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邪神様、革命す

『無事に占拠できたな』


「地道に信者を増やした甲斐がありましたねえ」


 妙な一行を乗せて、魔導エレベーターが上がっていく。

 皆、みすぼらしい格好をして、手に手に魔銃を象った板を握りしめている。

 姿こそ貧しいものの、彼らの瞳は強い熱を持って、らんらんと輝いていた。


「バラドンナ様! 第四階層なんて、夢みたいだ」


「本当に俺たちが行ってもいいのかい!?」


『ああ、もちろんだとも! 人間は生まれながらにして平等なのだ。第一階層で生まれたお前たちにも、第四階層の豊かさを享受する資格は十分にある!』


 一人だけ、本物の魔銃を手にした長身の男。

 邪神バラドンナが、エレベーター狭しと乗り込んだ信者たちに向かって宣言した。


『全ては、お前たちも手にするはずだった豊かさだ。それを取り戻そうとすることは正義である! 正しい! お前たちは絶対に正しいぞ。神である儂が保証しよう!』


「おおおー!!」


 歓声とどよめきが上がった。

 信者たちは皆、バラドンナの言葉を心の底から信じ、彼が口にした自由を存分に行使しようとしていた。

 手にしているのは、バラドンナの聖印(シンボル)

 これによって、信者たちは皆が邪神の信徒となり、バラドンナから力を借りて、簡易的な世界魔法を行使できるようになるのだ。

 さらに、信者たちはここにいるだけではない。

 エレベーターの下には、さらに多くのバラドンナ教徒たちが待ち受けている。

 既に、第一階層はバラドンナの手に落ちていた。

 それが、とても静かで、穏やかな侵略だったため、誰も気づかなかったのだ。

 気がついたときには、冒険者の店と魔導エレベーター、外部の漁師町を除く階層の全域がバラドンナの掌中にあった。


『さあ、次々に登ってくるぞ。当然得られるべきだったものを得られなかった者たちだ。儂は、このバブイルという世界が大好きだ。何せ、(なら)しがいがある格差に満ち満ちておる! これをあるべき平均へと動かし、上に立っていたものを引きずり下ろし、下にいたものを引っ張り上げ、全ての特別を破壊する! されば、何もかも全てが同じ、等しいものに変わる!』


「さすがバラドンナ様! 考えることがでっかいですね!」


「私たちも全力でお供します!」


「最後には、重層大陸を平たくしちゃいましょう!」


『無論だとも! それが最後の仕上げだ! おっと。クロリネ家との約束も果たしてやらんとな。お前たち、第一の目標は青の戦士団だ! それから、ええと、ゴールディ家の小娘? メリッサ……? うむ、思い出すとこの体がぶるぶると震えるのう!!』


 わっはっは、とバラドンナが笑う。

 彼の足元には、死んだ魚のような目をした兵士がへたりこんでいた。

 魔導エレベーターを守っていた彼は、邪神によって、精神の全てを平均的に均されてしまったのである。

 彼の中には、なんの感情も存在しない。

 使命感も、反発感も、何もかもが平坦に変えられ、ものを考えることもできないでいる。

 兵士はボーッと、邪神教徒の一団を眺めていた。


 今正に千年の時を越え、邪神がバブイルに牙を剥こうとしていた。

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