超常学園
しまった、見つかった。
「翔太、転校」
「は!?」
「翔太、転校。アンタ、幽霊とか悪魔とか見えるんでしょ」
「そうだけど・・・・・・」
「転校先は、超常学園よ」
「嫌だっ!!絶対に嫌だっ!!」
「どうしてそんなに嫌がるの?小野さんとこの和樹君だって超常学園よ」
「そうだけど・・・・・・」
小野和樹。一年の時に転校した。幽霊に取り付かれたって聞いた。
『なぁ、翔太。お前幽霊とか見えるんだろ?なら俺の幽霊お祓いしてくれよ』
『遠慮しとく。見えるだけで、お祓いとかはできない。じゃあな、超常学園でも頑張れよ』
『翔太~!裏切り者~!』
最後に話した会話はこれだ。そう、僕は幽霊とかは見えるけど、お祓いなんてできない。だから色葉がいるんだよ・・・・・・。
「あ、手続きは済ませておいたからね」
「くっ・・・・・・!!」
「明日からは超常学園に行きなさい。制服、ハンガーに掛かってるからね。それじゃ、行ってきまーす♪」
母さんは、仕事に出掛けていった。今日は夜の勤務だ。階段を上って自分の部屋に入ると、
「ん、母殿は仕事に出掛けられたのか」
色葉に話し掛けられた。色葉は僕の家で暮らし初めてから随分喋り方が変わった。何故なんだ・・・・・・?
「それで、翔太は転校か」
お前の所為だ。
「名前は超常学園といったか」
なんでそんな事まで?
「翔太の友達も超常学園だそうだな」
「なんでそこまで知ってるんだよ・・・・・・」
「調べた。翔太の、身長や体重も」
「・・・・・・言ってみろ」
色葉は少し間を置いて、
「中野翔太(17)。身長は163cm、体重53kg。趣味は読書、得意な教科は国語、苦手な教科は化学。好きな女子はいない」
と言った。・・・・・・どうやって好きな女子の事調べたんだ。全く、これだから嫌なんだ、幽霊とかが見えるっていうのは。相手が面倒だ。
そんなこんなで翌日、火曜日。
超常学園は山の中にある。だからだろうか。
「ここ、どこだ?」
もう一度言うが、超常学園は山の中にある。学園の敷地面積はとても広い。だから、僕は職員室に行く道が分からない。
「しょ、職員室・・・・・・」
「見ろ翔太。あそこに保健室があるぞ」
「そっか。保健室にはたいてい先生がいるからね」
僕と色葉は、保健室に向かった。
中を覗くと、童顔で胸が大きい、先生(?)がいた。先生(?)が首を傾げて「どうしたの?」と言ったので聞きたかった事を聞いた。
「あの、僕転校してきたんですけど職員室ってどっちですか?」
「ふぁ・・・・・・えと、職員室はあっちです」
左を指す先生(?)。そこには・・・・・・、
「そっちは玄関ですけど・・・・・・」
玄関があった。
「ひゃ、ごめんなさぃぃ・・・・・・間違えましたぁ(泣)職員室は真っ直ぐだよぅ・・・・・・」
この人本当に先生なんだろうか。心配。
「あの、貴方は先生ですよね?」
聞いてしまった・・・・・・。
「ふぇ?はいそうですょ。私、星崎奈央です。奈央先生って呼んでください。皆呼んでくれてますよ~」
「奈央先生・・・・・・奈央先生ね。分かりました。あ、ありがとうございました」
きちんとお礼を言う。
「あら・・・・・・?後ろの子、悪魔よね?」
「そうですけど・・・・・・」
「悪魔の色葉だ」
「そう・・・・・・じゃあ、頑張ってね」
奈央先生と別れた。
『職員室』と札がついている。やっとついた。
「失礼します」
中に入ると、
「貴方が中野翔太君よね?私が二年のクラスを担当する山中よ」
山中先生がすぐに声をかけてくれた。
「案内するわね」
「ありがとうございます」
クラスは、渡り廊下を通って、階段を上った所にあった。
先生がドアを開け、言った。
「静かにしなさい!今日は転校生がいるのよ。みっともない所を見せてはいけません!」
先生がそう言うと、一瞬で五月蝿かったクラス内は静かになった。凄い人だ・・・・・・。
「中野君、入ってきて」
「は、はい」
やっぱり緊張するな。入ると、色葉も一緒に入ってきた。
「自己紹介をしてもらえるかしら。皆も、中野君が終わったら言ってもらいます」
「はい。・・・・・・中野翔太です。桜咲高校から転校してきました。幽霊が見えます。こっちは、悪魔の色葉です」
「色葉だ」
色葉は短く挨拶を済ませた。
「次。小野君から順番に」
「はーい。小野和樹です。幽霊に取り付かれました☆って、翔太ぁ!?」
驚いた表情の和樹。なんで今?
「気を取り直して、続き~!俺の後ろにいるのが幽霊の菜穂ちゃん~」
菜穂という名前の幽霊は、金髪でツインテールの髪型をしていた。
「この幽霊はツンデレか、小野」
「あ、色葉ちゃん~。多分ツンデレだよ」
つり目が印象的だ。睨んできたから。
「はい、次」
「このクラスの委員長の原泉です。魔女で、水を使う魔法です。あ、この猫はクオウよ。よろしく、翔太君。泉って呼んで、堅苦しいのは好きではないのよ」
「よろしく・・・・・・」
泉は、メガネをかけている。さらさらの髪の色は、茶色。切れ長の目。肩には、クオウがいる。トラ猫だ。
「次」
「安藤慶介です、ヨロシク~、翔太。慶介って呼んでよ」
「う、うん」
慶介は凄いフレンドリーな性格らしい。・・・・・・なんかドSな雰囲気が伝わってくるけど。
「はい、次」
「三神雅。・・・・・・雅でいいから」
「よ、宜しく」
「雅はムッツリスケベだぞ~!」
和樹からのいらない情報。雅は物静かで、クールな印象を受けた。
「次」
「神崎七穂です!ボクの事は七穂って呼んでねぇ☆よろしくぅ翔太っ」
「・・・・・・宜しく、七穂」
七穂は、制服を着くずしたショートカットの女の子。テンションが高い、元気な印象だ。
「翔太、ノリ悪い」
「悪かったね」
「次」
山中先生は早く終わらせたいのか、僕らの会話を遮った。
「南雲琴音です・・・・・・。翔太君、宜しくお願いします・・・・・・。琴音って呼んでください・・・・・・。」
「うん、よろしく」
琴音はとても大人しい、大人っぽい雰囲気の子だ。なんというか・・・・・・綺麗。“お嬢様”という言葉が浮かんだ。少したれ目の目、さらさらの髪、整えられた制服。隣には―――妖精?
「翔太、お前見惚れてただろ」
「ち、違―――」
け、決して見惚れていた訳ではない!・・・・・・ちょっと妖精が、ね。
「・・・・・・むぅ」
その妖精が僕の方に近づいてきて、言った。
「お前、ご主人様をあーゆー目で見ていただろ!」
「あーゆー目って何!?」
多分それは誤解だと思います。
「はい、次。早く」
次に席を立ったのは、
「・・・・・・アル、です」
「アル?」
アルという名前の人(?)。
(和樹。アル・・・・・・は人間か?)
(ぁ・・・・・・俺もよく分かんないけど、宇宙人らしい)
(宇宙人!?)
和樹と小声で話す。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・宇宙人って、・・・・・・えと、アレ?あの、宇宙人・・・・・・。
「あぁ、うん。宜しく」
「・・・・・・」
会話に困った時に、先生が言った。
「それじゃあ、中野君は小野君の隣の席で」
「あ、はい。分かりました」
和樹の隣の空いた席に座る。・・・・・・どうせなら泉か琴音の隣がよかったな。
「それじゃあ授業始めるわよ!数学の教科書・・・・・・」
授業が始まった。隣で色葉が大人しく聞いていた。
少しおかしな学校だけど、これなら上手くやっていけそうだな。そんな事を思いながら、授業を受けていた。
―――こうして、僕は普通じゃない日常の中に入っていった。