-始まりの悲劇2-
「あなただけは!!あなただけは・・・生きて・・・。」
それが僕の聞いた母さんの最後の一言だった。
燃え上がる炎の中、母さんは必死に走りようやく炎の途切れている所の近くまでやってきた。
しかし、母さんの体力は既に力尽きていてこれ以上進むのは無理であった。
このままだとどちらも助からないと思ったのか、母さんは最後の力を振り絞り僕を炎が届かない所に投げると、ついに力尽き自分はその炎に飲まれるようにその場に倒れた。
「かあさあぁぁん!!!」
僕は直ぐに起き上がって母さんを助けようと炎に飛び込もうとしたのだが、そこには炎に飲まれて焼かれ殆ど形を失った母さんの姿が見えた。
僕は必死になって叫んだ。
そして涙が止まらなかった。
しかし、いくら叫ぼうとも、いくら泣こうとも・・・母さんは、帰ってこない。
僕はその場に泣き崩れた。
「うっ・・・うぐっ・・・かあ・・・さんっ・・・!!」
もう、どうにでもなってしまえと思った。
どうして、どうしてこんなことになるのか・・・。
なぜ関係の無い戦いを望まない者までが巻き込まれるのか・・・。
しかし、母さんの最後の言葉を無駄にしたくは無いという意思が沸いてきて、僕は弱弱しく立ち上がりその場を後にした。
村の炎はいっそう強くなりこの一帯はまるで昼のようの明るくなった。
歩いている際にすれ違うのはこの襲撃で家族や家を失った村の住民たち。
顔についた煤や泥が落ちるくらい涙を流していた。
「生きて・・・生き延びて・・・ア・・ベル・・・。」
母さんの声がぼんやりと心に響いた。
歩くたびに涙があふれでてきて前が見えなくなった。
でも僕はその足を止めなかった。
そう、生きるために。
母さんがそう願ったように。
父さんも同じことを言っていた。
そしてまた、僕も心に決めた。
終わらせなくちゃならない。この戦いを。
僕みたく悲しみに染まる人々が増えないように、と。
僕の物語は、今始まった。
-序章-なんとか終了!
ちょっと悲しい始まりでしたが、母の死をきっかけにこの少年の物語は始まります。
今後にどうぞご期待を!