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見てる分には面白いけど実際やるとなるとめんどくさい物に巻き込まれました

(0∀0)「初投稿よろです」

「どうか、この世界をお救いください!」


俺たちの目の前でこの世の者とは思えないような美しさの金髪美少女が、頭を下げている。

周りは石造りの壁。周囲はクラスメイト、鎧を着込んだ騎士らしき人間、頭を下げる金髪とその周りに控える重役らしき人物。

足元にはクラスメイト達を囲むように描かれた魔方陣のようなもの。


ここから考えられる事はやはり、異世界転移に巻き込まれたということだろう。


最近読んでいたネット小説にそういうのが多かった。


そして定番の魔王復活、世界の危機、苦渋の決断により異世界から俺たちを勇者として召喚したという、普通なら眉唾な事を説明される。


ちなみに彼女はこの゛アーミリオン王国゛の王女様で、ここは召喚の間という城の地下らしい。


しかし、異世界から召喚という話だけは信じて良いだろう。

実際帰りのホームルームが終わり挨拶して下校ってなったら、ピカっと光って気がついたらここにいたし。

クラスメイトには頭脳明晰、容姿端麗、運動神経抜群の主人公気質とその幼馴染もいるし。

人のことを言えないが、こんな無駄に個性溢れる奴そうそういない。


クッソ、めんどくさい。サー○ァント呼ぶみたいに気軽に召喚なんてすんなよ。


「分かりました!僕たちがこの世界を救って見せます!」


っとと、そんな事を考えてる間に話が進んでいた。

受け答えをしているのは件の主人公くん。

なんだか考えなしに正義感だけで言ってるみたいだ。


頭は良いのに残念だなー。


………うん?゛たち゛?


「なあ皆!困ってる人たちは放っておけないよな!」


はあ!?ざっけんな!

こっち巻き込むんじゃねえよ!

勝手に一人で世界救ってろよ!!


というか世界を跨ぐと言ってもこれは立派な誘拐だぞ!?

普通誘拐犯の言葉をあっさり受け入れるか!?


考えなし!ボケ!脳足りん!


文句の一言も言ってやりたいが、後ろで状況把握に努めたい身としてはここで大声を出して目立つのは避けたいところだ。


仕方ないので口を噤んだままにする。


「まあ、しょうがないか。」

「異世界の英雄ってのも悪くないし。」

「困ってるならできるだけ助けてあげたいわよね。」


周りを見ればほとんど全員がこの話に乗り気なようだ。


召喚されてから゛取り乱し、騒ぎ立てて場をかき乱す者一人もが居ない゛この状況、下手に騒ぎ立てるのは得策ではない。


何か妙な力が働いているとしか思えない。


という事で俺と同じ事を考えて居そうだけど、俺が居るから騒がずにはいられないであろうこの人を更に強く抱きしめて騒げないようにしておく。


「ありがとうございます!この国を代表して感謝の言葉を!」


周りの言葉を聴いて王女が頭を上げる。


その顔からは見る者を魅了させる花のような笑顔が見える。

そこから感じるのは心からの感謝───ではなく、嘲り。


具体的にいうとこいつらチョロい、みたいな。


その顔を見た瞬間警戒度を一気に跳ね上げる。


今まで何回も友好的な笑顔を浮かべて俺を貶めようとしてきた奴を見た来たが、こいつは今までで一番本心を隠すのが上手いな。


怖いわー悪女怖いわー。


「しかし、僕たちは唯の学生です。

世界を救う力なんて持っていないのですが…。」


それを考えられたなら安請け合いすんなよ。


しかし、本心をここまで隠す技術を持ったこの女が、確実性のない召喚で一般市民が召喚される可能性を考えていないわけがない。


感情を隠すなんて特殊な境遇か化かし合いでもしないと磨けない技術だ。

王女というなら後者の可能性が高いし、それなりに場数を踏んでいる事だろうし頭も切れる筈だ。


「それは大丈夫です。

異世界から召喚された異世界人の皆様には特別な力が備わっているはずです。

今から皆様にはステータスという物を調べさせていただきます。」


その言葉を聴いたクラスメイトの何人かから、

「ステータスキター!」「チート能力ゲットだ!」「俺が、英雄に…。」

などといった声が聞こえ、喜びの感情を感じる。


「ステータスは別室に専用の道具がありますので、それを使用します。

それでは勇者様方、こちらへ。」


そういって腹黒い王女は扉へ進んでいく。


それを追いかける主人公くん。いや、コイツはゆーしゃくん(笑)といったほうが相応しいか。

優れたリーダーシップを持つ彼にピッタリだ。


更にゆーしゃくんをクラスメイト達が追っていく。


さて、めんどくさい事になったぞ。


しかしまあ、あの人と一緒に居た時の経験を生かして俺にできる事をやるしかないか。


なので今俺にできる事、唯一信用できる友人を探したいのだが…。


「おーい、椛ー。何してんだ行くぞー。」


と、声の方向に振り向いてみれば目的の人物、桐崎(きりさき) 琢磨(たくま)が手を振っている。


「おう、今行く。」


ちょうど琢磨も俺を探していたらしい。

遅れてクラスメイトの最後尾に並びつつ琢磨に近づく。


コイツなら俺の感じた違和感を理解してくれるだろう。

そう考えながらクラスメイト達の後を付いて行き、小声で話しかける。


「どう思う、この状況。」


「やっぱり王女さん達が何かしらやってんだろ。

一人も騒ぎ立てないってのはおかしい。」


少し質問しただけで俺の聴きたかったことを答えてくれる。


やっぱり彼女の気まぐれに付き合わされた事のある奴はこのぐらいで思考が乱れたりしないらしい。

協力できる人間に一安心だ。


「だよな。世界を救えなんて言われてあっさり請け負うってのもおかしな話だ。

ゆーしゃくん(笑)は別として。」


「プッ…ゆーしゃくん(笑)って星宙(ほしぞら)のことか?

確かにあいつにぴったりだな。」


俺の返答を聴いた琢磨が笑いを堪えている。


しかしゆーしゃくんは星宙って言うんだっけ。

フルネームは……あ、ギリギリ思い出した。

星宙(ほしぞら) 光一(こういち)だ。


ある意味超ピッカピカのキラキラネームだ。


覚える気がなかったから忘れてたわ。


「それはいいけど、お前その抱きしめてるのどうにかしてあげたら?」


「ん?抱きしめてるの?」


そういわれて下を見ればすぐ目の前に人の頭があった。


俺に抱きしめられてちょっと苦しそうにもがいている。


ああ、そうだ。光る直前に目の前にいた彼女を庇ったんだ。

ゆーしゃくんのアホさ加減と考え事続きで忘れてた。


どうりでちょっと歩きにくいと思った。


「ああ、ごめん恵理姉。

忘れてた。」


「お前その状態で忘れられるってのもすごいな。」


琢磨が呆れた顔をしているが無視して拘束を解く。


「ぷは、忘れるんじゃない馬鹿!

苦しかったぞ!」


怒った彼女が召喚時に手に持っていたらしい出席簿を縦にして俺の頭を叩いて来る。

痛い。


「悪かったって。謝るからその手を止め、あ、痛いちょっと角はやめて角は。

まって痛いって、ねえ待って恵理姉こんなに馬鹿力だっ、ま、あの、ほんとにやめてください痛いです…。」


何これ恵理姉ここまでアホみたいな筋力してたっけ!?


とまあ漫才はこれくらいにして、恵理姉───俺達の担任の(なぎさ) 恵理(えり)にも意見を聞くとしよう。


彼女は小さいころに近所に住んでたお姉さんで、実の弟のように可愛がってもらった。

あの人の気まぐれに巻き込まれた事もあるし、このくらいで思考が乱れる事もないだろう。


「大体二人と同じ意見だな。

あまりにスムーズに事が進みすぎている。

…できれば私としては教師を差し置いて勝手に話を進めた馬鹿を怒鳴ってやりたかったのだがな。」


疑いの感情を王女に向けた後、目を細めて俺に抗議の視線を送ってくる。


「いや、あそこで下手に騒ぎ立てても得策じゃないってのは恵理姉も分かってるでしょ。」


「しかし、これでは楓が危険な目に…。」


俺の言葉に顔を伏せる恵理姉。


この人は大切な人の為なら本当に何だってする人だ。

彼女は俺を本当の家族か、それ以上に可愛がってくれていた。だから俺の為に異議を唱えようとしてくれたのだろう。

けど、それで彼女の立場が悪くなる可能性を考えるとあそこで止めないといけなかったのだ。


唯一信頼できる彼女を失うというのは絶対に避けたい。


「大丈夫、あの人と一緒にいた俺はそう簡単にくたばったりしないよ。

それに大事な人が危険な目に合う可能性があるなら出来るだけ避けないと。

っとそろそろ着いたみたいだ。行こう。」


「…分かった。

楓がそう言うなら大人しくしよう。」


渋々納得しつつも少し頬を赤らめ、俺に熱っぽい感情を送ってくる恵理姉と、「ひゅーアッツアツゥ。」なんて茶化してくるアホは無視して前方に視線を送れば王女様が扉の中へ入っていく。


さて、ここで俺たちのステータスを調べるわけか。


「変な能力だけはありませんように。」


出来るだけ面倒な事にならないように信じていない神に祈りながら俺たちも扉を潜った。

(0∀0)「抱きしめてた人間を忘れ去れるって楓君も大概アホだと思いますのん」

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