文芸部
西村先生に渡しに行った後、文芸部の部室に行った。文芸部の部室は、南館の隅の方にある。
扉をノックして返事を待つ。すると、
「はぁーい、どうぞお入りくださーい」
と声がした。
・・・・・・なんかいやな予感がするんだけど、気のせいかな?
中に入ると、古い本の匂いがした。木の机の前に置いてあるパイプ椅子に座っているのは、髪の長い人だった。
「いらっしゃい。入部希望者よね?話は聞いているわよ」
その人は、まるで前から知っていたかのように言った。
「はい。高2の中野翔太です」
「翔太君ね。はいはーい」
その人は、ノートに何か書き込んでいる。多分、部員のことが書いてあるノートだと思う。
「私は、高校三年生の松浦麗華よ。麗華先輩と呼んでいいわよ。文芸部の部長です!!」
麗華先輩は長い髪を揺らして言った。
「はぁ・・・・・・宜しくお願いします」
「本当はもう一人、部員がいるのだけど。今は図書室に行ってるわ」
多分、いや絶対琴音の事だろう。
麗華先輩は僕の後ろを見て、言った。
「あら・・・・・・その子は」
「悪魔の色葉だ」
「色葉ちゃん。宜しくね」
僕が応える前に簡単に自己紹介をした色葉に、麗華先輩は優しく微笑んだ。
それからしばらくの間、本の話をした。普段はどんな本を読むのとか、私は「ダフニスとクロエー」が好きなのよといった話。
そうして話していたら、部室の扉が開いた。
「・・・・・・翔太君」
琴音だった。
琴音は驚いたような顔をしたが、文芸部に入部したことを話すと、嬉しそうに笑った。部員が少なくて困っていたらしい。
それから皆で帰った。下校時刻が迫ってたから。
帰る前に、麗華先輩イチオシの本を借りた。題名は「友情」、作者は武者小路実篤。「友情」は家に帰って、宿題が終わってから読もうかな。
家に帰って、数学の問題集を二ページやってから、麗華先輩に借りた「友情」を読む。
話は、野島という20代の人が、友人の早川の妹の杉子に恋をする話だ。野島には大宮という親友がいて、杉子は彼を好きになるのだ。
表現が少し難しいけど、結構面白い。前の部活でも本を読んでいたけれど、「友情」は読んでいなかった。野島が杉子の家でピンポンをする場面を読んだ所で眠くなったので、そのページに花の模様の栞を挟んで本を置いた。
それから、ベットに入って眠った。