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 子供達は日に日に少しずつ語彙も増えていき二語文から三語文になりやがて会話のやり取りができるようになってきた。そうして最初は舌足らずで聞き取れない発音の方もだんだんしっかり聞き取れるくらいはっきり話せるようになった。

 自由に話せるようになってから何で?どうして?など、とにかく質問が多くなってきて最近私を困らせる。


「ねぇ母様どうして鳥は空を飛べるの?僕も空を飛んでみたい!僕はどうして鳥になれないの?」


 好奇心旺盛なユリウスは特に質問が多い。しかも一回の会話で何個もどう答えたらいいのか困る質問ばかりなのだ。

 子供にも分かるようにかみ砕いて説明するのは慣れるまで意外と難しい。納得しないと延々に同じ質問をぶつけてくるのだ。


「ねぇ母様」


 ちょうど私がお茶を飲んでいる時珍しくアルヴィスが質問をしてきた。


「アル、なあに?」


「僕と似た顔をした人をよく見るんだけどあのおじさんは誰?」


 ちょうど私がお茶を口に含んだ時だったので危うく吹きそうになった。


「あー、あのおじさんね。そのうち分かるわよ。そんなによく見かけるの?」


「うん、毎日見かけるよ」


 毎日見かけるの!?驚愕の事実に私は驚く。私がアランを見かけるのはせいぜい一週間に一回程度だ。

 私が気が付かないくらいこっそり子供達を見に来ているとは…。アランおそるべし…。

 それにしてもまだ21歳なのにおじさんと呼ばれるなんて…。まぁ子供からみたらおじさんなのかと思いそこは訂正しなかった。


「それより、ねぇこのお菓子美味しいよ?」


「えー!食べたい!」


 私はアルヴィスから見事にその質問を忘れさせる事に成功した。


 その頃アルフォンスの側妃として王宮に嫁いだロレインから手紙が届いた。


 手紙の内容は個人的にお茶会を開くので子供達も同席で来てほしいとの事だった。

 成長した子供達に会わせてほしい旨と、なにやら私に依頼したい仕事があるようだった。内容は会った時に話すという内容で手紙は終わっていた。


 頼みたい仕事とはなんだろう。何か依頼されるほど私は特別な能力は持ち合わせていない。まったく見当もつかないままロレインとのお茶会の日を迎えたのだった。


 王宮への訪問はロレインが側妃として嫁いでから初めてのことだった。

 最後に会ったのは王太子とヒロイン、マリアの結婚式の時以来だ。


 側妃として嫁いでから彼女は多忙を極めていた。

 本来王太子妃としての執務をマリアが放棄していたのでその仕事の肩代わりと王太子のアルフォンスもマリアと過ごす時間が多くなり仕事が滞り溜まっていたがその分もロレインがこなしていた。


 そんな忙しい毎日だったので面会する時間もなく手紙でのみ交流をしていた。


 しかし手紙でお互いたわいもない近況の報告など、頻繁にやり取りはしていたので久しぶりにあった感じはあまりしなかった。


「ソフィア!久しぶりね!無事に出産したのね!双子を妊娠したと聞いていたから心配していたわ。本当に良かった!」


 そういうと私に抱き着いてきてお互い再会を喜び合った。


 ひとしきり抱きしめ合った後今度は私の横に控えていた双子を見てから、ロレインはしゃがみ込んで子供達と同じ目線で双子に話しかけた。

 

「この子達がその双子ね!二人ともこんにちは」


ロレインが満面の笑みで双子に笑いかけると二人ともどぎまぎしていた。


「こ…こんにちは!」


 アルヴィスが顔を真っ赤にしながらなんとか挨拶を返していた。


「お姉さん、すごく綺麗だね」


 ユリウスはごく普通にそういった。


「あら、ありがとう」


 ロレインはユリウスに優しく微笑む。


「なんてかわいい子達なのかしら!あなたは弟によく似ているわね。でもとても可愛らしいわ」

 そういって嬉しそうに長男を見る。

 

「あら!あなたはあなたのお母様にそっくりね。ソフィアはとても美人だからあなたもとても可愛らしい顔をしているわね。二人とも将来がとても楽しみね」


 ロレインは柔らかく微笑みアルヴィスとユリウスの頭を優しくなでる。


「うん、僕、母様大好きだから似ていてとてもうれしいの」


 ユリウスが満面の笑顔でそう言う。


「いいなぁユーリは…。僕の顔は母様を悲しくさせる。僕と似てるあの人を見る母様はいつも悲しい顔をしているから。あの人に似ている僕はきっと母様を悲しくさせている」


 アルヴィスの突然の言葉に驚きを隠せないでいた。


 ロレインはなんともいたたまれない顔をした。


 アルヴィスをアランと重ねてみたことは一度もない。アランの事も割り切ってから悲しい顔を見せた事はないと思っていた。


 もしかしたら幼いなりにアランと私の関係をよく見ているのかもしれない。

「私はアルのお顔大好きよ。どんな時も私を幸せな気分にしてくれるわ。ちっとも悲しくなんてならないわよ」

 そういうとアルヴィスは驚いた顔をした後嬉しそうに私に抱き着いてきた。私もアルヴィスを抱きしめると彼は幸せそうに笑った。

 そうして和やかに時間は過ぎて行った。

 

「ところでロレイン。私に依頼したい仕事ってどういう内容なの?」


「その件なんだけど今から説明するわ。少し待っててもらっていいかしら」


 そういうとロレインは部屋から出て行った。


 数分後部屋に戻ってきたロレインは双子と同じ年くらいの男の子の手を引いて部屋に戻ってきた。



 その子を初めて目にした感想はなんて綺麗な子だろうということ。ロレインにも似ている。

 よく見ると王族特有の金髪ではあるが限りなく白に近い綺麗な髪をしている。


「ロレインその子は……」


 私は驚きを隠せないでいた。


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