-ワードゥの仲間たち1-
上空1万メートルには誰もの想像を超える世界が広がっている。
それがこの‘空’だ。
ここギルア地方は3つの浮遊大陸により構成されている。
「北大陸ジュムラルク」
「南大陸リベロテロラルク」
そして「悪魔の大陸エネミー・ディ・ラルク」
ジュムラルクは飛行技術、科学技術、農業の盛んな大陸でギルアでは最も大きく最も人口が集中してる。
そして、最も危険でもある・・・。
リベロテロラルクは畜産業の盛んな山地の多い大陸。
エネミーの奇襲も極端に少なくて平和といったら平和かもしれない。
ただ気候が厄介であるり、夏は蒸し暑くて冬は凍りつくほど極寒になる。
人口は少なく団結力があり、戦いを好まないものが多いのも他とは違う所のひとつだ。
‘エネミー・ディ・ラルク’
意味は「悪魔の巣くう大陸」
ここにはエネーしか住んではいなく人間は誰も足を踏み入れた事が無い。
ただ一人を除いて・・・。
どっちにしろ誰も踏み入ろうとはせず皆恐れている大陸である。
俺の名前は‘アベル=レカーノフ’
歳は今年で丁度20歳を迎える
5歳の時に父と妹を亡くし、10歳の時に母を亡くした。
全てはエネミーによるものだった。
‘アベル’とは空で初めてエネミーに心を許された少女の名前で、母がこの戦いを平和的な方法で解決してくれることを願いこの名前をつけた。
みんなからは馬鹿にされるが、個人的には・・・そう、気に入ってるっ。
以前はリベロテロラルクの‘ディペノ’と呼ばれる国の小さな村に住んでいた。
しかし、10歳のときのエネミーの襲撃に合い村を追われ途方に暮れていてところをある女性に拾われた。
それが・・・
「おいっ、ちび弟子!さっさと煙草持ってこないかっ!!」
「あ、はいっ、!今持ってきます!」
そう、この気の強いおばs・・・いやいや、お姉さん。
名前は‘ジーク=アンヴァース’
別名‘悪魔狩りの悪魔’そして俺の師匠。
エネミーをまるで悪魔のように狩ることからこの異名がついた。
ちなみに性格も正に悪魔そのもの。
しかし、彼女はただ単にエネミーを問答無用で狩ってるわけではない。
ちゃんとした法則というか、やり方というか、決めてることがあるらしい。
俺には何にも教えてくれないが。
さて、パシリにされた俺は今どこにいるかご存知かな?
ここはジュムラルク最大の国、近未来帝国‘グランデル・ワードゥ’
ギルア一の工業大国である。
そして今いるのは帝都‘バチルザ’のバチルザ宮殿。
そう、今の俺はジュムラルクの住民であり帝国軍騎兵団精鋭部隊の隊長である。
そんな軍人の上官に、一般市民以下の彼女がパシらせるなんて当然ありえないことだが・・・ありえる。
まあ、俺の師匠だからしょうがないといったらしょうがないのだ。勿論俺は気にしていない。
煙草を取りにと言うか買いにいった俺は稽古中の兵団の前を通りかかった。
すると、軍人にしては派手な格好をした一際目立つ奴が俺に気づいて走ってきた。
「アベルっち~、帰ってたのかっ?」
「うおっ、なんだよいきなり・・・!
・・・ああ、丁度さっきな。ところで、訓練の方は順調か?ヒューズ。」
いきなり抱きついてきたこのフレンドリーな青年は‘ヒューズ=ジカード’
帝国軍空軍の大佐で、俺と同じ階級である。
俺よりも二つ年下で、最年少の空軍大佐でガンシップの操縦は帝国一。
ただ、天然なとこもあっていざという時にミスを連発する一種のトラブルメーカー。
「もっち~(もちろん)、俺っちに任せとけばどんな戦闘、訓練、育成もバッチシだぜぃ!」
「なんか不安・・・。」
俺は大きくため息をついた。
こんな奴がよく大佐なんかやってられるよな、と思ったからだ。
不思議といえばかなり不思議なことである。
「おやおや・・・、帰っていたのかね?レカーノフ隊長。」
ふと後ろから聞こえたのは低く太い声だった。
聞き覚えのある声だと思いながら振り返ると、そこには重装備の大男が立っていた。