ステータスに欠点があっても強力な何かが有るのも定番だよね
8/13 魔王の国゛カラベラ゛を゛アルカ゛に変更
「エフェクトスキルはレベルが無く、未知の力を持つスキルも多く存在する。
技能スキルは一般的にLV10が限界値とされているが、Lv30まで到達し(最大値)と表記された者も存在した。
そして補正スキルと耐性スキルはLv10が最大と。」
現在は俺たちが召喚されて次の日。
あの後、身体検査を受け体に異常は無いと判断された。
まあ、ステータスにハッキリ状態異常と表記されているわけだが、原因は全く分からなかったというだけだ。
腹黒王女さんにはレベルが上がらないのは致命的だと言われ、これから行う訓練はせず後方で支援に徹するのはどうかと提案された。
周りのクラスメイト達もその提案に乗ったほうがいいと言っていた。
中には本気で心配している奴らも居たが、嘲りの感情を俺に向けている奴らもいたな。
しかし、俺としては何をしてくるか分からない組織のど真ん中で単独行動をする事になるのは避けたかったので、琢磨と恵理姉に全力でフォローしてもらいつつ王女さんと交渉をした。
今はレベルが上がらなくてもこれからレベル上限:1が解ける可能性、魔物が居る世界で技能スキル以外に戦う力を持ち合わせていないことへの不安、[情報魔法]と[契約魔法]が有用である可能性等を理由に何とか訓練が受けられるようにできた。
[話術]の補正もあったのだろう。ありがたい。
そして今は魔法を使える人間は魔法の成り立ちについての講義を受けた後だ。(魔法を使えない奴らは訓練場で体を動かしている。)
講義を受けた後は魔法を使う訓練になる…のだが、この世界に存在している魔法は火、水、風、土の四大魔法とそれぞれの上位魔法に分類される熱、氷、雷、重属性、光と闇の対属性とその上位聖と邪属性の属性魔法が存在する。
しかし、その中に当てはまらない特殊な魔法もあるらしく、特殊魔法と呼ばれている。
代表的なのは能力を強化する[付与魔法]という魔法。
俺の魔法[情報魔法]と[契約魔法]は特殊魔法に分類されるのだがほぼ失伝した魔法らしく、この国の書庫でいくつか使用者の手記がある程度。
[情報魔法]に至っては存在すら知られていなかった。
そんな状況では魔法の発動訓練なんて行えるはずも無く…
仕方ないので俺は一人さびしく、[契約魔法]の使い方を調べるために入れられた王国の書庫の文献を漁って情報収集をしている。
少し無茶を言ったが勝手に呼び出したのはあちらさんだ。
これくらいは許されてしかるべきだし、結構簡単に許可が得られた。
一人だけの理由はあの腹黒が俺のステータスを見て役立たずだとでも判断したのだろうな。
何か問題を起こしても直ぐに対処できるうえ、俺に手間を掛けるつもりはないということだろう。
俺をサポートする人間は書庫の扉近くに案内役兼連絡係の男が一人居るだけで、他には一人も居ない。
俺としては人目を憚らずに[情報魔法]を使用できるからそちらのほうがありがたいけどね。
書庫に入れて貰ったときに[契約魔法]についての文献も渡してもらったが、この本にはもう用は無い。
[契約魔法]は昨日のうちに使い方を゛アーカイブ゛で調べている。
強いて言うなら実際に使用した人間によるアドバイス等も載っているが、内容は゛メモリー゛に収めてしまったので後で読めば良い。
記録したい本を目の前に浮かんでいる半透明のパネルに翳せば勝手に解析を始め、内容をすべて記録してくれる。便利だ。
…え?魔法は発動できないんじゃないのかって?
次の日の訓練まで半日もあるのに自分の能力がどういう用途で使えるのか確認しないわけ無いじゃないですかヤダー。
いやー昨日の夜は捗っちゃったね。
この[情報魔法]とんでもなく便利なんだもん。
水晶がなくてもステータスの確認が出来て物品の解析も出来る゛スキャン゛、゛スキャン゛した物の詳細を説明してくれる゛アーカイブ゛、今も使っている情報記録・整理用魔法の゛メモリー゛、周辺の状況を゛スキャン゛してマップを作成、何処に何があるかまで調べられる゛マッピング゛、そしてとっておきが三つ。
使用時には空中にSF映画のような半透明の操作パネルが浮かぶ。
これは基本自分にしか見えず、任意で他人に見せることも出来る。
しかも発動も容易で念じるだけで使え、MPを消費するのは視覚外の物を゛スキャン゛するときと、三つのとっておきだけと来た。
更に、他のクラスメイトのステータスを見ると全員が持っていた[言語翻訳]を俺だけは持っていなかったが、[情報魔法]は゛スキャン゛と゛アーカイブ゛を併用して言語翻訳の役割を自動で果たしてくれる上、文字まで読めるようにしてくれている。
こりゃあチートどころの騒ぎじゃありませんね。
そんなわけで、こんな力があるならいろいろ調べなきゃだめでしょって事で昨夜はまず自分のステータスを調べたのだが…
[契約魔法]…他者との契約に世界の理としての側面を持たせることにより、契約の絶対性を与える魔法。
[感情把握]…他者が何の感情を何処に向けているのか把握できるスキル。
[弱者の覇気]…他者にスキルの持ち主が弱者であるという印象を与えるスキル。
Lv上限:1…ジョブに関係なくレベルに上限を指定する状態異常。
現在のアクセス権限で表示できる情報はここまでです。
ジョブ補正カット…ジョブのステータス補正が無くなる状態異常。
現在のアクセス権限で表示できる情報はここまでです。
ジョブスキル使用不可…ジョブスキルが使用できなくなる状態異常。
現在のアクセス権限で表示できる情報はここまでです。
精神崩壊…精神に異常をきたした者である証。まともな会話は見込めない。
固体名:鷺沢 楓は、過去に経験した大きな二つの喪失と育ちすぎた疑心により精神崩壊を起こしたと思われる。
魔法とスキルはどのように使用するか、という情報も引き出せたが状態異常は精神崩壊以外はアクセス権限というのが足りないらしく、゛アーカイブ゛で調べても名前で分かるような情報しか出てこなかった。
精神崩壊の説明のまともな会話は見込めないってのは不服だが、この状態異常の理由が分かったのは良かったんだろう。これが一生治らない事も分かったけどな。
しかし、まともに活動できてる分には何とかなるだろう。
自分で力を付けられないのは悲しくなってくるが、[情報魔法]と[契約魔法]を使えばやりようもある。
今は大人しく情報を集め、いざという時に行動を起こせるようにしないと。
最悪、この城から出て行く事も検討しないとな。
そのためにもまずはこの書庫の本をすべて゛メモリー゛に保管してやろう。
作業を続け、同時に昨日の召喚者に対する説明会(俺は検査を受けいたので個別だが)で聴いた内容を思い出す。
現在この国はこの世界に数人居る魔王の一人が治める国゛アルカ゛と戦争の真っ最中。
魔王討伐の為に幾つかの国家と同盟を結んでアルカとドンパチやっている。
が、王様とお后様は戦争が始まると同時に死亡。
流行り病らしい。
今この国の代表はあの腹黒王女。
トップの急死で混乱するこの国を見事な手腕でまとめあげたらしい。
゛まるで二人の死が予想できていたかのような手際の良さだった゛んだと。
なんとも怪しさ満天だね。
魔王との戦争でもこれまた見事な采配により、押され気味だった戦線を持ち直して拮抗状態に持ち込めた。
しかしこのままでは五分五分のまま戦争が長引いてしまう。
魔王を伐つためには何か決定打が欲しい。
そこで行われたのが古の文献にあったという異世界からの勇者召喚。
つまり俺たちをここに呼び出したって事だね。
良かったね腹黒さん、扱いやすいアホが勇者で。
「俺からしたら迷惑な話だがね。
戦争に第三者を調停役以外で投入すんなよ。てめえらで何とかしろっての。」
文句を言いつつ次の本を手に取れば昨日聞いた周辺国の歴史書があった。
気になる事もあったのでただ゛メモリー゛に写すだけでなくしっかりと読むつもりで本を開くと一つの国の名前が目に付く。
゛アルメリア皇国゛。
王国の人間の話によれば、人間の国家でありながら魔王の国に加担しているらしい。
アーミリオン王国とアルカが戦争を初めたとの報を聞けば、アルメリア皇国はアーミリオン王国と魔王討伐同盟の国家全てと手を切り、国境では厳重警戒態勢でいつ攻めてくるかも分からない緊張状態。
どういう事かと抗議をすると送られてくる抗議文を届けた使者の生首。
今では同盟国家間では人類の仇敵とまで言われているらしい。
聞いた話だけなら随分と過激な国のようだ。
しかし、得られた情報はあくまで同盟国側の人間からの物だけだ。
私情たっぷりに教えてくれた可能性もあるし、何よりアルメリア皇国がアルカ側に付いた理由は一切聞いていない。
皇国が悪であると判断するには早計であると思ったので、まずは私情を挟みづらい歴史書から情報を得ようと思ったが…。
「一番新しい記録で50年前、それまでにアルカに関する記述は無し。
アルカ以外の魔王の国とも何回か小競り合いを起こした記録はあるから別に魔王の国すべてと仲がいいわけでも無し。
他の資料を見ればアルカ自体が最近まで無かったみたいだし…。
つまりここ50年以内に新興国アルカとの間に何かあったと見るべきか。」
これはこれで有益な情報ではあるが、今求めているものではない。
もっと書庫を巡って情報を得ないとな。
しかし、そう思って゛メモリー゛に本の内容を写す作業を再開させつつ゛アルメリア皇国゛の情報を探すが、新しい情報の載った本は一切発見できず書庫を一周してしまった。
全ての本をメモリーに収めるには少なくとも数日は掛かると思っていたが、使っているうちにスキャンの解析速度が上がっていったので半日ほどで終わった。
そのなかでアルメリア皇国について得られた情報は歴史書で分かることばかりだった。
この書庫にはあまりに他国の情報が少ない。
それもアルメリア皇国だけでなく周辺国家すべてがだ。
まるで゛見られたくないものを隠している゛かのように。
「いや、まるでではなく確実に、か。
俺たちに何か隠し事をしているのか、嘘を吐いていてバレないようにしているのか…。
どちらにしろますます信用ならねぇなぁ。」
総じて今日得られたのはこの国が信用ならねえってことと、アルメリア皇国についての情報を得なければならないってことか。
まぁ、目的の王国以外の視点の情勢は分からなかったが国の書庫一つ分の本が手に入ったのだ、魔法やスキルの情報も見れたし成果としては上々だろう。
この世界に一緒に持ってきたソーラー式の時計によれば時刻は午後7時。
この世界と俺たちの世界は時間周期が大体同じらしいので、朝説明された予定によれば夕食の時間だ。
「そろそろ行くか。」
゛マッピング゛を見れば案内役も俺の元へ近づいてきている。
敵とは言わないが信用ならない人間ばかりの状況に改めて気を引き締めつつ夕食に向かった。
(0∀0)「気を引き締めて向かう先が夕食ってのもなんかマヌケだよね。」
楓「飯は大事だぞ。」