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アンプリファイア  作者: せっぴつ
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プロローグ

アベルが目を覚ますと視界には暗闇が広がっていた。

一瞬、自分の状況が分からなくなったが、すぐに立ち直る。


『俺は、魔法の実験をしていて』


どうやら実験は失敗に終わったらしい。

失敗した魔法の行き場のない魔力が衝撃波として自分を吹き飛ばしたのだろう。その際に頭でも打ったのか、どうやら気を失っていたようだ。

失敗した魔法の力が反動となって自分に返ってくる。魔法実験では良くあることだ。


アベルはそう解釈すると上半身を起こし後頭部を撫でた。特に痛みを感じることはなく、体には異常はなさそうに思える。

座ったまま辺りを見回す。

そこでふと違和感を感じる。

アベルは魔法研究のためにある洞窟にいた。今も洞窟の中にいる。どこにもおかしな点はないように思える。しかし、違和感を感じる。自分がいた洞窟とは雰囲気が違う様な気がする。

あらためて周囲を見回すと明らかにおかしなことがあった。

魔法研究のために持ち込まれた机と椅子、何十冊もの書物が全てなくなっていた。

アベルは頭をフル回転させて現状の把握を試みる。何が起きたのか、頭を整理して考える。


気絶している間に何者かによって持ち出された可能性。

実験を行っていた魔法の暴走により、周囲の物が異空間へ転移した可能性。

もしくは自分自身が異空間へ転移した可能性。

何者かの結界魔法により幻を見せられている可能性。

などなど。

様々な可能性を考えてみたが結論は出ない。

少なくとも誰かに持ち出された可能性はないと思える。なぜなら魔法研究に使っていた多くの書物が奪われることは理解できるが、何の変哲もない木製の机と椅子まで持ち去る意味が分からないから。

何者かの結界魔法の可能性も低いと思える。机と椅子、書物が失われた空間。その様な幻術を見せることに意味があるとは思えない。もしも自分に害を成そうと考える者や魔法書を奪おうとする者がいたとして、であればもっと自分を混乱させる幻を見せるだろうと思えるし、気絶していた間にも何らかの動きがあって然るべきだと思う。

異空間へ転移した可能性については…

実はアベルは異空間転移魔法の研究、実験を行っていた。だから、その可能性を考えるのは至極当然であった。

暴走した異空間転移魔法により転移した可能性。それはかなり飛躍した考えだったかもしれない。しかし、アベルはその考えを捨てることができなかった。それは自分の希望、そうであったら良いという想いがあった。

物体、もしくは自分が空間を飛び越えて移動したのだとしたら、今回の実験は失敗であったとしても異空間転移魔法の完成に向けて大きな前進になる。


アベルは立ち上がると念のため魔力感知の探索魔法を行使した。いくつかの小動物らしき小さい魔力反応はあったが、魔獣や人らしき反応はなかった。

安全の確認を終えてあらためてアベルは考える。物がなくなるという実際に起こった現象ではなく、今度は自分が感じる違和感の正体について。

そこでアベルはふと思い付いて魔法を使役するのではなく、ただ己の魔力をそのまま解放した。


『違和感の正体はこれか?』


この洞窟は天然の魔導鉱石を含む地層に覆われている。魔導鉱石とはその昔、魔導師カルナウッドが発見した鉱石で、魔力を流すための伝魔率が高く、ハイレベルの術式を組む場合に効率良く魔力を送り込むために使われる特殊な鉱石である。

この鉱石の特徴として魔力に触れると共鳴して青く光る。この洞窟内であれば、魔力を放出すれば必ず反応が出る。壁や天井の至るところが青く発光し、夜空の星の様な幻想的な光景を見せてくれる。

しかし、今はただ一つも光は見えなかった。


『ここはどこだ?』


アベルはその疑問の答えを知るべく、外に出ることにした。

辺りを観察しながら洞窟の出口に向かう。何度も通って歩き慣れた洞窟内の道がいつもと違う気がする。最初に感じた違和感は増す一方であった。

そんな訳でアベルは、洞窟を出る頃には、自分が転移したのだという思いを強くしていた。



洞窟から出ると周囲には緑が広がっていた。

洞窟は木々が生い茂る山間、調度山の中腹にある。

アベルは周囲を見回し、おかしな点はないか確認する。

一見いつものゴドビ山の風景に見える。

しかし、やはり違和感を感じる。

あそこには大きな木が立っていたような。

あの辺にはスズナリの木が群生していた様な気がする。

それは洞窟内で感じた違和感のせいでそう感じたのかもしれない。

洞窟内を出て外の景色を確認しても違和感は拭えず、何の結論も出せないままだった。

洞窟の外に出ても何の確認もできない。ならば、とアベルは飛行魔法を行使する。

アベルの足元で風が渦を巻き、その体を宙に浮かせる。そのまま生い茂る木々よりも高く上昇し、周囲を眺めた。

体を回転させながら360度見渡す。


『!?』


アベルは驚きのあまり声を出すこともできなかった。



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