でっかいのも小さいのも好きだよ
(°∀。)「おっぱい」
「うお!?危ね!?」
横薙ぎの一撃をバックステップでかわして体勢を整える。
「どうしたの?もう終わり?」
「終わりじゃねぇ、よ!」
返答の声と共に剣を引き抜いて投げつける。
しかし、それも簡単に剣で弾かれてしまう。
ステータス差ってのは悲しいね。
俺より華奢に見える女性に遊ばれてしまうのだから。゛予測演算゛を使っても対応できる状況じゃなければ役に立たない。
改めて目の前の人物を観察する。
緋色の髪に金のメッシュ、宝石のような紅の瞳。
顔の作りは美人寄り、視線を下に移せばたわわに実った果実が二つ。見事なスイカだね。
重厚な鎧に身を包んでいるのというのに手足は細く、あの鎧の重量を支えられるとは思えない。
だが身のこなしは軽く、先ほどのように易々と俺の攻撃をかわす力を秘めている。
油断できない相手だ。
「動かないならもう終わりってこと?
なら今度はこっちから行くわよ!」
一足に目の前まで踏み込んで上段から斬り込んで来る。
5mもある距離を1秒にも満たない間に詰めて来るのが本気じゃないなんて笑っちゃうよね!
「ッ!」
ギリギリで槍の柄を滑り込ませてガードすると、剣の刃を柄の表面に滑らせて受け流す。
力勝負に持ち込んでは駄目だ。筋力差で押しつぶされる!
「今のは上手かったわ!」
「そりゃどうも!」
受け流す事で下に向いた刃で下段から斜めに切り上げる。
が、それも手甲でガードされる。
「フフ…残念だったわね。ハッ!」
「ガハ…!?」
槍を弾かれタックルを食らって後ろに吹き飛び地面に倒れ伏す。しかしまだ終わっていない。
わざと吹き飛んで衝撃を吸収したのでまだ体力に余裕がある。
気合を居れる為、相手を睨みつけ拳を握り締める。
「クソ!今のは絶対良い乳揺れしてたぞ!
おのれ鎧め!許すまじ!」
「私のおっぱいが見たいなら、私を傍に置いてくれれば何時でも見せてあげるわよ?」
「それは遠慮しとくよ!!」
「キャ!?」
拳を握って掴んだ砂を投げて目潰しをする。
チャンス!美人顔の割りに可愛い悲鳴を上げる彼女に容赦なく一撃を叩き込む!
「キャッチ!」
「何で!?」
目を瞑っているというのに槍を掴まれる。
確実に目潰しは決まってたぞ!?
「あなたの事を知りたいから攻撃のタイミングも覚えたのよ!!」
「ゲフ!」
渾身の一撃をキャッチされた挙句横一線をわき腹に叩き込まれて吹き飛ぶ。
あー、駄目だ。これはさすがに体が耐え切れないわ。
戦う意思に反して限界を迎えた肉体によって俺の意識はブラックアウトした。
───
「あークッソ、腹痛ってぇ。」
訓練場の端で武装を解除し、最後に一撃を入れられたわき腹をさする。
「ごめんなさい。私もヒートアップしちゃって。」
「いや、良いさ。
俺のひ弱な肉体が何処まで動けるのか確かめる良い経験になった。ありがとう。」
「お礼なんていいわ。私はやるべき事を全うしただけだもの。
そ・れ・に、あなたの役に立てるなら嬉しいわ。」
俺に膝枕をしている先ほどまで戦っていた彼女───アーミリオン王国騎士団副団長ファレナ・ジークフリートの胸を揉みつつ会話をする。
周りのクラスメイト達から嫉妬の感情を感じるが関係ない。今は鎧を脱いで曝け出されたこの肉を堪能するだけだ。
あー柔らけぇ。
恵理姉の微妙に膨らんでる分逆に悲しい胸とは大違いだ。あれはあれで好きだけど。
不良クンとの模擬戦から数日。現在俺は副団長を専属の指導者として戦闘訓練を行っている。
不良クンとの戦闘後、副団長自信が団長に頼み込んで俺に付けて貰ったらしい。
一応魔法訓練も行ってはいるが、[情報魔法]も[契約魔法]も効果を腹黒王女に教えてしまえば利用される事は必至。
信用ならん王国には教えてやるつもりは無いので、適当に誤魔化してクラスメイト達が魔王討伐に出るまでは戦闘訓練を主に出られるようにした。
魔法訓練をやっていればいつボロが出るか分からねえからな。
「しっかし副団長、本当に良いのか?
レベルの上がらない俺なんかに構ってて。
副団長なんだからもっとやるべきことあるんじゃねぇの?」
俺に乳を揉まれているが彼女はこれでも副団長だ。
レベルを上げる方法を探っているとはいえ、現状は魔法も使えず、レベルも上がらず、魔王討伐に役立つスキルも無い、戦闘が少し得意なだけの役立たずだと周りが認識する俺に構っていられるとは思えないのだが。
それに今は周りの奴らもレベルが更に上がっているので不良クンと戦ったときのようにすんなりと勝つ事は難しいだろう。
本格的に魔物討伐を始めたら訓練とは比べられないくらいのレベル差ができ、もっと勝てなくなるだろう。
「いいのよ。
私なんて成り上がり。
1年前に魔族にこの国が襲われた事件で空いてしまった副団長の座に、たまたま同じ事件で功績を挙げた私が押し込められただけなのよ。
しかも女だから周りから疎まれている。
女の癖に生意気だーってね。
だから副団長の肩書きもお飾り。
団長は実力主義だから女であっても見下していないと言うのが唯一の救いかしらね。」
「じゃあ、副団長を俺に専属で付けるのは体の良い厄介払いって意味もあるのか。
肝っ玉の小さい奴らだなぁ。」
「そうね。だからこそ私の要望が通ったのね。」
召喚者の中の役立たずと騎士団の嫌われ副団長。一緒に居てくれるのなら管理もしやすいと言う事か。
「まあ、副団長が俺の専属で居られる理由は分かった。
けど、お前は何で俺の専属になろうと思ったんだ?」
「言ったでしょう?私は真に強い者が好きなの。
あの時の鷺沢君の戦いを見て確信したわ。貴方が私の求めていた人だって。
だから愛人でも下僕でも奴隷でも、何でも良いから私を傍に置いて?ね?」
その言葉と共に向けられる強い熱の篭った恋慕の感情。
ふざけた様子は一切無く、真剣に言っている事が分かる。
「お前一応国に仕える身だろ?そんなこと言って良いのか?」
「貴方だから言うけど、私この国に忠誠心とか無いの。
たまたま生まれた国がここで、たまたま騎士になれた。
生活が安定してるからこの職を選んだだけだし。
後は、貴方みたいな強い人に会えたら良いかなって思ってたの。
その点では騎士をやって正解だったわね。
…それにここだけの話、この城の連中全員不気味なくらい王女様に従順なの。
それはもう宗教かってくらいに。
それが不気味でこの国自体あまり好きではないの。」
「不気味か。なんとなく分かるな。」
この国に召喚されてから計十数日。
会った事のある城の人間は儀式の間に居た腹黒王女とその他重役達、団長と副団長、後は書庫の案内人とその他使用人。
その内副団長以外の人間は、腹黒王女を前にすると忠誠心や尊敬、畏怖と言った感情を向けていた。
それを見ていたときは腹黒王女でも人望があるのだな位に思っていたものだが、今考えればあの光景は異常だったように思う。
なんせ誰も彼もが同じような感情をただ一人に向け、その中に負の感情…とまでは行かなくても無関心すらなかったのだ。
その異常さは゛召喚された直後のクラスメイト達゛に似ていた。まるで何かにそうしなければならないと刷り込まれたかのように。
「そんな訳だから、ね?私を貴方の物にして?お願い。」
「ムグ!?」
突然揉んでいた目の前の果実に押しつぶされる。
前方は乳房、後頭部は太ももでサンドされとても心地よい。息苦しいけど。
さっきから感じていた嫉妬の感情が更に濃くなるが、気にせず感触を楽しみつつ会話を…無理だな。喋れねえや。恐るべしおっぱい。
とりあえず顔と乳の間に手を差し入れ揉み上げつつ会話できるだけの隙間を確保する。
「理由は分かったが、俺はお前を愛人にも下僕にも奴隷にもするつもりはねぇよ。」
「それは何故?」
少し悲しみの感情を込めて問いかけられる。
「まず第一に、俺はお前が信用できん。
性分ってのもあるが、俺にとっちゃこの国の人間はいきなり俺達を攫って気に入らない奴をぶっ殺して来いって言ってるようなもんだしな。
何か利用する為に近づいてきているのかもしれないし。今はそうじゃないみたいだが、後々そういう考えを持つかも知れねぇしな。」
「それは…そうね。ごめんなさい。
本来は私達が何とかしないといけない問題だと言うのに。」
たった数日の付き合いではあるが、副団長が俺を利用しようとする人間ではないと言うのは分かっている。
だが人は簡単に裏切るのだ。たった数日一緒に居ただけで信用するつもりは無い。
「第二に、俺の性格の問題だ。
他人を信用しない、利用する事だけ考える、必要ならば裏切りもする。
自分で言うのもなんだが、お世辞にも良い性格とは言えないし多分耐えられないぞ。
直ぐに居なくなる様なら最初から居ないほうが良い。
この世界で俺に真剣に向き合ってくれた礼に忠告する。やめておけ。」
自分の人格は自分が一番良く理解しているつもりだ。
ひん曲がっている俺の性格では、普通の人間では一緒に居るなんてできないだろう。
「それは大丈夫。私は貴方の為ならなんだってするし、貴方になら何をされても嬉しいわ。
今の生活を捨てろと言うなら捨てるし、体を差し出せと言うなら喜んで差し出す。
罵られたって、裏切られたって貴方の為になるなら何をされても良いわ。」
嘘を言っている様子は無い。
感情に害意は無く、純粋に好意だけで言っている。
うーん。今は良いが、もし王国から逃げる事になった場合に付き纏われているというのは厄介だな。
訓練後に遠征が有るので逃亡するならそこだが、この様子だと遠征中も一緒にいる事になる。
なんだってすると入っているが、ここで信用して後々気が変わられたら堪ったもんじゃない。
専属での訓練はありがたいが、何とかして引き離せれば良いのだが。
「そういえば、強い者強い者言ってるけどレベルの上がらない俺なんてそんな強くねぇだろ?
強いってんならゆーしゃくんが一番だろ。」
ゆーしゃくんは現在レベルが16。ステータスは200近くなっていた。
他の奴らはせいぜいレベル10手前なので、強さと言う点では圧倒的だ。
「勇者ね。単純な強さという点でなら一番でしょう。
けど、彼は駄目ね。見ているとただ王女様の言いなりになっているだけだもの。
正義感は強いみたいだけど何も考えていないみたいね。
多分彼、一回でも裏切りとかが起きたら折れちゃうんじゃないかしらね。
いくら腕っ節が強くても精神面がダメダメだと…ね。
それに比べて貴方は強い。今までの訓練で更に確信したわ。
いくら不利になっても絶対に勝つことを諦めないその精神。経験を生かし、己以外の他者を、全てを利用するスタンス。
それこそ私の求めた強さ!」
「俺精神値マイナス振り切ってるんだけど。」
「それでも貴方がその強さを持っている事は事実よ。」
「なら団長とか。」
「確かに団長は強い。けど彼は嫌。
王女様への忠誠心が高すぎて不気味だもの。」
「なら他の召喚者が…」
「駄目。私が好きになったのは鷺沢楓。
貴方が良いの。貴方じゃなきゃ駄目なの。」
膝枕の状態からファレナの胸に頭を乗せて抱きしめられ、真っ直ぐに目を見つめられる。
退く気は無さそうだな。有耶無耶にしてもまた蒸し返されるだろうし…。
…ならあれ試すか。
「本当に俺で良いのか?」
「鷺沢君が良いの。」
「利用するだけ利用して終わる可能性もあるぞ。」
「貴方の役に立ってその結果ならそれで良いわ。」
「エロい要求をするかもしれないぞ?」
「あれだけ胸を揉んでおいて今更?」
それはそうか。
「俺は自分で裏切りはするが、裏切り者には容赦しないぞ?」
「絶対に貴方を裏切ったりしないわ。」
「奴隷になれって言っても?」
「愛人にでも下僕でも奴隷でも何にでもなるわ。」
「俺の立場が不利になるような事は…。」
「一切しない。」
「嘘吐きは嫌いだぞ?」
「嘘なんて言わない。」
「…分かった真面目に考えるよ。」
「本当に!?」
抱きしめられていた腕を解き、副団長に向き合い真っ直ぐに目を見つめる。
「あくまで考えるだけだからな。」
「それでも良いわ!絶対私を傍に置かせて見せるから!」
「なら───゛契約成立だ゛。」
俺がそう言うと俺と副団長の間に光球が現れる。
「何!?」
突然の出来事に副団長が腕で顔を隠す。
光球から光でできた鎖のようなものが飛び出して俺と副団長の腕に巻きつく。
すると鎖が巻きつくと光球は消えてなくなった。
「何…これは…。」
「俺の魔法だよ。」
今の光球は[契約魔法]の゛絶対契約゛の成立を示す物だ。
゛絶対契約゛は互いに契約の意思を示し、両者が等価であると認めた条件を提示した場合に発動する。
他にもできることはあるが、今使ったのはこれだ。
俺の腕を見れば鎖のようなものが巻きついた部分に゛絶対契約 対象:ファレナ・ジークフリート゛と書かれている。
副団長の腕にはこの世界の文字で゛絶対契約 対象:鷺沢 楓゛とある。
これは契約がなされている証拠。この文字を触れば契約内容が分かる為契約書にもなっている。
試しに文字に触れてみれば文字が光り、羊皮紙の契約書が現れる。
─────
絶対契約 対象:ファレナ・ジークフリート
契約内容
・鷺沢 楓はファレナ・ジークフリートを愛人、下僕、奴隷等として傍に置く事を考慮する事。
・ファレナ・ジークフリートは鷺沢 楓に対しての裏切り行為を禁止する。
・ファレナ・ジークフリートは鷺沢 楓が指定した立場になる事を必ず許容する事とする。
・ファレナ・ジークフリートは鷺沢 楓が不利な立場に追いやられる行為を禁止する。
・ファレナ・ジークフリートは鷺沢 楓に対して嘘を述べる事を禁止する。
以上の内容で契約成立とする。
─────
先ほどの会話で言質をとっていた物が契約内容として記載されている。
文字は契約を行った者同士にしか見る事ができないが、この羊皮紙は他者に見せる事ができる。
(ちなみに契約成立の光球も契約した者同士にしか見えていない。)
契約内容に反した事を行えばその度合いによって罰則が与えられる。
軽い物であれば体に痛みが奔る程度で終わるが、重いものであれば心臓が破裂して死ぬ可能性もある。
それらの違反行為の罰の重さは契約時の取り決めが無ければ魔法が判断する。
もちろん術者である俺も罰則の対象である。
それらの内容を副団長に教えて反応を窺う。
「どうだ?お前に隠してこんなのを使うような奴だ。
考え直すなら今だぞ。両者の合意があれば契約を破棄する事も出来るからな。
さすがに城に居る間は[契約魔法]を使用できるってことを王国に知られたくねえから破棄できねえけど…」
副団長はガッチガチに固められているのに対して俺は考えるだけ。
あまりに不等な契約だ。
「…いいえ、契約破棄はしないわ。」
「え?マジで?」
さすがにここまでやれば契約破棄するかと思ったんだが。
「むしろ好都合ね。
他人を信用しない鷺沢君に信用してもらえる唯一の方法は誠心誠意貴方と向き合う事でしょう?
ならそれを確実に証明してくれるこの契約は私にとって利でしかないわ。」
「なっ…。」
契約が無くても分かる。副団長は本気で言っている。
人間なんて直ぐ発言を撤回する。副団長も俺に何をされても良いといっていても、実際に酷な扱いをされれば考えが変わると思ったんだが…これは俺の考えが甘かったか。
たった数日で他人の人柄なんて分かるわけもねぇしな。
「…はは。そうかそうか。
なら俺も本当に真剣に副団長を傍に置くか考えないとな。
副団長も俺に信用されるようにしっかり頑張れよ。」
「ええ!」
それから、副団長と握手を交わして俺達は訓練に戻って行った。
…嫉妬の感情の中に特に濃い嫉妬の感情があった事に気づかずに。
恵理「楓後で締める」