表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/94

ふと人気のない木の下に黒いフードを被った人物が目に入った。


風で揺れたフードの中から一瞬顔が見えた。攻略対象の一人魔導士のルルドだった。

魔導士と言ってもこの世界の魔法は主に光の治療魔法がほとんどだ。

元々魔力持ちは希少なので唯一存在する光魔法でも使える人は数が少ない。


自然魔法のように火の玉を発生させたり瞬時に対象物を凍らせたり、そんな派手な魔法はこの世界にはない。

例えば水魔法で洗濯やお風呂など瞬時に済んだらどんなに便利だろうと少し残念に思う。


ルルドは銀髪のサラサラした髪で美しく整った顔をした美少年だ。彼はマリアと同じ孤児院出身で幼馴染だった。

やはり魔力持ちとしてマリアと同時に学園に編入してきた。物静かで心優しい性格の彼はとても腕の良い治療師だった。在学中も多くの人々の命を救ってきた。

そして今、幼い頃からマリアに恋心を抱いていた彼はマリアの結婚を受け入れられず人里離れた山奥に引きこもってしまったと噂にきいた。


妹が前にプレイしていた他の乙女ゲームではヒロインが誰か一人のルートに入ると他の攻略対象者とのイベントは少なくなる。

そしてヒロインがその攻略対象者と結ばれるとみな心から祝福をしてくれる。

ハッピーエンドのイベントで他の攻略キャラクターはヒロインにドロドロした感情は持っていなかった


無事にハッピーエンドを迎えたはずなのにこの世界の攻略対象者の今の状態は異常だった。

私の弟のロイドはマリアの婚約が決まった頃から引きこもってしまったしオズワルドは跡目を放棄し一生独身宣言をした。

どの攻略対象者も今だヒロインに執着とも思える激しい想いを抱えている。

どうしてだろうとしばらく考える。


裏ルート・・?そうだ裏ルートだ。

王道シナリオの乙女ゲームが何故そこまで人気があったのか不思議だった。

実はこのゲームの本質は他にあったのだ。

一部のファンが偶然発見して裏ルートが存在する事が話題になったのだ。

この裏ルートに入る手段を見つける事こそがこのゲームの醍醐味なのだと妹が熱く語っていたのを思い出した。

ネット上ではファン同士頻繁に情報交換が行われていたが裏ルートに入る方法はその時その時で違っていてまるで難易度の高いパズルを完成させるようなものだった。


裏ルートに入ると攻略対象者全員の好感度がマックスのまま、アルフォンスとの結婚式で城のバルコニーから大勢の民衆の喝采をうけるイベントスチルになる。

好感度がマックスという事は今のこの異常な状態も納得がいく。


ちなみに平民だったマリアがなぜ王太子と結婚して王太子妃になれたかというと裏ルートの攻略法によりヒロインが聖女として覚醒するからなのだ。

この世界の聖女は世界を様々な危機から守る役割があるとされており、女神のような扱いで王族同様に強い権力をもつとされるのだ。それゆえ王族同様の力を手に入れたヒロインは王太子と結ばれ王太子妃になれるのだ。



そしてこの裏攻略は単にこの特別なイベントスチルが見られるという事ではない。裏攻略をすることによりこのイベントからさらに裏ルートでゲームが続くらしいのだ。


裏ルートがどういうものなのかを妹に聞く前に結婚して家を出てしまったためその後のゲームの内容はしらないままだった。


しかしどうしてゲームの設定と少し違うのだろう。私はアランの婚約者だったし、ロレインは悪役令嬢にならなかったが代わりにフローラが断罪されてしまった。この先裏ルートはどうなるのだろう。

私とアランの関係はこれからどうなっていくのだろう。次第に不安な気持ちが押し寄せる。


私の気持ちとは裏腹に幸せな空気に包まれたまま王太子と妃の挙式は滞りなく終わった。

そしてその一か月後複雑な心境のまま私はアランと挙式の日を迎える。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ