4. 無職Lv.1(転職スキル持ち)が強すぎる説
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「くッ……」
ボロボロになったマリシアがなんとか立ち上がる。
足元が少しふらついているようだ。
「ほう、なかなかタフではないか。誉めてやろう。だがその体、もう言うことをきくまい。抵抗せねば苦しまず死ねるのだ。さっさと諦めたらどうだ。」
低い声のトーンでゆっくり話すバルシマ。
その手には魔導書らしきものを持っている。
「さぁ、その身を我ら〈黙示録協会〉に捧げるのだ、トロミア村の諸君!!さすればあのお方の野望に貢献できるのだ!!さぁ……」
と、トロミアの村人への『協力を求む演説』が言い終わらないうちに、ナイフが直進してくる。
それを予測し、後ろに退くバルシマ。
「……まったく懲りないな、狩人の少女よ。」
そう言いながら手をかざし、魔導書をパラパラめくる。
「〈いでよ茨・愚者の蛮勇を止めるべく・縛り付け給う〉《暗黒魔法》バインド・ローズ」
詠唱が完了したとき、マリシアの斜め上左右、斜め下左右に魔法陣が出現し、そこから茨が伸び彼女の体を縛る。
「ぐぁ……」
身動きができないマリシアに追い打ちをかける。
「〈燃えし炎は華の如し・いざ花びらのように儚く散り給う〉《火炎魔法》フレイムバレット」
バインドローズもろともマリシアを吹き飛ばす。
〈戦士〉の小男がバルシマの方に駆け寄ってくる。
「さすがっすねマジで。あいつ全然太刀打ちできてませんよ。」
機嫌をうかがうように小男が声をかける。
だがバルシマの目は冷たい視線を送っている。
「当たり前だろう、こんな小娘。それなのにお前はこいつごときに敗戦した……もうお前は〈黙示録協会〉にはいらぬ、この役立たずめ。」
自分の今の立場を理解した小男は、焦り始める。
「お待ちください!どうか……どうかご慈悲を!!お願____」
その声もむなしく。
「《火炎魔法》バーン・ブラスト」
詠唱を終えたバルシマがさっきのフレイムバレットの何倍も強大な火炎がものすごい爆発力によって放たれる。
「ちょ待っ……ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
そうして小男が焼けこげ、跡形もなくなる。
その瞬間、村人達の背筋が凍った。
眼前で、人が死んだのだ。
しかもあまりにも無惨な死に方で。
「……今見てもらったように、簡単に人を消すことも出来る。なぜ貴様らをすぐ消さないかというと、
貴様らは今死んだクズとは違い、まだ利用価値があるからだ。どうだ?焼けこげて死ぬか、我らの主の生贄になり、素晴らしき野望に貢献するか……選ぶがいい。この二つ以外の選択肢は、ない。」
村人がざわめき始める。
苦しんで死ぬか、まだマシに死ぬか。
彼らが諦めるのも無理はない。
なぜならマリシアよりも強い人がいないのだ。
「お、おい!大丈夫かマリシアッ!!」
ハヤトがマリシアに駆け寄る。
ゆっくりと、辛そうに立ち上がる。
「大丈夫……だよ、ハヤト。あんな奴の言葉なんて、私には通じない。この村の人々は……私がッ……守るのッ!!!!」
「マリシアッ!!」
マルシアがまた突撃する。
「全く、小娘め……死n」
だがさっきまでとは少し違った。
バルシマの目の前で高速回転し、すぐに背後にまわり、弓を三本一気に発射する。
《アクションスキル》バックハント・ストライク。
相手の背後に高速でまわり、弓を相手が背後に来たのを理解する前に高速で放つ、というものに加え、
《アクションスキル》トライ・シューター。
一度に弓を三本、一斉に発射する、というもののコンボで、確実に仕留められるというマリシアの得意技だ。
ただ、バルシマには効かなかった。
なぜなら、その背後に瞬時に魔法陣が出現し、弓をはじいたのだった。
「ほう……牙をむいた前方を避け、背後にまわって確実に仕留めようとする……敵ながらあっぱれだ。だが残念だったな。」
バルシマが自慢げに語り始める。
「我は生まれながらに《ユニークスキル》死角殺し(デットスポット・キラー)なるものを持っていてな。我の視界外から攻撃された時に、自動で魔力を消費し《守護魔法》を起動させるというものだ。なかなかの技だったが、
我には通用せぬ。」
そう言い、マリシアの方向に手をかざす。
「せっかくの良い素材だったが……言うことをきかないなら仕方がない。」
バルシマが詠唱を開始する。
「〈燃え尽きよ・愚かなる邪鬼よ・葬られよ・燃え盛る炎を以て〉《火炎魔法》バーン・ブラスト」
その手のひらに出現した魔方陣から、紅蓮の炎が駆け抜ける。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
間一髪。
詠唱を開始していた時に駆け出していたハヤトが、筋トレによって培われた筋力と体力によって攻撃を回避した。
「はぁ、はぁ、無事かマリシア。」
そう聞いたマリシアが声を上げる。
「無事じゃないよ!!なんで君、こっちに来てるんだ!自殺行為だよ!!」
それを聞き、落ち着いて、ハヤトが答える。
「あのさ、俺はまだ来て少ししかここにいないけど、でもこの村の人達のことめっちゃ好きになったんだ。村長も何だかんだで優しいし。何より……こんな見ず知らずの男を家に泊めてくれて、いろいろ面倒見てくれた、お前も好きだ。だからお前も、この村の人達も絶対に死なせない。全員が生きるって選択肢を俺が作ってやる。」
そう言い残し、前に出る。
マリシアがその足を掴む。
「何かっこつけてんの、このバカッ!!私でも無理だったのに、〈無職〉の君が行ったって……」
その言葉を遮り、ハヤトがその手を振りほどき、言った。
「そのことなら問題ない。」
そして、この世界に来て初めてアレを使う。
「〈転職・戦士〉」
その時、体が光り、〈戦士〉の初期装備を身にまとった姿になった。
この装備、思ったより少し重いな……
「〈転職〉だとッ!?……だ、だがその装備ということはLv.1だな。そんなもので〈魔術師〉Lv.40の私に太刀打ちでき________ 」
バルシマが少し動揺して話しているのに対して食い気味に、ハヤトが言う。
「そうだ、今のお前じゃ俺は勝てない。」
そう、今のバルシマならば。
「何わけのわからんことを……もうお前はいらん……消えろ」
そう言い、詠唱を始める。
だがそんなことお構いなしに前に進むハヤト。
その脳内には〈転職スキルについて〉のあの部分が浮かんでいた。
_________自分もしくは他人をジョブチェンジできる。
____転職できる職業は、なったことがある、又は自分が見た人の職業のみになります。
口角があがる。
そして、詠唱中のバルシマに向かって、こう言った。
「〈転職・無職〉」
そう言ったとたん、詠唱中のバルシマの体が光り、パンツ一丁・シャツ一枚というとても目に悪い姿になった。
「な……何が起こった?」
動揺するバルシマに、ハヤトが答える。
「俺には〈転職〉っていう能力があってな。自分もしくは他人をジョブチェンジできる。そういう訳でお前は〈無職〉に転職した。どうだよクズ野郎……」
皮肉感たっぷりに、言う。
「〈無職〉のLv.1になった気分は!!」
プライドを傷つけられてか、ヤケをおこしたのか、ひ弱な動きでバルシマが殴りかかってきた。
「お前もLv.1のくせに、調子に乗るなァァァァァ!!」
もちろんそんな者に、マリシアに死ぬほど鍛えられたハヤトが負けるはずもなく、拳を楽々と避け
腹にパンチをくらわせる。
「ガハッ!!」
腹を抱えながらもだえ苦しんでいるバルシマにハヤトが近づき、剣を抜く。
「まぁお前がすべて悪いんだからな、恨むなら自分を恨め。」
刃がキラッと輝く。
そうして剣を振りかざ_____
「なぁ~んてすると思ったか!!くらえっ!!《アクションスキル》シールド・スマッシュ!!」
光り輝く盾でバルシマを殴る。
ものすごい勢いで飛んでいく。
そして声も出さず、崩れ去った。
「グロ展開はまだ早いわ、俺。」
そう言って剣を鞘に納めた。
「え……嘘……」
困惑しているマリシアを置き去りにして、村人たちの歓声が響き渡った。
「いや~、きみまさかあんなに強いとは!びっくりだよ私は!!」
村の居酒屋にて、村長に激励のお言葉をいただく。
「そんなことないっすよ村長。あ、こいつ目ぇ覚ましましたね。」
そこには体を縄で縛られ、悪ガキどもに落書きされたバルシマがいた。
体中あざだらけパンツ一丁・シャツ一枚という姿で。
それに対して、ハヤトが尋ねる。
「おい、お前〈黙示録協会〉の奴なんだってな。早速で悪いが、そこのボスはどこにいる?いやね、とある少女に小言を頼まれててさ。」
だがバルシマは黙り込み、答えようとしない。
呆れるハヤトがドアに向かって手招きをする。
「はーい悪ガキのみなさ~ん?あとはお前らに任せるよぉ~?」
すると、ドアからこの村を代表する悪ガキどもが現れる。
「「「いやっほーい!!!!!」」」
「え、ちょ、待てこのクソガキ触るなギヤァァァァァァァ!!!」
それを満面の笑みで観て、手掛かりなしかぁ……と悩んでいると、村長が話しかけてきた。
「何か情報を掴みたいなら、冒険者たちが集う街〈クロステリア〉に行ってみたらどうだ?この村を守ってくれたお返しに、馬車を用意するが。」
「マジすか村長」
その言葉に反応し目を輝かせる。
「ありがとうございます!やっぱあんたのこと大好きよ俺!!」
その手を強く握りしめ、上下に激しく振る。
「まぁ、もう人手不足は解消されたし、働かなくなったらただの穀つぶしだから早く出てって気持ちもある。」
……ぶれねぇな村長。
「さぁ行ってこい。もう馬車用意してるから。」
「早く出てけってことですねわかります」
居酒屋を出ると本当に馬車があった。
「じゃあ行ってこい。あっちでも頑張れよ。」と村長。
周りを見渡すと村人たちが手を振っていた。
「じゃーな!!」「気を付けてー!!」「にーちゃんカッコよかったぜ!!」などたくさんの言葉がハヤトの背中を押す。
「……じゃあ、行ってきます!!」
そうして馬車に乗り込んだ。
その姿を、寂しそうに見るマリシアがいた。
そこに村長が語り掛ける。
「行ってこい。」
「えっ!?」
あまりに急だったのでマリシアが声を上げる。
「でもこの村が……」
「この村のことなら大丈夫だ。それになんだ、かわいい子にはなんとやら、っていうだろ?」
そう言い、背中を押した。
マリシアは戸惑ったが、笑みをこぼし、言った。
「行ってきます!!」
そう言い、出発直前の馬車に乗り込んだ。
「ハヤト……私もついてっていい?」
急に入ってきたマリシアに少々驚きながらも、しっかりと、答える。
「後悔したいならな。」
こうして、新たに旅が始まったのだった。
その様子を投影石で観ていたとある男が、笑みを浮かべる。
「……来たな、ハヤト……」
そう、呟いた。
その腕には〈黙示録協会〉の紋章、その中でもボスである証の十字架が彫られていた。
主人公、強いかこれ?と思い始めてきました。
大丈夫でしょうかね。
まぁ、次回をお楽しみに!!




