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作者は小さい頃に足元を蛇が這って行く経験をして滅茶苦茶ビビりました

(0∀0)「股下潜り抜けて行くんですからそら驚きますよ。」

「これは暫く続きそうね。」


ファレナが外の様子を見ながらそう言った。

俺も外を見ると、先程までより雨が大分強くなっている。

突然雨が降って来たので、近くで見つけた洞窟で雨宿りをしている。


「今夜はここで一泊だな。」


「そうなるわね。この中に魔物の反応はある?」


「待ってろ。今スキャン掛ける。」


洞窟の奥にスキャンをかけ、いつもより広い範囲のマップを作る。


「魔物の反応は無い。けど結構奥まで続いてる。

…ん?何だこれ?」


「どうしたの?」


「なんかでかい石がある。人工的な物だな。石像か?」


「石像?」


マップを見ても魔物の反応は無いし、感情把握でも何も感じない。この先に魔物は居ないだろうが、マップには大きな石の反応があるのだ。


「ここまで人がたどり着いて何かしていくとは考えにくいわよ。」


「なら、魔物が作ったとか?」


「確かに物を作る魔物はいるわ。でも石像を作る魔物は、知らないわね。」


ファレナは知らない、か。こちらもメモリーの書庫の本を検索するが、石像を作る魔物は載っていない。


「最近作られた物の可能性は低いか。」


「危険な物なのかしら?」


「ここからじゃ分からん。だが放置しておける存在でもないな。」


「なら、調査が必要ね。実は主が留守なだけで魔物の巣だとも限らないしね。」


川の拠点を後にして一週間程。森の奥にかなり近付いたようで、ファレナが苦戦する戦いも増えてきた。ここで一息吐いていた時に魔物に襲われたら、堪ったもんじゃない。


「そうだな。意味のあるものにしろ、無いものにしろ、調査は必要だな。」


2人で洞窟の奥に向かう。


横幅は車1台分より少し広いくらいだが、一番奥まではかなり距離があり、暗くてよく見えない。


「一応、警戒はしておいてくれ。」


洞窟内では取り回しにくい槍ではなく、剣を引き抜きながら言う。


「ええ。分かっているわ。」


それに対しファレナも剣を引き抜きながら応える。


そうして5分ほど歩いたところで、開けた場所に出た。洞窟の最奥に着いたようだ。

見た感じはただの開けている洞窟、というだけだ。しかし、入り口から明かりは届いていないというのに、内部を奥まで見渡せるほどには明るい。周りを見れば、壁からうっすらとした光が発されているのが分かる。




─────


名称:光苔


概要

名前の通りに光を発する苔。魔力の濃い場所に生えやすい。

ある世界には苔と話すお姉さんが存在するらしい。


─────




スキャンを掛ければ、その原因は苔だというのが判明した。


魔力が濃い場所に生える、ということだが俺には魔力の濃さというのが分からない。[情報魔法]も[契約魔法]も、条件を整えれば勝手にMPを持っていくので、自分の中の魔力というのも分からないのだ。


「ファレナ。魔力の濃度って分かるか?」


「分かるわよ。ここはかなり濃いわね。体内の魔力が低い人だと調子を崩すかもしれないわね。


…何で楓は平気なの?」


「何でだろう?」


言われて気付く。俺なんでピンピンしてんだろう。

濃度の濃い魔力というのはレベルの低い人間に悪影響を与える事がある。魔力酔いと言って、頭痛や吐き気、酷い場合は記憶障害なんかも引き起こすらしい。


だというのに俺は今、体調を崩す様子がない。


「まぁ、今は考えても仕方ない。問題ないなら、優先すべき事から片付けようぜ。」


優先すべき事、目の前に佇む石像に目を向ける。


長い髪の女性の像でスタイルも良く、顔などこの世の物とは思えないほど美しい造形をしている。だが残念なのはその両腕に無骨な手枷が嵌められていることだ。この手枷が美しい造形を損なってしまっている。でもこの拘束が男の劣情を誘ゲフンゲフン。

そこは問題ではなく、注目すべきは像の下半身である。本来2つあるはずの足は1本に纏まり、硬質な鱗が生えてるいる。全長30メートルはありそうな下半身は、大きくとぐろを巻いている。


「女性の上半身と蛇の下半身。所謂ラミアってやつか。」


とても精巧な作りをしており、よくできた人形…って訳でもなさそうだ。


「なぁ、ファレナ。これってさ…。」


「封印された大蛇…よね?」


拘束らしき手枷、蛇の下半身、そして白蛇の森の奥というこの場所。

それらの要素から、この像は封印されたという大蛇に関係するというのは明白だ。


「これ、まずいやつだよな?」


ファレナの方を向き、石像から一歩後退する。


「かなり危険よね?」


目を会わせ、同時に頷く。逃げよう。


振り返って音を立てないよう出口に向かう。


「お邪魔しましだぁぁぁあ!?」


突然の衝撃。首から下の全てを拘束される。


「楓!?」


「人間がここまでたどり着くなんて珍しいわね。」


聞き覚えのない声が響き、身体を完全にロックされて地面から離される。

ゴリラの時のように腕を動かす余裕もなく、ギチギチに締め付けられ!?


「がああぁぁぁぁ!!折ぉおれぇぇるぅぅぅ!?」


「あら?何なのコイツ。随分とひ弱ね。

ここまでたどり着いたのだから、それなりに強いのかと思ったのだけど、見た目通りじゃないの。」


拘束が少し緩められる。

死なないようにという配慮であろうか。だが痛い。これは骨にヒビが入っているぞ。下手すると、継続ダメージが入ってHPが0になって死ぬかも。


「楓!?」


硬いもの同士がぶつかった音がすると、共にファレナの気配が遠ざかる。


明滅する視界に先ず入ったのは白。白髪と白磁のように白い肌、白い鱗の生えた蛇の下半身を持った女性。

服を着ていない為に曝け出された乳房は、とても整った形の美乳…じゃなくて、見惚れるようなその容貌は、俺とファレナに嫌悪と少しの喜色の感情を向け、出口を塞ぐように佇んでいる。


「コイツ楓って言うんだ?」


金色の瞳が俺の顔を覗き込む。

彼女の下半身から伸ばされた蛇の尾が俺の体を拘束しているらしい。


先程までファレナが居た場所には何もなく、壁の方で土煙が上がっている。おそらくこの蛇女がファレナを吹っ飛ばしたのだろう。


だがそもそもコイツは何処からやってきた?向けられる嫌悪の感情は、今の今まで存在していなかったし、マップにも生態反応は無かった。近くに居たのなら気付けたはずだ。


蛇女にスキャンを掛ける。




─────


ミーリャ


Lv63(823)/1000 ジョブ:雷蛇姫

HP472/472 MP3/519

攻撃289

筋力535

魔力548

防御560

耐久211

速度589

精神74

幸運38


魔法

[雷魔法]


ジョブスキル

[硬化]

[発雷]

[捻り潰す]


エフェクトスキル

[石化の魔眼]

[肉体再生]

[人化術]


技能スキル

[ナイフ術Lv3]


耐性スキル

[物理耐性Lv15]

[雷無効]

[精神攻撃耐性Lv23]


状態異常

Lv低下

魔力漏洩


─────




強い。ファレナとは倍以上に差があるうえ、俺なんて簡単に捻り殺される。

それに、おそらくこの蛇女が封印された大蛇だろう。ゆーしゃくんと同じレベル最大値がそうそう居てたまるか。


「他人の家に勝手に侵入してくるなんて、やっぱり人間は礼儀がなってないわね。」


蛇女による拘束が少しずつ強くなる。力が強まる度に飛びそうになる意識を無理矢理起こして思考を働かせる。


他人の家?それに侵入という発言。…この蛇女はここの主で、俺達が蛇女の家に侵入している事になる。

と、言う事は…。唯一動かせる首で後ろを見れば、先ほどまでそこに存在していた石像は無くなり、同じような容姿の蛇女が目の前に存在する。

つまり、あの石像はこの蛇女でなんらかの要因で石化していたのを解いて、一瞬で距離を詰めたのか。


「それは失礼しました。知らなかったとはいえ、あなたのお宅に勝手に入ってしまった事はお詫び申し上げます。」


「へぇ。なかなか物分りが良いじゃない。」


その行動に、少しだけ感心した様子で蛇女が言う。


「あなたの住居に忍び込んだのはこちらですからね。非はこちらにあります。それを認めないで絞め殺されるくらいなら、さっさと認めてしまう方が良いです。

ってことで抵抗しませんから、離して頂けませんか?」


「嫌よ。人間なんて信じられないもの。」


駄目か。なら、この状態で会話するしかない。


「それは手厳しい。


それはそれとして、申し遅れました。私は鷺沢 楓と申します。先程そこに居た騎士はファレナ・ジークフリートと言って私の友人です。よろしくお願いします。」


交渉の基本は挨拶から。俺の勘が正しければ彼女は話せば分かる筈だ。出来るだけ穏便に事を済ませたい。


蛇女は驚いた表情を見せるが、すぐに冷めた表情になる。


「肝が据わってるのか、死ぬと悟っておかしくなったのか。」


「いえいえ、私は至って正常ですよ。」


「そうなの。まぁ、どちらでも良いけどね。」


「グッ…!」


拘束が強くなり全身が悲鳴を上げる。


「お前たちはここで死ぬのだから。」


HPは残り13。蛇女が本当にその気になれば本当に死ぬ。


「ファレナさん助けてぇー!!」


全力で叫ぶと、身体が横に引っ張られる。先ほどまで俺が居た位置には、剣を振りぬいたファレナが居る。


「遅すぎ。そんなのろまな攻撃、当たる方が難しいわ。」


「チッ!」


蛇女の尾を断とうとしても、速度が足りていない。

だが俺がこのまま絞め殺されるのは回避できた。


ファレナは連続で攻撃するが、蛇女は滑らかな動きで避け続ける。

その攻防により俺は激しく揺られ、衝撃でHPがじわじわ削られる。


マズいな。主に速さが足りない。

このままだとジリ貧だ。というより俺が死んで決着がつきそう。


「゛フロートシールド゛!」


「くっ!?」


ファレナも同じ判断をしたのか、遠距離に出せる゛ガード゛の魔法を放つ。


かなりの速度が出ていた蛇女は、避けきれずに蛇の部分───俺が捕まっていた部分に当たる。その影響で拘束が緩んだため、急いで抜け出す。


「゛ハイ・ヒール゛!!」


急いで駆け寄って来たファレナが回復魔法を掛けてくれ、HPが全回復する。


「助かった!」


「お礼は切り抜けてから!」


そのままファレナに横抱きにされ、出口へと走る。


「お姫様抱っこ!やだ、お婿に行けない!」


「そのときは私が貰ってあげるわ!」


ファレナの全力疾走。しかし、彼女と蛇女のステータスには倍以上の差がある。しかも俺を抱えて走るとなれば…。


「随分と余裕ね。」


再び蛇女に出口を塞がれる。


「もう2度とお邪魔しませんから見逃したりは…」


「しないわよ!!」


蛇の尾がこちらに迫る。ファレナも反応できていない。これは終わったか。…いや、駄目だ諦めるな思考を止めるな思考を止めるな。最後の一瞬まで諦めるな!


死ぬ間際の走馬灯のようなものなのか、加速する思考で打開策を探る。あれも駄目、これは間に合わない、 駄目、駄目、駄目!


「クソッタレぇぇ!」


何も出来ない。ならばせめてもの抵抗に罵りを上げる。


『待ってくれないかミーリャ。』


そのとき、再び聞きなれない声が響くと、尾が俺たちに当たる寸前で止まった。


『彼らを気絶させるのは、待って欲しい。』


「なぜ止めるの?」


『その少年に、興味が沸いたんだ。』


「…ハァ。仕方ないわね。」


『ありがとう。ミーリャ。』


その会話でようやく気付く。蛇女とは別の何かから、好奇心の感情を向けられている。


『やぁ、初めまして少年少女。』


おそらく俺たちに挨拶をしているのだろう。しかし、何処に居るのか分からずに俺もファレナも困惑する。

いや、正確には感情を向けられている場所から、大体の位置は分かっているのだ。蛇女の居る位置、その直ぐそば。だが姿が見えない。


『ああそうか。私の位置が分からないんだね。目の前に居る…と言ってもミーリャしか見えないか。

そうだな。目の前のラミアの胸元を見てくれないかな。』


そう言われ、蛇女の胸元を、Oh Sexy.

違う、そうじゃない。ちゃんと胸元に目を向ければ、ある物を発見する。


『改めて、初めまして少年少女。生憎と私は名前を忘れてしまっていてね。今は竜玉(りゅうぎょく)と名乗っているよ。』


そこにあった爬虫類の瞳のような宝石と目が合った。

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