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その後順調に成長して目が開くと目の色もアランと同じだと気が付いた。
日が経つにつれ長男はだんだんアランに似てくるようになって次男は私に似てきてしまった。どうやら二卵性の双子だったようだ。
それでも二人ともとても可愛らしく整った容姿をしており親の贔屓目にも美男子に成長するのではないかと思う。
いないいないばぁをすると、とても気に入ったようでキャッキャと声を出して笑ってくれた。
どうやら喜ぶポイントは前世の世界の子供と同じようだ。
新生児のお世話は大変だ。昼夜問わず2時間置きにミルクを与えそれが二人なのだから夜はほどんど寝られない。しかし自ら育児をする選択をしたので泣き言は言わない。
毎日記憶がないほど慌しく過ぎていく。
そんな生活でも家事などの洗濯や食事作りはメイドさんや料理人がおこなってくれるのでとてもありがたい。
前世のように家事と育児を並行して行うのは大変だったが完全に育児に専念できる今の生活は毎日寝不足ではあるがずっと楽に育児が出来ていた。本当にありがたい事だ。
家事を並行して行う生活はとても大変で例えば掃除をしている最中に子供が愚図るとあやしに行く。泣くとおむつ交換やミルクを与える。掃除が途中なのにおむつの処理やミルクの瓶を洗ったりしているとまた泣くので今度はその作業を止める。
そうやって中途半端ないくつものやりきれない事が溜まっていくとかなりストレスになっていく。
その上毎日の睡眠不足と自分の事にまったく時間がさけない事から次第に育児ストレスが溜まっていくのだ。
世の旦那さんがこの時期奥さんに部屋が汚い、家事をサボるななど文句をいうと夫婦仲に亀裂が入りかねない事態になるので要注意だ。
日々は流れ寝返りが出来るようになりハイハイが出来るようになった。
やがて双子も歩き出したので晴れた日は庭でおもいっきり遊ばせるようにした。
子供と一緒に遊ぶ時は恥ずかしがってはいけない。しかし、ある日某長寿子供向け番組でお兄さんが番組の最後に軽快に踊って歌うダンスを全力でやった事があった。
ミーアキャットがフラミンゴになってアルパカがオカピーになるあの歌。
前世で毎日子供と見ていたので完全に覚えていた。二人の子供の前でやってみると懸命に私の真似をして 小さな手足を一生懸命動かしながら踊ろうとしていた。なんてかわいいんだろう。
そうして恥ずかしさを振り切って全力で歌って踊り終わると気が付かないうちに部屋に入ってきたロディさんが目を丸くしてこちらを見ていた。
「ソフィア様 ブ…ンバ……? って何ですか?」
「えーとー。なっ…なんでしょうかねー?」
恥ずかしさのあまり変なイントネーションになる。
あぁ…。 なんということだろう。じんわりと恥ずかしさがこみ上げてくる。
そういえばこの世界の動物はどんな生き物がいるのだろう。百科事典を子供と一緒に見てみると変わった動物が沢山載っていてかなり興味深かった。
毎日一緒に沢山動いて遊んで笑って二人の成長を垣間見れる日々をとても幸せに感じていた。
そんな幸せな生活の中、この世界のゲームの内容を少し思い出した。
マリアがなった聖女というものについて。
この世界に何故光魔法しかないかというとここから先はもう流石ファンタジーの世界だ。
この世界の創生者が光の癒しの神である事からその神の加護の上で光魔法が使えるのだ。
そして裏ルートに入る条件を全て揃えたマリアはその光の神のいとし子になり聖女になったのだ。
神のいとし子はこの世界にいる光の妖精達にとても愛されているのでマリアに害をなせば妖精達がたちまち怒り治療魔法が使えなくなるのだ。
そんな妖精達はあちこちに存在しているので少しでもマリアを害する事を行ったり言ったりすると妖精達が容赦なく鉄槌をくだすのだ。
だからマリアは王族をも凌ぐ力をもっていて、神のいとし子である彼女に誰も何も言えないのだ。
考えるとかなり恐ろしい存在だ。マリアの気持ち一つに世界中の人々の命がかかっているのだから。
だから国もマリアを蔑ろにできなかった。侯爵で騎士の重要貴族を下げてでもマリアを監視出来る距離に置いておきたかったのだ。