲ってきたんだ?」

「吾輩らの侵入に気付いたのであろう。あの距離で気付くとは、かなり索敵能力に優れておるようだな」


 いや、それだけじゃない。

 街に襲ってきた魔物もそうだったが、目的を持って行動しているように見える。

 普通の魔物なら人を無視して街に入ろうとすることはないはずだし、自分の生息地からは離れないはずだが……。


「ひとまず街に戻ってこのことを報告するか」


 この洞窟に街を襲ってきた魔物と同じ種類の魔物が居たから、魔物に街を襲われている原因はこの洞窟で間違いないだろう。


「吾輩らだけで制圧できるとは思えぬし、それが良いであろうな」


 俺とエナは洞窟を離れ、騎士団や警備隊に洞窟のことを知らせるために街へと歩き出した。


 歩いていると近くの川の流れている音が聞こえ、俺はふと川の方を見る。

 川の水は底が見えるほど透明で、小さい魚が元気に泳いでいる。

 それは元の世界ではほとんど見ることができない光景で、俺はつい足を止めてしまった。


「何をしておるのだ? 早くしないと置いて行ってしまうぞ?」


 川を眺めながら元の世界のことを思い出しているとエナに声を掛けられる。


「あ、あぁ……。今行く」


 俺は自分の足が止まっていることに気が付くと、すぐにエナの隣に駆け寄り、街に向かって歩く。


「川を見て何をしておったのだ?」

「ちょっとだけ元の世界のことを思い出していただけだ」

「そうか……。アスカルはやはり元の世界に戻りたいのか?」


 あれ? そういえばエナに別の国に行く理由って話してなかったか? だとしたら今のうちに話しておくほうがいいだろう。


「言い忘れてたが、元の世界に戻る方法を見つけるために俺は別の国に行こうとしたんだ」

「そうであったか……。吾輩も別の世界に行けるなど聞いたことがないのう……」


 どうやらエナも聞いたことがないみたいだ。

 それも当然なのかもしれない。

 三百年前に別の世界に行く方法が見つかってたのなら、王様は無いと断言してはいないはずだ。


 俺が一人で行動するのは未だに見つかってない元の世界に帰る方法を探すためだ。

 こっちの世界に来られたのなら、必ず帰る方法はあるはずだ。


 そのはずなのに……、エナを見ていると俺はこの世界に残りたいと思ってしまう……。

 もし元の世界に帰れるようになったとしたら。俺はそのとき、どちらを選ぶのだろうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ