あかいきみこいをした
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名前はコエダであげていますっ!
先月までは故郷であるここを離れ都会にある大学に通っていたが、授業の単位が思うように取れず留年を繰り返したのち俺は退学になった。
その大学を退学になってからは、都会で一人暮らしをしていたためそこで借りていた一室を返し、父の住む故郷へ戻ってきていた。いまではその故郷の田舎から仕事探しをしている。いわば無職の男である。
一番辛かったのは母は俺が赤ん坊の頃に行方不明になり、男手一つで育ててくれた父に「退学になった」と伝えることであった。そう俺が一言伝えると父は悲しそうな顔をして「そうか」と一言返した。
そんなとき、俺は恋をした。
一目惚れだった。
俺は一人、誰も利用しなくなって廃止されたバス停で佇む雨も降っていない中、真っ赤な傘をさして鮮やかな赤色のワンピースを着たなんとも不思議な女だった。
ひとつ俺は声をかけた。
「ここにバスは来ませんよ。」
彼女はその返事に
「ご親切にありがとうございます。」
と、返した。
しかし、彼女はそのバス停から離れることはなくただ佇み続けていた。
次の日。彼女はまた赤いワンピースを纏い真っ赤な傘をさしてそのバス停に佇んでいた。俺は今日は別の言葉をかけてみた。
「何かを待っているんですか?」
すると、
「明日を待っているんです。」
そう、小説に出てくるような綺麗な言葉を並べた。それに彼女の美しい声がその言葉をより一層彩った。
「なんで明日を待っているんですか」
質問責めになるかな?と少し躊躇したが妙に彼女が気になり再び問いかけてみる。
「明日の次は明後日。明後日の次は明々後日を待ちます。それをずっと繰り返してるんですよ。私は」
そう、言い終わると一瞬俺の方を見て笑いかける。その笑顔と声に俺は余計に彼女に惹かれてしまった。俺は彼女と会うために毎日、まだ通っているバス停を通り過ぎ、遠回りをして彼女のいる廃止されたバス停へと足を進めた。
「君はなぜ私に話しかけるんですか」
そう彼女に聞かれた日があった。俺は一瞬口ごもる。「一目惚れしたからです」なんて、恥ずかしくて言えるはずがない。
「いつもそこにいるからですよ。」
そう、言うと彼女は寂しそうな目をして遠くを見つめた。その日はその会話をしただけで彼女との時間は終わってしまった。
なぜ彼女がそのとき寂しい目をしたのかは、この時の僕には分からなかった。
雨の日も風の日も、雪の日も。彼女はいつものようにバス停の横に立っていた。そして俺は、その彼女にいつものように些細なことを話した。その時間は俺にとっての至福の時間であった。
そんなある日。
彼女がここからいなくなると言った。
なぜか?と聞いても彼女は何も言わなかった。ただ、「この地から離れるのだ」と俺に言った。
「せめて、1日だけ俺にください」
そう彼女に俺は懇願し続けた。彼女は渋々それにうなづいた。
待ち合わせはいつものバス停だった。彼女はいつものように真っ赤な傘をさして鮮やかな赤のワンピースを着ていた。
「待ちましたか?」
「いえ、それほど待ってないですよ」
彼女はいつものように美しい声で俺に言葉を返す。「どこか行きますか」と聞くが彼女は「いえ、ここがいいです」と答えた。
いくら時間が経っても彼女はそのバス停の前で立っていた。バス停用のために設置されたベンチに俺は座り、彼女にも座るように声をかけた。
だが、彼女は「もう少しだけだから」と座ろうとはしなかった。このとき彼女の喋った言葉に疑問をもったが気づかないふりをした。
『ぐぅ〜〜〜!!!』
大げさな音が俺のお腹から空気中に振動して響く。かなり大きな音だったので彼女の耳にも届いただろう。それを意識すると異様に恥ずかしくなって俺は耳や顔を赤らめた。
「お腹すきましたね。」
そう彼女がふわりと笑いながら俺をみた。多分その時俺の顔は、彼女に完璧に腹の虫の音を聞かれたのだとわかり恥ずかしさによって余計に顔が赤くなっていただろう。
「うっ...なっ!なにか、買ってくるから。ちょっとまってて!」
そう言って俺は近くの出店まで走った。幸い客は俺だけのようで順番が早くにまわってきた。
そして焼きそばを2つとペットボトルのお茶を2つ買って俺をまっているであろう彼女の元へと急いだ。
そう、あの真っ赤な傘をさした鮮やかな赤のワンピースを身にまとったあの美しい彼女の元へ...
焼きそばをかって、彼女のいるバス停の近くにどこかの業者のトラックが止まっているのが目に入った。
最初はただの一時駐車を行なっているトラックなのかと思っていた。しかし、近づくにつれてそのトラックの中にいた男の人が何かに大きな袋をかぶせていることに気がついた。
その場所は、いつも彼女が立っている場所だった。バス停をみ回しても彼女の姿が見渡らない。
急に不安がよぎった。まさか、あの業者の男があの大きな袋をかぶせているのは彼女ではないかと。
俺は反射的にかってきた焼きそばを投げ捨て彼女のいるであろう場所に駆け寄った。
「おいっ!そこでなにしてるんだっ!!!」
そう大きな声で男に問いかける。すると、その男はその声に反応して俺の方へと振り返る。しかし、彼は逃げようとはしない。
俺は彼のそばまで走り寄り、続けて質問をする。
「彼女をどうするんだっ!!!」
すると、業者の男は何のことなのかと首を傾げて言った。そして、「彼女とは誰のことなのですか」と、とぼけたような言葉が返ってきた。腹が煮え繰り返るような怒りが俺を襲う。しかし、俺はそれを我慢して彼らをせめる。
「ならば、その袋詰めになっている彼女は何なんだ!?」
先ほどよりも苛立ちのある強い声で彼に問う。
すると、業者の人達は袋を剥がし中にいるであろう彼女の姿を俺に見せた。
しかし、そこにいたのはあの赤い傘をさし赤いワンピースを見にまとった彼女ではなかった。
「ポスト?」
そこにいたのは彼女ではなく、彼女がいつも身につけていた衣類と同じ色をした真っ赤なポストだった。色ハゲも少なくまるで新品のように綺麗なポストだ。一瞬、俺は声を失った。
もともとこのバス停にはポストなんてなかったはずだ。なぜならばこのポストが立っている場所はいつも彼女が立っていた場所なのだから。
俺はどこに住んでいるのか、名前さえ知らない彼女に恋をした。それを今更ながら俺は理解し後悔した。
「君、大丈夫かい?」
そう問われるが俺は返事をせずに俯いたまま、目の前の真っ赤なポストに触れた。
やっぱり、俺は一人なのだ
大学でもうまくいかなくて、それが原因で父とも会話を交わす事も減った。
でも、俺は...彼女のおかげで救われた
本当は知っていたんだ。彼女が、俺とは違う存在なのだと。
「...このポストは、昔からある噂があるんだ。きみは知っているかい?。」
業者の一人が俺に向けて遠い瞳で語りかけた。俺は首を振る。まるで何かを思い出しているかのように男は話を続ける。
「このポストは、ある人達には違う姿に見えるんだ。その姿は赤い傘をさし鮮やかな真っ赤なワンピースを見にまとった女性だ。その声は地に響く柔らかな声だ。」
その男が言った彼女の特徴は俺が見た彼女、そのものだった。
「俺が見た彼女も、その人です。では彼女がこのポストで、このポストが彼女なんですか?」
そう問いかけると彼は「たぶんね」と呟いてうなづいた。そして少し寂しそうな顔をして彼はポストに触れた。そして俺に小さな声で教えてくれた。
「それで、このポストが彼女が見える条件は...」
『私にあいたいって思ってくれた人だけに見えるの。』
声がした先はポストの上だった。
『びっくりした?』
その声の持ち主は赤いワンピースを身にまとって傘をさしたあの女性だった。その体は赤いポストの上へと軽々しく座っている。
「あっ!なんで、いるのっ!」
彼女はポストなのであろう?
何故ポストと別に存在しているのか?
『君は一人じゃないよ。』
彼女は俺の問いかけに返答は答えずただ笑いかけながらそう言った。
「なんでそんなことが言えるの?俺のことを全部知ってるっていうの?」
俺は少し胸を締め付けられるような痛みを感じながら身をかがめたまま彼女に問い続ける。
すると小さくした体が何かに包まれたような感覚を感じた。なんだかそれは懐かしいような感じがして...
『大丈夫。あなたは私たちの子なんだから。』
ん?
私達の子?
それって.....!?
『ばいばい。父さんと仲良くね。』
「まって....まってくれっ!」
「「「母さんっっっ!!!」」」
気づくとそこに彼女の姿はなくなっていた。
あの業者の人も昔一度だけポストの彼女にあったらしい。そして、もともと彼は彼女と同級生で同じ学校に通っていたらしい。男は「好きなんだ」と告白したらしいが、その時にはもう父と付き合っていたらしくてふられてしまったらしい。
しばらくして彼女がなくなったと聞いた時は葬式にも来ていたらしい。俺は赤ん坊だったからしらないけど...
ちなみに、ポストに袋をかぶせていた理由はバス停を取り壊すため、ポストに傷がつかないように保護をするために行ったことらしい。
本当はポストも取り壊すことになっていたのだが男が大切なものだからと取り合って残すことになったのだと...
彼女が俺の前から消えて1年が経った。
彼女はあの時バイバイと言って消えてしまった。だが、俺にはわかる。俺が未来を目指す限り、彼女はまだそこにいるのだと。
俺は実家の近くにある大学に通っている。難しくて倒れそうになることもあるけどもう逃げたくはないから。
俺は、最後までやってみようと思う。
俺は彼女に恋をした。
名前も知らなかったあの
...美しいきみに...