閑話2
「オズワルド様、例の探されていた赤い髪の女性、フローラ様を今日街で見つけました」
「そうか。やっと見つかったのか。すぐに連れ戻せ」
「申し訳ありません。行方を見失いました」
「なんだと!?どういう事だ。状況を説明しろ」
「はい。彼女は男性と二人の幼い子供達と一緒にこの王都にいました。男性と二人の子供を伴い町の食堂に入り店内で一人の男性と騒動を起こした後店の裏口から荷馬車で出ていったようです。追跡を試みましたが極めて優秀な護衛が数人付いていて尾行をまかれてしまいました」
「一緒にいた男性とはどんな男だ!子供だと!?」
「黒いローブを着た銀髪のとても綺麗な顔をした男性でした。子供は男女で4歳くらい。共にその男性同様の銀髪で男児の方はフローラ様に面影が似ていました。その男性との子供かと思われます」
「くっ…。そんな男と一緒にいて子供までいるとは…!他に情報はあるか?」
「はい、店での騒動をみていた人間の話ではどうやらその女性は記憶喪失らしいのです。彼女の本来の夫がずっと彼女を探していて今の彼女の夫で銀髪の黒いローブの男が噂を聞きつけてあの店に彼女を連れてきて一発触発の事態になったそうです」
「なんだと!?記憶喪失だと?あいつは…結婚したのか?なんということだ…。俺は何故あんな女に身も心も捧げてしまったんだろう…その間にフローラがどうなっているのかも知らないで…」
「構わない。再び発見したら隙を見つけてあいつを連れ去ってこい!俺はあいつがいないとやっぱりだめなんだ」
「あらあんな女って私の事だったかしら?オズワルド。今日はどうしたの?珍しいじゃないここにいるなんて」
「マリア…!どこまで話を聞いていた?」
「ふふ…全部よ」
「相変わらず悪趣味だな」
「そう?そんな悪趣味な女を熱に浮かされたように何度も抱いて愛をささやいていたのはどなただったかしら?」
「そんな事…」
「あら今からまた思い出してみる?」
「やめろ!汚らわしい…!」
「ところであなた。フローラを取り戻したいんでしょ?私と取引しない?」
「取引とはなんだ」
「私、ソフィアにとっても会いたいのよ。あの幸せそうな顔を踏みにじってやりたいほどに。フローラは今ソフィアと一緒にドリュバード家にいるわ」
「なぜそんな事が分かるんだ」
「私には優秀な手駒がたくさんいるのよ。まぁアランは随分前に魅了が解けて使い物にならなくなったけど…。あのドリュバード家の兵士の中にだって手駒はいるのよ。フローラだってその気になれば連れ出せる。彼らを貸すから私の前にソフィアを連れてきてよ。そのついでにフローラも奪ってきたらいいのだわ。そうしたらこの薬もあげる」
「なんだ。その薬は」
「ふふ…。今までの記憶を綺麗に消し去ってくれる薬よ。フローラを取り戻したらこの薬を彼女に飲ませるといいわ。そうして記憶を失って怯えている彼女に優しく取り入れば貴方に好意を抱いて好きになってくれるかもしれないわね」
「…マリア…まさかその薬を前にも彼女に使ったのか!?あの時のあの状況の彼女の様子はどう見ても普通じゃなかった」
「さあ?どうかしら?どう?この話に乗る?」
「……。彼女が手に入るなら…仕方ない…」