3. 狩人女の子がとっても優しい説
お待たせいたしました。誤字・脱字などありましたら、ご指摘よろしくお願いいたします。
目を、覚ます。
また、木陰か……
と、思いきや。
「あれ?ベット?で、ここは……」
木造建築の小屋。窓からは優しい光が差し込んでいる。
……とりあえず起きるか。
体を起こし、ベットから降りる。
「う~ん?さっきまで森の中にいたわけでしょ。そんで倒れた。なのにどうして?」
「あ、起きたみたいだね。」
目の前のドアが開いていて、そこには赤髪三つ編みの少女がいた。
率直な意見。
かわいい。
「……ってか誰だアンタ?」
「ああ、申し遅れたね。私はマリシア・ハールド。森で狩りをしてたら君が倒れててね。勝手に助けさせてもらったよ。」
そう言い終わると、いったん部屋を出て、また入ってきた。
その手には鍋らしきものがある。
「はいこれ。おなかすいたでしょ?」
鍋の中には美味しそうな煮物っぽいのがあった。
香ばしい醤油みたいなにおいが、この部屋に広がっていく。
「な、なぜ腹が減ってると?」
「いや、君寝てるときに、『うぅ……腹が……減った……』ってうるさくてさ。」
なんとお恥ずかしい。
だがそんなことはどうでもいいのだ!
「そんじゃ有り難く……いっただっきまーす!!!」
鍋に入ったまま、そばにあったスプーンでがっつく。
うぅ……ウマいぃぃ……五臓六腑にしみわたるゥゥゥゥゥゥゥ!!!!
その時間、わずか2分。
たくさん入っていた鍋を、空にしたのであった。
「……誠に……誠にありがとうございまする!!!アンタは命の恩人だぁぁぁぁ!!!」
「そ、そんな……大げさだって。ただご飯あげただけだよ?」
「それがありがたいんだよ。マジあざっす。」
少し照れているマリシアを、さらに隼人がヨイショする。
「おーい、マリシア、いるかー?」
外から老いぼれた声が聞こえる。
「あ、村長。ちょっと待って。」
マリシアが外に出ていく。
数分後。
マリシアが戻ってくる。
「君、村長が会いたいって。村長のところに行ってもらっていい?」
こういうのは行った方がいいやつだよなぁ。
「もちろんですとも。」
「ありがとう。えーっと……君、なんていうの?」
そういえば名乗っていなかったな。
千鳥隼人かハヤト・チドリか、どっちがいいだろう……
ハヤト・チドリでいいか。
「ハヤト……ハヤト・チドリだ。よろしく。」
「へぇ、変わった名前だね。よろしく。」
まぁアンタの名前もうちの世界じゃ変わった名前だけどな。
「じゃ、行こっか。」
マリシアの家をあとにする。
______村長の家。
「やぁ、よく来たね、君。どうだい気分は。」
「まぁ、そこそこっす。」
村長、口の周りのひげヤベーな!毛量!!
「ところで君、見ない顔だし、見たことのない服を着ているね。一体どこの出身かな。」
う~ん、言ってもわからないと思うなぁ。
「日本です。」
「「???」」
村長・マリシア共に首をかしげていた。
そりゃそうだ。
「そんなところないはずだが。」
だろうな。
「いや、実は俺、こことは別の世界から召喚されまして……」
「……君、大丈夫か?おなか減りすぎて頭おかしくなったんじゃないか?」
完全に信じられてない。
「いや、ガチですって!本当にこの間……」
「いやいや。どこぞの召喚士が人間なんぞ召喚するんだ?召喚するならモンスターや魔人などだろう。人間なんて召喚しても何の価値もない。ただの魔力の無駄使いじゃないか。」
反論の余地がない……
「君は疲れているんだよ。どうだい、しばらくここで休むのは。」
いや、ずいぶん急だな。
「それまたどうして?」
「いやね。僕は困ってる人を見ると助けたくなるんだ。ただそれだけさ。」
「いや、畑仕事やってほしいだけだろう?村長」
マリシアがつっこむ。
えっそうなの?
「……チッ……ばれたか……」
村長否定してッ(泣)
「……まぁそういうことだ。マリシアの家で飯と寝床をあたえるかわりに、畑仕事をすること。どうせどこかへ行く当てもないんだろ?」
そうなんだけどさ。
なんか村長キャラもう崩壊してますよ~。
「……了解です。頑張りぁいいんだろ?ったく。」
「そうかありがとう!君はいい人だな!!ハッハッハ!!!」
高笑いする村長。
もう、なんでもいいや。
「さぁ!早速いってこーい!!!」
「ヘイヘイ……」
______マリシアの家
「っつーわけで、お世話になります。」
「改めてよろしく、ハヤト!!」
うれしそうにしているマリシア。
なぜ?
だって見知らぬ男と一緒に住むことになったんだぜ。
「なんでそんなうれしそうなの?」
ふふ、それはね……とマリシア。
「君さっき、召喚されたって言ってたよね。別の世界から来たって。そこの話が聞いてみたくてさ!」
「え……マリシアは信じてくれるのか?」
「そりゃそうだよ!てゆーかたとえ嘘だったとしても、それはそれでおもしろいじゃない!だから私は信じるよ、ハヤトのこと。」
……あぁ。
女神とはこの方のことをいうのだろうか。
「眩しすぎて直視できません。」
「?……まぁ、いいや。早速働いてもらおうかな、ハヤト。まずは……」
この後、畑を耕したり、水をやったり、肥料をまいたり……とかなりの重労働をやらされたのであった。こんなにも疲れるんだなと、身をもって感じた。
いつも食材を作っている皆様、お疲れ様でございます。
「ゼェ……ゼェ……もう無理だ疲れたぁぁぁ!!!」
あまりの疲労感にその場に倒れる。
「まだ終わってないのに……ハヤト、君体力無くない?」
「ったりめーだろ……運動なんてもともとの世界じゃほとんどやってないし……」
「へぇ~……ねぇ君、じゃあ私と特訓してみる?」
「……マジすかマリシアさん」
と、いうわけで。
キツイ畑仕事とトレーニングづくしの過酷な毎日となった。
「腹筋100回・背筋100回・腕立て伏せ100回をそれぞれ3セットずつ!終わったらランニング!このメニュー終わらないとご飯抜きね!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!もう許してぇぇぇぇ!!!!」
こんな日々が続いてしばらくたったある日の夜。
あることに気付いた。
「あれ?レベルは全く上がってないのにパラメータが上がってる?」
そう。〈スカウトラァー〉に表示されるパラメータがあがっていたのだ。
レベルは上がっている訳ではないのだが。
ここから推測するに、〈無職〉の特性として、レベルが全く上がらないが、パラメータは頑張れば上がるようだ。(少しづつ)
そして転職できる職業が増えていた。増えた職業は〈狩人〉だ。
つまりマリシア、村長、またはこの村にいる目に入った誰かが〈狩人〉だということになる。
「ま、マリシアに聞いてみるか。」
そう言い、隼人は目を閉じた。
___翌日。
「なぁマリシア、職業が〈狩人〉の人って誰?」
ずいぶん急だな、と驚いた顔をしてから、言った。
「この村は狩人の村トロミア。ほとんどの人が〈狩人〉の職業に就いているよ。アレかな?君も〈狩人〉になりたいとか?」
いや、もうなれるんだけどね、俺。
「なりたいなら、村長に頼んで儀式をしなきゃ。」
「え?儀式とかすんの?」
「そりゃそうだよ。〈狩人〉になるには狩猟の神アルテミア様にお供え物をして祈らなきゃいけない。なんせ私たちが使う〈狩人〉の《アクションスキル》や《特殊スキル》が起動するのはアルテミア様
のおかげなんだからね。」
へぇ~。つまりこの世界で使われる職業ごとのスキルはそれぞれが信仰している神などが認めることによって起動を可能にしている……ということか。
その手間が省けんのは案外いいかもな。
「君どうする?村長に相談してみる?」
「いや、いいわ。なんかめんどそうだし。」
必要ないしな。
「んじゃ、今日も畑仕事しますか!」
「う~っす。はぁ~きついぃぃぃぃ……」
今日もいつも通り過酷な1日が始まる。
_____はずだった。
「ん?なんだ?変な奴らがこっち来るぞ……」
村の中にローブを羽織った群衆が入ってきた。
「は~い!トロミアの皆様~!ここの村と村人、今日から俺ら〈黙示録協会〉のもんだからぁ!!」
鎧を身にまとった小柄の男が言った。
その言葉に、隼人が反応する。
____今、〈黙示録協会〉っていったか?
こいつらがアルカナが壊せって言った〈黙示録協会〉の連中か?
なんか弱そうだな。
「あんたらか……お引き取り願おう。」
村長が言う。
その瞬間、剣を突きつける。
「反抗すんのかぁ?んなら消すだけだよ。死ねよ。」
もう一度振り上げ、振り下ろし、村長の体を切り裂____
「マリシアッ!」
そう叫びながら後ろに飛ぶ。
瞬間、いつの間にか村長の前にマリシアが移動しており、手に持っているナイフで剣を受け止めていた。
「ッ!?……さ、さすがは〈狩人〉ってとこか。」
一歩退く小柄な男。
「今すぐここを立ち去って。じゃないと手加減しないよ。」
マリシアが男をにらむ。
「ふっ……しらねーよカス。死ね。」
「警告したからね。」
マリシアが向かっていく。
ナイフを急所めがけ突きまくる。
が、男が持っている盾にことごとく防がれる。
「きかねーよ!《アクションスキル》シールド・スマッシュ!!!」
男が持っている盾が輝き、盾を突き出す。
マリシアがものすごい勢いで飛んでいく。
だが受け身を取り、その場に止まる。
「なかなか……だけど倒せないレベルじゃないね。」
そう言い、また突進する。
また、ナイフを突き出す。
「だから見え見えだって!!」
ナイフを防ぐ。
「きかね~……ってあれ?」
前を見ると、そこにマリシアの姿はなかった。
なぜなら彼女は上空にいたからだ。
「なっ……上!?」
そして弓を構え、矢を射る。
その矢は輝き、ものすごい速さで発射される。
「くっ、速いッ!!」
そして腕と足をかする。
《アクションスキル》フォーリング・シュート。
空中に跳び、矢を発射することでその矢の速度が格段に速くなる、というものである。
「ッ!?体中の力が抜けていく!?」
男がその場に倒れる。
ちょうど着地したマリシアが説明する。
「実はこの矢じりには脱力草のエキスがぬられていてね。かすっただけでも3時間は体に力が入らないよ。」
ローブを着た男たちにかつがれながら、男が言う。
「くそがッ!!覚えてやがれカス共!!」
そうして、村から退却したのであった。
「いや~すごかったな、マリシア。おまえめっちゃ強いな!」
照れながらマリシアが言う。
「いやいや、まだまだだって。でもまぁ、あのぐらいだったら楽に倒せるよ。まぁそれはよしとして、畑仕事しようか!」
「く……了解だよ。ったく休めると思ったのにぃ~」
夜。
〈スカウトラァー〉を見ると、転職できる職業に〈戦士〉が追加されていた。
あいつ〈戦士〉だったのか。
弱かったなぁ~ww
じゃ、寝るか。
翌日。
畑仕事に励んでいると、またしても奴らがきた。
「は~い!また来ました!」
またお前か弱キャラめ。
マリシアが前に出る。
「またやられたいようだね。」
そう言いながら突進する。
ナイフを構え突き____
「〈燃えし炎は華の如し・いざ花びらのように儚く散り給う〉《火炎魔法》 フレイム・バレット」
とたん、火炎が爆発的に放出される。
「がぁッ!!」
「マリシアッ!!」
マリシアが飛ばされる。
「へへ……さすがっすね、バルシマさん」
男に「バルシマ」と呼ばれた男が言う。
「お初にお目にかかる、我が名はバルシマ・ベクルア。〈黙示録協会〉トロミア地方支部支部長だ。そこの男がてこずったようなので来てやった。そこの娘みたいになりたくなければ降伏しろ。」
弱キャラとは比べ物にならないほどの威圧が、村全体を包み込んでいた。
ヒロイン即変わりましたね。ま、いっか。
次回をお楽しみに!!