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第三話

 エミィに手伝ってもらいながら、パパは晩御飯を作った。そしてテーブルに料理を食卓に並べる。

「エミィちゃん。ママを呼んできてー」

 エミィは、ママを呼びに行く。そして、ママと一緒に戻って来る。

 一家団欒、晩御飯を楽しむ。

 食事が済むとママは書斎に戻っていく。

「ごちそうさま~」

 エミィは食事が済むと食器を流しに持っていく。

 お茶を飲んでいたパパも、食器を流しに持っていくと、残ったおかずを冷蔵庫へしまう。

「片付けが済んだら、宿題やろうか」

 パパが言うと、エミィは頷く。


 エミィとパパは居間にやってくるとソファーに隣り合う様に座る。するとパパはノートパソコンを開くと電源を入れる。

「さて、テーマを聞いてエミィちゃんはどう思ったかな」

「国の借金が1087兆円も、いっぱいあって大変だと思う。しかも国民一人あたりに859万円も。エミィは返せないよ」

「エミィちゃんは返す必要ないから心配しなくていいよ」

 パパは苦笑しながら言った。

「では、まず、国の借金と言っているけど、誰が誰に対してお金を借りていると思う?」

 パパがエミィに尋ねた。

 エミィは少し考えこむ。

「国が、外国に借りている……のかなぁ」

「まあ、記事の内容を読まないで、見出しだけ読むと、そう思うよね」

 エミィは頷く。

「国家が、正確に言うと、政府や企業、個人が外国から借りているお金の総額のことを対外負債と言うんだよ。それとは逆に、政府や企業、個人が外国へ貸しているお金の総額のことを対外資産と言うんだ」

「じゃあ、その対外負債が1087兆円もあるってことなんだ」

「それは、ちょっと早合点かな。ちなみに……」


対外負債>対外資産の時、対外負債-対外資産=対外純債務


対外負債<対外資産の時、対外資産-対外負債=対外純資産


「と言うんだ」

「そっか、それじゃあ、対外純債務が1087兆円もあるってことなの?」

「それじゃあ、答え合わせと行こうか」

 パパはパソコンを操作する。

 そして財務省のページを表示する。


https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2016_g.htm


平成28年末残高 対外資産 997兆7710億円 対外負債 648兆6580億円 

         対外純資産 349兆1120億円


「対外純債務どころか、対外純資産があるよ!」

 財務省のページを見てエミィは驚く。

「それどころか、この金額は世界で一番多いんだ。つまり日本は世界で一番のお金持ち国家ということになるね」

「それじゃあ。このテーマは間違いってことなの?」

「答えを焦らないの。中身もちゃんと読もうよ。最初に『 記事の内容を読まないで、見出しだけ読むと、そう思うよね』って言ったことを覚えているかい?」

 エミィは頷く。

「まあ、結論から言うと、テーマというか、元の新聞の見出しに問題があるのは事実だけどね」

「どんな問題があるの」

「それはもう少し考えてからね」

 エミィは頷く。

「じゃあ、国って意味はわかるかい?」

「うーん。日本とか、アメリカとか、のこと」

「普通の小学生にとっては合格。でも、この場では、これではダメなんだ」

「ずるーい。エミィは小学生なのに」

「だから、このテーマは小学生向けには不適切だと言ったんだよね」

 パパは簡単に調べる。


国とは、

① 政府、国民、土地を含む国家のこと

② 政府

③ 地域

④ 出身地

など


「いろんな意味があるんだよ」

「へぇ。知らなかった」

「ここで気づくと思うけど、①と②が非常に紛らわしいことなんだよ」

「ずるーい」

「で、本文を読むと『国債や』ってなっているから、①ではなく、②だとわかるんだよ」

「国債だと政府だとわかるの?」

「国債は、政府が発行していて国家が発行しているわけじゃないからね。だって、国民は国債の発行に関わっていないでしょ。それに土地は生き物じゃないから関係ない。発行しているのは、政府ってことさ」

「そっかー」

「そう考えると、国民一人あたり859万円というのが変だとわかるよね」

 エミィは不思議そうな顔をする。

「国民は国家には所属しているけど、政府には所属していないんだよ。政府に所属している国民はごく一部の国家公務員だけで、一般の国民は含まれていない」

「うん。そうだね」

「つまりこの新聞の見出しは日本語として間違っていることになるよね」

 エミィは少し考えこむ。

「例えば、エミィちゃんが、お友達の瑠璃ちゃんにお金を貸していたらとするよ」

 エミィは頷く。

「瑠璃ちゃんは、エミィちゃんの家族一人当たり、800円の借金をしていると言ったらどう思う?」

「エミィが瑠璃ちゃんにお金を借りているの?」

「いや、逆だよ」

「それは変だよ。逆に思っちゃうもん」

 エミィはほっぺたを膨らませる。

「この新聞の見出しは、お金を借りているのは政府なのに国民が借りているような勘違いをさせるように書かれているデタラメな記事ってことになる」

「ひどーい」

「記事の内容にまで、総務省の人口推計で借金の総額を割っているんだけど、どうしても一人当たり換算をしたければ、国家公務員一人当たりで換算しないと不適切だね」

「どうして新聞が嘘を書くの?」

「新聞を書くのも人間だから、間違ったことを書くこともあるんだよ」

「そっか」

「だから、不特定多数の人間に情報を発信するときは、ミスがないかちゃんと、注意しないとダメってことだね。エミィちゃんも気をつけようね」

「うん」

「エミィちゃんはいい子だー」

 パパはエミィの頭を撫でる。エミィは喜ぶ。

「やったー。宿題終わった」

「いや。まだ終わりじゃないよ」

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