-始まりの悲劇1-
ちょっと悲しい始まりです;;
ある夏の夜のこと。
今日はいつもより涼しくてこの村の人々はどことなく心が緩んでいた。
僕はいつものよう母さんと今日一日の出来事の会話を弾ませながら夕食を済ませると、いつものように一人でお風呂に入った。
そして、また今日と同じ朝を迎えれること、今日と同じ母さんの顔をみれることを願って眠りに落ちた。
普通ならこんなことはしないだろう。
でも僕らは違う。
いつ明日がなくなるかわからない恐怖が常に僕らを襲う。
気の弱い僕はこうして神様にでも祈らないと落ち着いてはいられなかったのだ。
しかし、今日はその神様が見方をしてくれなかった。
夜も更けたころ、僕は何かの揺れを感じて目を覚ました。
そして、涼しいはずの夜が暑苦しくなぜか明るい。
瞼を開けるとぼんやりとした中、母さんの必死な表情が目に入った。
「かあ・・・さん・・・?」
状況の飲み込めてない僕はただそう呟いた。
「はぁ・・・はぁ・・・!
あ・・・よかった、目を覚ましたのね・・・!」
僕の声に気づいた母さんは立ち止まると、息をきらしながら喋りホッと表情を緩ませた。
そして僕をゆっくりと降ろして自分は疲れてるのかしゃがみこんだ。
煙をたくさん吸ったようなのか、酷く咳き込んだ。
「か、母さん・・・!しっかりして!どうしたの・・・?」
僕もしゃがみこんで母さんの具合を心配するように伺った。
「はぁ・・・はぁ・・・エ、エネミー・・・よ。」
ゆっくりと顔を上げた母さんは大丈夫と手を僕に向けた後、そう一言だけ言った。
しかしその表情は、死ぬ寸前の人間のようにぐったりとしていた。
「エネミー・・・。」
‘エネミー’と聞いてようやく事の重大さを理解した。
そう、この火事はエネミーによるもので、今この村はエネミーの奇襲にあってるのだ。
よくよく見ると、上空には飛竜がいて炎を吐いてる。
僕はこみ上げてくる恐怖を抑えながら立ち上がった。
「に、逃げよう!ほら、掴まって母さん!」
疲れきって動けない母さんを僕はなんとか立たせて逃げようとした。
しかし時すでに遅し。
周りには炎が回っていて逃げ道を塞いでいた。
とてもではないが背の低くまだ幼かった僕には突破できなかった。
「うっ・・・!そ、そんな・・・。」
もう無理だ、そう思ったときだった。
急に母さんが立ち上がると僕に何かの布をかぶせた。
「逃げるわよっ・・・!」
母さんはそう言うと僕を抱きかかえてまた走り出した。
そう、炎に向かってである。
もともと体の小さい僕は女性でも簡単に抱きかかえれるので母さんはなんとか走ることができた。
「母さん・・・!そんな!!駄目だ、降ろしてよっ!!」
僕は炎に焼かれていく母さんを見ながら必死にそういった。
しかし母さんはその腕を緩めることなく走り続けた。
まだ続きますよ→