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3話 善蔵とリンコとくず餅と

とりあえず書いています。

まだ新型のメガネは活躍せず、擬人化もしませんw

「今日の差し入れは、太平堂の葛もちです」

「焙じ茶だな」


畳敷きの部屋にちゃぶ台。善蔵は黒地に『甘味』の文字のTシャツを着ている。

座布団に座り、葛もちをひとつ口に運んだ。むっちりとした歯ごたえに、黒蜜ときな粉の風味が鼻腔を抜ける。

そして焙じ茶をすすった。


「お前も座って食えよ」

「いただきます」


ちゃぶ台に向かい合うように座った女の子が葛もちを竹の串、黒文字で刺し、自らの口に運んだ。


「おいしいです。ぷにぷにというか、むちむちというか、食感がいいですね」


髪は肩より上くらいの長さだが、艶のある黒髪は若々しさを伺わせる。しかしその目には生気はない。そして何より目を引くのが、顔の中心、目と目の間を縦に、やや斜めに走る縫い目の跡だろう。鼻の脇から、耳の方へ抜けていくその縫い目は、フランケンシュタイン、もしくは某天才外科医を思わせる。

だがそんな特徴を含めたとしても、その少女は整った顔立ちをしている。その縫い目がなくとも、街を歩けば大抵の人は振り返るだろう。


葛もちのふたくち目を食べながら善蔵が聞いた。


「身体の調子はどうだ?リンコ」


リンコと呼ばれた少女は返す。


「問題ありません。博士」


生気のない瞳を正面に向けながら。

「問題があればすぐに言え。無いと思うけど」

リンコは、改造系女子だった。

とある戦闘に巻き込まれ、死にかけたところを善蔵が処置を施し、一命をとりとめた。そこから善蔵の世話を焼くようになった。

はじめこそ善蔵は面倒くさがったが、しつこいので好きにさせているという状態だ。

もともと活発な性格ではなかったようだが、処置の後、さらに生気が薄くなった。

「お前、暗いよ。あれか、昔は引きこもりってやつか?」

言ってみるが、正直善蔵にはどうでもよいことだった。

細かいことは気にしないのだ。


「そんなことより」


リンコが目だけを向けながら善蔵に問いかける。


「良かったのですか?開発途中の試作品を、見ず知らずの少年に譲ってしまったりして」

「あ?あのメガネと小僧のことか」


善蔵は面倒くさそうに頭をかきながら続けた。


「ま、あいつのメガネを踏んづけちまったのは悪かったし、試験も兼ねてな。GPSも付いてるし、データも取れれば文句は言われねーよ、たぶん」

「少年の精神的負担などは考慮されないんですね」

「大丈夫だって、ちょっと変なもんが見えるようになったって、ちゃんとアイツは受け止めてうまくやれるよ」

「その根拠はあるんですか?」

「ないよ」

「「…………」」


二人はしばらく黙って熱いほうじ茶をすすった。







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