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エーテル・グレイス  作者: クロビー
序章 アルストラ王国編
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勇者公表

 街は賑やかというより、いつもより騒がしいく感じ、ついつい通り過ぎる人を見てしまう。


「賑やかな場所だのう。いつもこのような感じなのか?」

「いや、今日はいつもより騒がしいな」


 一体何があったのだろうと思いつつ宿へと向かうと街の広場の掲示板に人だかりができていた。


「何かあったのか?」


 一体何があったのかと思い、二人で掲示板を見に行こうと近くに行ったが見えるのは人の頭だけで、掲示物は見えない。


「人の背中しか見えぬ……」


 まぁ……エナは身長が低いから一番前に行くか

人が居ないときに見るしかないだろうなぁ。


 エナは場所を変えたり、ジャンプしてみたり、小柄なのを活かして人と人との間を縫って掲示板の前に行こうとしたが、どれも失敗に終わった。


「駄目みたいじゃのう。また後にして宿に行かぬか?」

「俺も全く見えないし、そうするか」


 掲示物を見るのは一旦諦めて宿に向かった。

 宿のカウンターにはカレンさんではなく、先日シェリアさんに紹介された男性が居た。


「すみません。部屋の鍵を借りたいんですけど」

「えーっと……確か君はアスカルくんって呼ばれてたかな? ちょっと待ってね」


 男性はそう言うとカウンターの下で部屋の鍵を探し始めた。

 普段ここに居るカレンさんよりは手際は悪く感じるが、それでも手慣れている感じはある。


 カレンさんの知り合いみたいだし前にもここで働いていたのかもしれない。


「あったあった。はいこれ」

「ありがとうございます。じゃあ行くか」


 男性にお礼を言い、エナと部屋に向かう。

 部屋の鍵を開けて中へ入ると、エナはベッドへに飛び込んで枕に顔を埋める。


「アスカルの匂いがする」

「そりゃあ毎日そこで寝てるからな。でも恥ずかしいからあまり匂いは嗅がないでくれ」


 エナは枕に顔を埋めて匂いを嗅ぎながら足をバタバタと動かしている。

 異世界に来たばかりのときは最悪だと思っていたが、エナを見ていると異世界に来て良かったと思える。人間って不思議だ。


「さて……取り敢えず寝泊まりする場所はここになるけどいいか?」

「そ、それはここで一緒に暮らすということか!?」


 エナは体を起こして、顔を真っ赤にしながらそう言った。


「あ、あぁ。そうなるが……、もしかして嫌だったか?」

「い、嫌ではないぞ! むしろ嬉しいぞ!」

「そうか。じゃあこれからよろしくな」


 エナは体をもじもじさせながらそう言い、『嬉しい』という言葉に俺は喜んでしまう。


 だがエナが顔を赤らめてもじもじしている姿を見ていると、自分はとんでもないことを言ったのだと自覚してしまった。

 一度自覚してしまうと忘れようとしても、それは決して頭から離れず、エナを見ると余計に意識してしまって視線を逸してしまい、自分でも分かるほどに顔が赤くなっていた。


 何気なく一緒に暮らすって言ったけど、男女が同じ部屋で過ごすなんて、この世界でも特別なことなのではないか?

 いや待て、エナは別に意識してないかもしれない。ただ俺が勝手に意識しているだけだ。落ち着け。


 そう自分に言い聞かせ、再びエナに視線を向けるとエナと目が合い、互いにまた目を逸してしまった。


 いや、これは多分エナも意識しているんじゃないか? 優柔不断になるな俺。一緒に暮らしていても間違いさえ犯さなければ大丈夫だ。


「そ、それでこれからどうする? まだ時間はあるけど……」

「わ、吾輩は少し家に用があるから一度戻る。あまり時間はかからないから心配しなくともよいぞ?!」

「あ、あぁ。じゃあ俺は隣の建物に居るから用事があったらそこに来てくれ」


 そう言って会話を終え、二人は別行動することになった。


 エナが部屋に出た後、心を落ち着かせてから外に出る。

 部屋の鍵を閉め、カウンターにいる男性に鍵を預けて広場へと出た。

 掲示物の前は多少人が減っていたものの、掲示物は見えそうにない。


 これは駄目そうだな。

 いつ掲示物が貼られたかは知らないが、街を出たときはこんな人だかりなんて無かったし、俺が街に居ない間に貼られたのだろう。


 月猫団の人達は知っているのだろうか?

 ギルドに行ってみて、ジオルクがいなければシェリアさんに聞いてみるか。


 広場の掲示板から離れ、月猫団の建物に入る。

 ギルドにはまだ日中だというのに酒を飲んでいる冒険者もいて、大変賑やかだ。

 いつも酒飲んでるなこいつら。


 ギルドの中を見渡すとシェリアさんと話しているジオルクの姿があり、俺はそこに近づく。


「こんにちはシェリアさん。あとジオルクも」


 二人に声を掛けると会話を中断して、二人ともこちらを向いた。


「お、アスカルか」

「アスカルくんこんにちはー」


 シェリアさんは挨拶をすると席を移動して、俺の目の前の椅子を空けてくれた。


「ありがとう」


 席をわざわざ空けてくれたシェリアさんにお礼を言う。


 俺にとっては話しやすい二人で助かるんだが、俺が二人の邪魔になっていないか心配である。

 たった三ヶ月でここまで気の許せる人ができたのは奇跡だろう。


 俺が椅子に座るとジオルクが口を開いた。


「掲示板に貼られた紙見たか?」

「いや、人が多すぎて見てないな」

「じゃあ何があったのかも知らねぇのか?」

「知らないな。やっぱり街が騒々しいのはあれに書かれてたことが原因か?」


 偶に出現するっていう強力な魔物が確認されてみんな困ってるとか?

 いやでも街の人からはそういう暗い感じはしなかった。どちらかというと明るい感じだったな。


「実はね、王城に勇者が召喚されたみたいなのよ」

「勇者?」


 勇者っていうと来馬たちだが……異世界召喚のことが公表されたってことだろうか?


「そう、勇者! それも今回は勇者と一緒に召喚された仲間が四十人もいるらしいわよ!」


 何故か先程からシェリアさんはいつもより早口になっていて、少し興奮しているように見える。


「二度目の異世界召喚で勇者が召喚されたとなると、今回の勇者様は二代目勇者になって、神魔大戦で魔王を倒した勇者は初代勇者になるってことよね。やっぱり勇者様ってかっこいいのかしら? アスカルくんも気になるよね!?」

「待った待った、一旦落ち着け!」


 興奮して段々と早口になっていくシェリアさんをジオルクが静止すると、シェリアさんは正気に戻った。

 周りの視線が集まっているのを感じたらしく、恥ずかしそうに顔を赤らめながら前のめりになっていた姿勢を元に戻し、椅子に座った。


 こんな興奮したシェリアさんを見るのは初めてだ。勇者という存在にそれだけ興味があるということなのだろう。


 それにしても勇者の仲間が四十人ね……。

 まあ、俺のことは公表されないだろうなぁ。


 世界を守るために召喚した異世界人が既に一人亡くなっている……遺体は確認されてないだろうからこの場合は行方不明か?

 それを明るみにすれば市民の不安を煽ることになるだろうし、絶対に公表は避けるだろうな。


「それで一週間後の夜に王城で夜会があってな。それに各ギルドのギルマスが出席するんだよ」

「自由参加だけどね。まあでも、勇者含めた異世界人と合うなんてそうそう無いと思うし、ほとんどのギルマスは来るんじゃないかしら?」


 夜会か……これだけ騒がしくなってるし、街では一週間はこの話題で持ち切りになりそうだ。


 シェリアさんは勇者に興味津々みたいだから夜会に出席するだろうし、エレナ=ザイートとも会えるだろうか?

 もし会えるなら俺と会うように言ってほしい。


「エレナ=ザイートっていう魔術師知ってるか?」


 俺は確認のために一応シェリアさんに聞く。


「えぇ、知ってるわよ。でもアスカルくんはなんで知ってるの? あの子卒業以来ほとんど王城にいるから外との交流はほとんど無いと思っていたのだけれど……」

「あー……親がたまたま王城にいる人と知り合いで、たまたまその魔術師のことを知ったんだよ。それで一週間後の夜会でその魔術師に俺に会うように伝えてくれないか?」

「たまたまねぇ……。まぁそれくらいならいいわよ」

「ありがとう。助かるよ」


 俺の頼みにシェリアさんは快く引き受けてくれた。

 ジオルクはというと俺とシェリアさんの会話に入ってこれずに、虚空を見つめていた。


 三人だと一人が喋れないことが多くてなんだか悲しくなるよな。

 俺も何回か経験してるからジオルクの気持ちがなんとなく分かってしまう。


 流石にジオルクも会話をしたいのか、シェリアさんと俺の話が一段落したところで話し始めた。


「それでどうやら勇者達は迷宮の攻略をするみたいなんだよな。俺も迷宮に行ってみてぇぜ」

「あそこは国の許可がないと入れないんだから諦めなさい。でももしかしたら冒険者も一緒に行けるという可能性もあるのかしら?」

「そうなればいいんだがなぁ」


 どうやらジオルクは迷宮に行ってみたいらしい。

 まぁでも国が管理してるみたいだし無理だろうなぁ……。

 俺も今はただの冒険者だから立ち入りの許可はさせてもらえないだろう。


「その辺りのことは夜会のときに聞いてみるわ」

「本当か? なら頼む」


 シェリアさんが夜会のときに迷宮に入れるかどうかを聞いてみると引き受けてくれた。

 シェリアさんの性格も相まってギルマスってのは大変……いや、この性格だからこそギルマスが務まるのか。

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