学校
超常学園に通い初めてからもう1週間になる。いつもの道を歩いていると、和樹が来た。
「おっはよー翔太と色葉ちゃんっ」
「ああ、おはよう和樹。今日も元気だな」
「おはよう小野」
和樹とは家が近いので、待ち合わせて一緒に行っている。これは、いつもの事。今日も和樹は朝からテンションが高い。これも、いつもの事。
「でさぁ、色葉ちゃん。今度遊びに行かない?」
「断る」
色葉を遊びに誘おうとして断られるのも、いつもの事。
学校へと続く長い長い坂の前の道から、泉が来た。
「・・・・・・あら、奇遇ね。おはよう」
泉は、嬉しそうな顔をしている。
「おはよう、泉」
「おはよう原」
「おっはよー泉♪」
なぜか和樹は、泉のことはちゃん付けしない。
「和樹君、今日は菜穂ちゃんいないの?」
「あの子は神出鬼没だからねぇ~。今はどっか行っちゃった」
「へぇ・・・・・・」
なんだか泉、少し嬉しそう。もしかして・・・・・・?
「泉、ちょっといいかな」「いいわよ」
泉だけを呼んで聞いてみる。
「泉って、和樹の事、好き?」
「ふぇっ!?」
泉の顔がどんどん赤くなってゆく。これって当たり?
「ちちち違うわよっ!!私が和樹君の事、好きな訳ないわよっ」
これは当たりだ。
「ふぅーん?好きなんだ」
「だ、だからっ、違うわよ!!」
うろたえる泉。そうそう、和樹は外見は良い方だ。性格も悪くはない・・・・・・と思う。泉が好きになるのも仕方がないのかもしれない。
「なになに、なんの話ー?」
近づいてきた和樹。
「な、なんでもないよ!行こっ」
会話を断ち切り、また歩きだす。二人もついてきた。
「おっ、はろはろー」
歩いていると、七穂に会った。
「おはよう七穂」
「はろはろーっ(笑)」
「あ、おはよう」
「おはよう神崎」
皆で挨拶をする。すると、
「委員長じゃん!顔赤いよー?どしたのぉ」
「な、なんでもないわよっ、行きましょう遅刻するわよ!」
泉は話をそらした。また歩きだす。今度は七穂も一緒に。
学校に着いた。靴を履き替え、教室へ向かう。
「んぉ、奈央先生」
「ホントだ」
廊下に奈央先生がいた。こっちに気付いた様子はない。和樹が近づく。
「奈央先生、おはようございます!って・・・・・・」
奈央先生は、窓を閉めようとしていた。奈央先生は小柄なので、高い窓には届かなかったのだろう。
「んしょ、んしょっ!」
いくら背伸びしても届かない。
「奈央先生・・・・・・俺やりますよ?」
「ん?って、和樹君?おはよう。窓に届かないのよ・・・・・・やってくれるの
?」
可愛く首を傾げる奈央先生。表情は、なんだか悲しそう。
「大丈夫ですよ」
和樹は、背伸びもしないで窓を閉め、ついでに鍵も閉める。和樹の身長は170cmはあるだろう。
そんな和樹を泉が赤い顔で見ていた。
「ありがとう、和樹君」
「や、別にいいですよ」
和樹がこっちに戻ってくる。
「さ、行こ行こ」
歩きだし、渡り廊下を渡って階段を上って教室に入った。
一時間目の後の休み時間に、和樹に話し掛けられた。
「なぁ、翔太は部活何やるのか決まった?」
話題は部活の話のようだ。
「いや、何も決めてないけど。和樹は何部?」
「俺はサッカー部。ポジションはMF」
「へぇ。他の人達は?」
気になったので聞いてみる。
「泉が吹奏楽部。パートはクラリネット。ピッタリな気がする(笑)。慶介は野球部。確か、ピッチャーだった気がする・・・・・・。雅は俺と同じサッカー部。ポジションはFW。七穂はテニス部で、琴音は文芸部。アルは入ってないみたいだ」
「ふぅーん・・・・・・。入っても入らなくてもいいの?」
できるだけ部活はやりたくなかったので聞いてみた。和樹は、
「や、違う。アルだけだ」「え?」
意味のわからない事を言った。
「どういうこと?」
「アルって宇宙人だろ?だから色々あるんじゃないのか」
「へぇ・・・・・・」
納得。
前の学校で文芸部に入っていたので、それにしようかと思い考えていると、
「翔太、今文芸部に入ろうと思っただろ」
「うぇっ!?」
しまった、変な声がぁ!
「図星かぁ~。だよな、お前琴音ちゃんに一目惚れだもんな~」
「だからそれは誤解だって!ただ、単純に前の学校で文芸部(?)に入ってたから!」
「ふぅーん。あぁ、相談部」
「そう、相談部」
和樹が前の部活動の名前を言う。
相談部は、悩み事などを相談する部だ。相談が無いときは、部室にあった本をよんでいた。昔は文芸部だったらしい。おかげで、本が好きになった。
「相談部の部長さん、美人だよな~。まだ連絡とりあってんの?」
「いや。先輩、携帯もってないから」
「機械音痴なの?」
「らしいよ」
先輩は機械音痴だ。パソコンも使えないらしい。
「んで?どうすんの、部活」
和樹が急に話を戻す。いけない、忘れるところだった。
「僕は文芸部に入るよ。本当に、琴音は関係ないからねっ」
一応釘をさしておく。
「そっかそっか。翔太も素直じゃないなぁ」
聞こえない聞こえない。無視。
キーンコーン・・・・・・、休み時間終了の鐘が鳴った。皆急いで席につく。すぐにガラガラ、と音をたてて扉が開いた。先生が入ってくる。
「皆、教科書は出ているかしら?次は世界史よ」
世界史は、僕の国語の次に得意な教科だ。どうやら僕は文系らしい。
「先生ー、教科書忘れましたー・・・・・・」
「マイナス10、と・・・・・・」
和樹が教科書を忘れたらしい。先生がノートに何か書き込んでいた。
「翔太ー、教科書見せてくれー」
和樹とは席が隣なので、仕方がないので見せるとする。
「今日は37ページ・・・・・・」
授業が始まった。
全ての授業が終わり、放課後になった。
入部届けを出しに職員室へ向かう。途中で、今日日直だった慶介とあったので、一緒に行く。
「翔太はさ」
「うん」
話し掛けてきたので返す。何の話かな・・・・・・。
「好きな奴いんの?」
「へっ?」
あ・・・・・・、変な声が・・・・・・。
「あ、いるんだ」
「いないよ・・・・・・」
「嘘」
「本当だよ」
「だって琴音のことよく見てるじゃねーか」
あれ?見てましたたっけ?
「それは誤解です!」
「つまんねーの」
・・・・・・。
「あ、慶介は好きな人いるの?」
「俺は七穂一筋だもーん」
「へぇ・・・・・・」
七穂か。僕の七穂の第一印象、“元気”“活発”なんだけど。慶介は元気な子が好みなのかな?
「ん、着いたぞー」
その時、職員室に着いた。
「どうぞ、先生」
「あら、ありがとう、お疲れ様」
「はーい、さよーならー」
慶介が山中先生に日誌を渡し、先生がそれを受け取る。
慶介が職員室から出ていった。
「それで、中野君は?部活、決まったのかしら」
「はい。文芸部に入部します。入部届をいただきに来ました」
そう言うと、先生は机の引き出しから入部届を出して渡してくれた。
「じゃあ、書いたら西村先生に渡してね。今中学3年生の先生だから」
「分かりました。えっと、そこの机使っていいですか?」
近くにあった机を指差す。
「いいわよ。それじゃあ、私はこれで」
「はい、ありがとうございます、さようなら」
先生が、職員室から出ていった。
入部届を書いて、西村先生に渡しに行った。