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相変わらず毎日が慌しく過ぎていく。双子も歩き出してからますます活発に動くようになり目が離せなくなってきた。
一瞬でも目を離すと好奇心旺盛な彼らは危ない事をしようとするのだからいつもハラハラする。
そんな彼らも日に日に性格の違いがはっきりしてきた。兄のアルヴィスは慎重で真面目だが素直で優しい性格だった。弟のユリウスはおっとりしているが好奇心旺盛で要領がいい性格だ。将来世渡り上手になるのではないかと思っている。
ともあれ元気に成長していってくれている事を嬉しく思う。
ある日、好奇心旺盛なユリウスに高い所から遠くの風景を見てみたいと言われた。最初は普通に抱っこをしてみたがその高さに納得しない彼は肩に乗りたいと言い出した。その要望になんとか応えようと肩車をやってみたが中々上手くできなくて苦労していた。そのうち近くを通ったロディさんが見かねて代わりに肩車をするとユリウスは目をキラキラさせてその高さから見える風景を堪能していた。
その姿をみたアルヴィスもロディさんに肩車をせがみだし交代で肩車をされては二人はとても楽しそうだった。
そのうちロディさんを見つけると肩車をねだる様になったのには困った。
しかし彼はいつも彼らの要望にやさしく答えて遊んでくれるのでいつか何かお礼をしようと思っている。
私はこの頃また、フローラの行方の手がかりを探すべくしっかり男装してこっそり街に降りては行方をさがしてた。その時はベルカに事情を話して子供達の世話を頼んだが相変わらず護衛もつけないでひとりで街に行くことを心配した。
私が貴族だとバレれば街の人達の間だけに流れている情報を聞くことが出来ないと思いそうしていた。その情報の中にフローラの行方の手がかりがあるかもしれないと思っている
街に降りると特に遠方から人がよく集まる食堂や酒場に行った。他の街にフローラがいる可能性もあるのだ。もう何度も足を運んでいるのでそこでたくさん知り合いもできた。
私は食堂に入ると店の主人にオーダーをした後いつもの質問をした。
主人には遠方からの旅人を見かけたらそれとなく緋色の髪の女性を見た事があるか聞いてもらっていた。
「マスター、久しぶりだね。かわりないかい?ところで例の緋色の髪の女性の情報は何か入った?」
フローラは珍しい緋色の髪に少し癖があるウェーブのかかった髪をしていた。
大きな目にスッと通った鼻筋の美人だ。
店のマスターに尋ねてみる。
「おぉ!ひさしぶりだな!お前今までどこで何をしていたんだよ。随分心配したんだぞ!その女性の情報は今までなかったよ。すまないねぇ 今回もなにも情報がないんだよ」
想定内の返答だったがやはり手がかりがみつからない事に落胆する。
「そう気を落とすなよ。きっとお前の恋人もどこかで無事でいるよ」
私はフローラを一度も恋人と説明していないが何故がマスターの中では溺愛している恋人設定になっているようだ。何度も違うと説明しているがもう諦めた。
食堂をでて酒場に行っても同じ結果だった。そこで今日は娼館にも足を延ばす事にした。客引きに好みを聞かれたのですかさず緋色の髪の女性を指名したがやはりそんな髪の色の女性はどこにもいなかった。
しかしその客引きに強引に他の娼婦をあてがわれ仕方なくその娼婦がやってくるまで部屋で待っていた。
ほどなくしてやってきた女性は部屋には入るなり軽く挨拶をするとテキパキと自身の服を脱ぎだしたので私は焦ってとめた。
「いや…あの!服は脱がなくてもいいですから」
彼女は少し驚いた顔をしていたがなにか察したのか違う質問がきた。
「ではこのまま行いますか?」
最初彼女が何の事をいっているのがよく分からなかったがここは娼館で男女があれこれする場所だという事を思い出して私は真っ赤になっていた。
「…いや…その…そういうことはしなくて大丈夫です…」
私はなんとか平然を装いながら彼女にやさしく笑った
「ではあなたはどんな目的でここに来たのですか?」
彼女は怪訝そうに問いかけてくる。
「その…少しあなたと話がしたくて」
そういうと彼女は最初、きょとんとしていたがしばらくして決められた時間までたわいもない会話を始めた。
彼女の両親は畑を持ち野菜を作って生計を立てていたが数か月前その父親が病に倒れてから高い治療費と生活費を稼ぐべくこの仕事を始めたようだった。
緋色の女性の事を話すとやはり知らないとの返答だった。
「お兄さんの恋人?無事だといいわね」
「いや、恋人ではないよ。古い親友だよ」
「そうなの?じゃぁお金が貯まって父の病気が良くなったら私をお嫁さんにして!お兄さんかっこいいもの!絶対よ!」
いや…私子持ちですよ。、旦那は……死にましたが…。
「君ならかわいいから僕なんかよりいい相手に出会えるよ」
私女性なのであなたをお嫁さんに出来ません。なんて言えなくて何とか取り繕ってその場を後にしたのだった。