表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/100

大魔導vs異界の怪物たち……を横目に

 始まってはならない決戦が始まってしまった!

 具体的には、大魔導が邪神に飛びかかり、目や両手から光線を放っている。

 人間とは思えない姿だ。


『ぬはははは、来たな大魔導!! わしの肉体が貴様には世話になったようだな! その経験からして、貴様の相手をしていたらかなり大変なことになる! ということでわしは貴様と戦わない!』


 邪神がそう宣言した。

 その見た目は、カエルに似た大きな頭と口をして、金色に輝く目をギョロつかせている。

 何本も角が生えていて、それは背中まで続いていた。

 腕は四本あって、全部ぬめぬめとした粘液に覆われている。

 翼は王都を覆うかと思われるくらい大きい。


「なにっ、そうなのか」


 空中で立ち止まって律儀に答えるウェスカー。


「ウェスカーさんが邪神の言うことに興味を持ったよ! 今がチャンスだよー!!」


 メリッサが叫ぶ。

 全くその通りだ。

 何やら、邪神の言葉を、ふんふんうんうんと熱心に聞いているウェスカー。

 とても最終決戦の戦闘中とは思えない。

 大人物なのか、頭がおかしいのか。

 多分後者だ。


『わしは貴様専用に、異世界の扉を開けて怪物たちを呼び出してやろう! オルゴンゾーラめの正体が外宇宙の怪物であったと知れた今、それらを呼び出すことなど造作もない! あ、でもオルゴンゾーラクラスはわしが逆にやられちゃうから呼ばないよ』


 全部話してくれる。律儀だ。


「メリッサ、あいつはあんなことを言ってるけど、止めなくていいのか!?」


「止めたらウェスカーさんが戦っちゃうでしょ……! あと、多分この大騒ぎ、キーン村の方にも伝わってると思うし……」


 ちらっとメリッサが視線を向けると、ウェスカーの後ろから、ソファゴーレムに乗って金髪の男性がやって来るところだった。

 神懸かりだという、クリストファだろう。

 これってまさか、勇者パーティが再集合する?


「レヴィアさんも来るってことか」


「絶対来る。あそこの子供二人とも飛べるから、二人に吊るしてもらって来る」


 光景が想像できてしまった。

 その連中に好き勝手させても大丈夫なサンドバッグとして、邪神に異世界の怪物を呼ばせるってことか。

 恐ろしい。 

 一番やばいのは身内じゃないか。


『いでよ、異界の扉!! 現われよ、異世界の怪物たちよ!!』


 邪神が叫び、巨大な四本の腕をぐるぐるとさせた。

 すると、その周りの空間が歪む。

 突然、そこに大きな穴が空いた。

 穴の中は汚い虹色に輝いていて、おかしな光が降り注いでくる。

 やがて、そこから大きな影が何体も姿を現した。

 ドラゴンみたいに見えるが、昆虫の足を生やしていたり、翼の生えた巨大な鮫みたいなのとか、めちゃくちゃな姿の怪物たちだ。


『大魔導よ! これが貴様らの相手だ! ちなみにこいつら、わしの言うことも全く聞かないからあとは任せた……!』


「ひでえ! バラドンナのやつ、自分で呼び出しておいてぶん投げやがった!」


「だからこそ、これは彼の奥の手だったのかもしれないですね……!」


 アリナの冷静な分析が光る。

 なるほど、邪神としてもできれば使いたくなかった手か。

 そして邪神の思惑通り、ウェスカーは異世界の怪物たちとの戦いに集中し始める。

 クリストファも到着したようだ。


「クリスくん。これから続々とみんなが到着すると思うから、あっちの怪物退治は加速していくよ。向こうが終わる前に、私たちが邪神を倒さなくちゃ……」


 メリッサが真剣な目をしている。


「王都がなくなっちゃう……!!」


「くっ、勇者パーティを好きにさせるわけにはいかないんだな!」


 俺は納得した。

 レオンが、解せぬ、という顔をしているが。


「ってことで、みんな行くぞ! 三重複合召喚!!」


 俺が叫ぶと、ペス、トリー、ポヨンが光に変わった。

 光は弾丸の形になり、トリニティへと吸い込まれていく。


「いでよ、ドラゴン!!」


 トリニティの引き金を引く。

 三つの銃口から溢れ出した輝きは、空に撃ち上がり、一つになった。

 それは、深い赤色の鱗を持つ巨大なモンスターになる。

 かつてジョージと一体化した邪神を倒した、最強の召喚獣ドラゴン。


「また頼むぞ!」


『グオオーン!!』


 ドラゴンは俺に応えると、その背中をこちらに向ける。

 俺は跳躍し、ドラゴンの背に飛び乗った。


「メリッサ!」


 手をのばす。

 その手を、彼女が握り返した。


「うん、行こう、クリスくん!」


 メリッサが俺の後ろに乗り込む。


「邪神は任せましたよ、クリスくん。僕はここで、邪神の眷属を迎え撃ちます!」


 レオンは剣を構え、地面へと突き立てた。


「いでよ、我が眷属!」


 レオンの周囲から紫色のモヤが溢れ出し、アンデッドの戦士たちが姿を表す。

 対するのは、バラドンナに従っていた信者たちの成れの果てだ。

 みんな、異形のモンスターになってしまっている。


「行くぞ!!」


 レオンの戦いが始まった。

 アリナとおじさんは、後ろで邪魔にならない感じで見守っている。


『グオーンッ!』


 ドラゴンが咆哮した。

 翼が羽ばたくと、巨体が宙に浮く。


『来るか、召喚士よ!! 今まで貴様にはさんざん煮え湯を飲まされてきた! だが、その因縁もここで終わりだ!』


 邪神が俺に向かって吠える。

 その姿に、ジョージとブラスがダブって感じた。

 そうか、あいつは、俺と因縁がある奴の体を次々に乗っ取ったんだな。

 もしかして、乗っ取った肉体の持ち主の記憶を受け継いでいるのかも知れない。


『わしは貴様を下し、世界をわしの法則で満たしてやるのだ! 勇者たちなど、異世界の怪物をあてがっておけば良い! 理性的な判断ができて、わしの邪魔をしてくるお前が最も脅威なのだ!!』


「高く評価してもらってありがとうよ! 俺だって、ここでお前との因縁は断ち切るつもりだ! 行くぞバラドンナ!!」


 俺の叫びを受けて、ドラゴンが加速した。

 炎のブレスが放たれて、邪神の肉体を直撃する。


『ぬおわあー!!』


 邪神からも、空間を波のように揺らす衝撃波が放たれる。

 ドラゴンはこいつを真正面から受けとめ、全力で抗う。


 バブイルから続いた因縁も最後。

 いよいよ、俺と邪神の決着の時だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ