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「私…。…思い出した…。私がこの世界を作ったんだ…。私の大切な友達だったあの子の為に…」


 そういうとフローラは再び意識を失ってしまった。


「フローラ!!フローラ!」


 ルルドが再び必死に呼びかけるがフローラが目を開ける事はなかった。


「すいません。彼女を連れて部屋に戻ります」


「わかりました。何かあったらすぐに呼んでください」


「はい。ありがとうございます。では失礼します」


 ルルドは悲痛な表情を残したまま彼女を横抱きにして立ち上がると部屋を後にしていった。ルルドの二人の子供達もカインさんに連れられてその後に付いていく。


『私が世界を作った』とはどういう意味だろう。


「ソフィア様。アルヴィス様とユリウス様を少し休ませたいのでお部屋に連れて行きます」


 私はロディさんの声に気が付き慌てて意識を元に戻す。思考に没頭してしまうところだった。


「よろしくお願いします」


 そういうとロディさんは二人に声をかけて部屋から出ていった。


 彼女はもしかしたら転生者なのだろうか…。私も部屋を後にして歩きながら思案していると隣を歩いていたロイドが声をかけてきた。


「姉さん、彼女が言っていた事ってどういう事なの?」


 ロイドも相当困惑している様子だった。


「私にも分からないわ…。何故姿を消したのか、何故記憶喪失になったのか今はまだ彼女について分からないことだらけだわ…。でも再びフローラが目を覚ましたら彼女の口から直接聞いてみましょう。今ここで憶測を並べても意味がないわ」


 そうロイドに話しながら色々な仮説を頭の中で立てていた。


「ほんとっ今日はなんて日なんだ…。もう色々ありすぎて頭がついていかないよ」


 ロイドは両腕を上げて自分の髪をクシャクシャにしながら混乱した頭をどうにか元に戻そうとしているようだった。ロイドのそんな様子を横目に見ながら私はもう一つの疑問について考えていた。ドリュバード家の屋敷の中にいるにもかかわらずロレインがカインさんをフローラの護衛につけている事だ。何かを警戒しているように思える。

 ロレインの到着を待って彼女と色々話す必要があるようだ。


 辺りはすっかり日が落ちて薄暗くなっていた。カインさんと一緒に護衛をしてくれた兵士が一人私の目の前まで歩いてくるとルルド達が乗ってきたという動物を彼らが泊まる予定だったと思われる宿屋からこちらまで運んできたと報告を受けた。その護衛の兵士が言うには馬のような大きさで鹿に似ているが少し違う珍しい動物だったという。


 私はルルドにその事を伝えようとまっすぐ彼らがいる部屋へと向かった。ロイドは途中ベルカに呼び止められ今日泊まる部屋へと案内されて行った。


 ルルドの部屋の前までくるとカインさんが警護のためにドアの横に立っていた。

 彼に軽く会釈をすると部屋のドアをノックする。しばらくして静かにドアが開き、中からアンリが顔を出した。

 彼に招き入れられて部屋の中に入るとルルドがフローラの手を握りながらベッド脇に座り心配そうに彼女を見つめていた。


「ルルドさん、フローラの様子はどうですか?」


「あぁ、ソフィアさん。今彼女に異常がないか確認したところです。意識が戻るように全力は尽くしましたが見ての通りです…」


 ルルドは再び彼女の方を向くと憔悴しきった表情で彼女を見つめる。


「そうですか…」


「あの…。彼女の言っていた事ってどういう意味なんでしょうか…」


 ルルドはフローラを見つめたまま、まるで独り言のようにそう呟いた。


「私にもよくわかりません。彼女の意識が戻らないことには…。あの…護衛の兵士さんが宿屋からルルドさん達が乗ってきた二頭の動物をここまで連れてきたようです、空いている馬小屋に連れていってもらいました。今日はこのままこちらで休んでいってください」


「あぁ!色々ありがとうございます!お言葉に甘えさせてもらいます。あの二頭は親子でララとココといいます。私達の大事な家族の一員なんです。後で迎えに行こうと思っていました。ちょっと様子を見てきますのでここをお願いしてもいいでしょうか」


「はい、もちろんですよ」


「ララとココだ!父さん僕も行くよ!アリスも来るかい?」


 アリスはこくりと頷くとアンリに手を引かれていく。私はルルドと入れ替わるとフローラの手を握った。


 彼らが部屋を出ていくと途端に辺りは静寂に包まれてしまった。



「フローラ。本当に生きて再会できてよかった。どうか早く目を覚まして…」


 穏やかに眠るフローラの顔を見つめていると彼女との様々な思い出が蘇り、こうして長い時間をかけて再び再会できた事が奇跡のように思えて目頭が熱くなってしまった。様々な思考で頭が埋め尽くされると誰かが呼んでいる声で辺りの様子に完全に意識がなくなってしまっていた事に気が付く。再び後ろで声がしてビクっとして振り返った。


「よお。やっと気が付いたか。お前、相変わらずだな。その癖。意識が一点に集中すると周りの声や音がまるっきり聞こえなくなるのな」


 私は驚いて振り向くとそこにはカインさんが立っていた。


「あぁそのすごく驚いた時のその表情。外見は違うけど不思議と変わらないな」


 腕組みをして豪快に笑うその姿はいつものカインさんではなかったが私はその話し方と仕草が誰のものであったのか思い出した。


「もしかして翔!?」


「あぁそうだよ。ハル」


 あの王宮の図書室で初めて会ったあの感覚がなんだったのか今やっと合点がいった。彼は私の前世の幼馴染でもあり私の夫だった人だ。


 生まれた時から家が隣同士で付き合いは随分長い。心を焦がす激しい感情はとうにないが親友のような人生の戦友のようなそれでいて誰よりも愛してやまない人だった。いつまでもドキドキする関係などありえはしない。恋がときめきを与えてくれるなら愛情は信頼と安らぎを与えてくれる。私達はそういう関係になっていた。


「久しぶりハル。あの日あの場所で初めて会った時俺はすぐに気が付いていたよ。姿が変わっても根本は何にも変わってなくて昔のままだな。あの日からずっと見守っていた。お前が幸せそうなら俺はそのまま見守っているつもりだったが…。お前の旦那のあの男はなんだ。クズだな。色々聞いているぞ。あの女に随分ご執心だったそうじゃないか。あんなクソビッ…。いや、なんでもない。よく好きになれるな。趣味が悪すぎだろう」


 相変わらす口が悪いなぁと思わず苦笑いする。

 前世の彼も外見は穏やかで優しそうに見えたが口を開けばこれである。彼本人はそのギャップにあまり気が付いていない。学生時代なんかは彼の外見だけで好意を寄せて告白してきた女性を何度その場でがっかりさせ撃退していたことだろう。

 それを彼に言うと外見だけで判断する奴が悪い、俺の中身を自分勝手に決めつけて想像と違うと言って泣かれるのは迷惑だとばっさり切り捨てていた。


 しかしカインさんが翔だったとはものすごい驚きだ。今までよくボロを出さなかったものだとつくづく感心していた。


「ところでハル。それともソフィア様って呼んだらいいのか?まぁ今はハルでいいか。お前相当あの女に恨まれて狙われているぞ。気をつけろ。この家の兵士にだってあの女の手下がいる。しかしお前の旦那は…。自分の部下にやばい奴が紛れてるのに気がついているんだろうか。それともわざと泳がせているんだろうか…。それとフローラ様だよ。あの食堂からここに来るまで尾行してきた奴がいたぞ。彼女も誰かに狙われている。当然まいたけどな。ロレイン様に報告に行った仲間から聞いた話ではひどく心配していて俺が彼女の警護に即つく事になったよ」


 何故マリアが私を狙うのか全く見当がつかなかった。

 私が恨むならまだしも何故そんな事になっているのか彼女の思考が全く理解できないでいた。

 この家にもマリアの手下がいるというのは驚きだ。もしかしてあの事件の時、護衛が動かなかったのは私を狙うためだったのかもしれない。身の安全を守るにはこれからどうしたらいいのだろう。私が不安そうにしている事に気が付いた翔は真剣な顔で言葉を続ける。


「ハル、大丈夫だ。心配するな。ロレイン様にも相談してみよう。しかしお前…いつかの雨の日に離宮で子供達に紙飛行機をつくった事があっただろう。あの時は思わず笑いそうになったよ。紙飛行機を堂々と鳥っていうんだから。絶対無理があるぞ。それに気合入れすぎて思わず派手に作ってしまった紙飛行機を誤魔化しきれなくてもう空飛ぶ乗り物だって言って堂々と開き直った時は可笑しくて耐えられなかったわ。でもあの派手に改良した紙飛行機、小さい頃俺が作り方を考えたやつだからな?」


「いや、違うわよ。あれは私が考えた紙飛行機よ!」


 そうやってたわいもない会話でお互い言いたい事を言い合って笑っていた頃を思い出して懐かしい気分になる。


「あの…。」


 ドアを開けて入ってきたルルドが目を丸くして私達の様子を見ていた。


「ドアはノックしたんですが返事がなかったので開けてしまいました。話を聞くつもりはなかったのですがかみひこうき?のくだりから聞こえていました。あなた達の関係って…」


「あぁ聞かれてしまったのか。じゃぁ仕方ないな。俺たちは元夫婦だ」


 呆気らかんと翔がなんの躊躇いもなくそう言い放つ。


「は!?」


 ルルドがさらに驚いた顔をする。


「ルルドさんこの人は昔から少し言葉がたりないんですよ…。兵士の時はしっかり仕事をしていますが…」


 私は呆れながら翔を見ると彼の説明に付け足すようにルルドに説明する。


「驚くかもしれませんが私達にはこの世界とは別の世界で生きていた記憶があるんです。その世界で私達は夫婦でした。フローラが倒れる前に言っていた言葉もその世界に関わる事だと私は思っています。私達同様に別の生の記憶があるのかもしれません。」


 ルルドが信じられないという表情をしながら、更に質問をするため言葉を発しようとしたその時後ろから声がした。


「あら。随分興味深い話を沢山しているじゃない。その話私も詳しく聞きたいわ」


 声がする方に目をやるとロディさんに連れられてロレインが開け放たれた部屋の入口に立っていた。


「ソフィア様、私もその…元夫婦という話を特にお聞きしたいですね」


 ロディさんは何だかとても元気がないように見えた。


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