ゲーティア
「人間って、やってみないと分からない事ってあるのよ。」
作者はボヤいた。
小説を書いて8年。今年、念願の漫画を買った。600円を貯めるのに数年をかけました。そして、次の100円が貯まると作者は英文の小説を買うことにしたのでした。
大体、我々のペースで1年で稼げるのは100円くらいです。送料がかかる品物は買えないので、普通の商品では2年かかってしまいます。著作権切れの英文の電子書籍は丁度いい品物だったのでした。
初めはクロウリーや魔術の検索をしている時、『ゲーティア』の原文が電子書籍で売っていて、100円程度
で売ってるのを発見したことからでした。
ゲーティア。令和の若者にはゴエティアの方が馴染みがあるでしょうか。19世紀の魔術師が発掘し、再び世間に公表した悪魔召喚のテキストです。
発見者はメイザース。しかし、本として発表したのはクロウリーです。
その為、著作者もしくは訳者はクロウリーそされる場合が多いようです。
この話は『メレトゲン』と呼ばれる本の一部で、勝手ソロモン王が悪魔を使役したという話から始まっているのです。
『ゲーティア』は80年代のオカルト、漫画などのサブカルチャーで人気を博し、のちのゲーム業界にも影響を与えました。
この原本を押さえておく事は何を書くにしてもラノベを書く上では有益に働くと思われました。
ついでに、我々の話にもすでに魔術の話が登場していました。
1年で100円。3万字の短編を投稿して1円。
この原稿料をなんとかしたいと作者は考えました。
その為に行動を起こすのなら、良作を作り出すことしかありません。
が、それは誰にでも出来ることではありませんから、実力のない人間は横道に外れてしまうのです。
普通、こういった場合、不正を働こうとします。
人の良作を盗作して投稿するとか、
PVを不正に増やして宣伝するとか。
作者は最初、イラストを描こうとしました。そして、数日で無理なのが理解できると、魔術を使おうと考えるのでした。
ゲーティアで悪魔を呼ぶとか、そう言うのではありません。
そういう中二病的な考えは、学生時代、ミステリー・まがじん『みぃ・ムー』緊急発売の別冊『大魔術百科』の術式を見て秒で諦めてしまいました。
そこには鶏を〆るという残酷行為の他に、英語での長文の呪文を一字一句間違わずに詠唱することを求められたのです。
当時のパソコンも悪魔も、細かいところまで作者に要求し、間違うと言うことを許してはくれないのでした。
作者は考えました。
どんなに頑張っても100円しか稼げないなら、100円で買えるものの方を増やせばいいんじゃないだろうか。と。
それは、経済学としての間違いではありません。
円が高くなったり、安くなったりするのもそんな経済活動の為ですし、間違いではないと思います。
ただ、作者の場合、規模がささやかすぎると言うことでしょうか。
底辺生活も長くなると、どうにも嫌になるのでしょう。
公募の一次選考もなかなか努力だけでは入れませんし、こうなると、せめて、完結したら、読者にモーニングを、それがダメでも旨いコーヒーの一杯でも奢ってもらいたい。そう考えたのです。
それは、側から聞いていると切なくなるような、ささやかすぎる願いで悲しくもなるのですが、本人は嬉々としてそれに取り組んでいました。
作品で何か珍しいコーヒーの宣伝をしながら読者も興味を持ってくれたら、セールの時に少量で安価なお試しセットを出してくれるんじゃないか、とか、なんとか。
そんな活動の中、見つけたのが電子書籍版の『ゲーティア』でした。約100円。送料なしです。
本物の資料を読者にプレゼントをして貰ったような気分になれるし、読者に作品としてお返しができて、その上、著作権が切れているので、投稿できるのです。
作者はこれしかないと思い、まずは原資の100円を猛烈に貯めようと頑張りました。
そうして、手にした原資で本を買いにサイトに行きました。
初めの目的の漫画を買ったので、スムーズにサイトに行けました。そこで、普通のゲーティアを買えばよかったのに、おすすめのラインナップに『アブラメリンの書』が入っていた為に考えなしで作者はそれをクリックしたのでした。
それは浅はかと、言える行為だと思います。『ゲーティア』なら、何度か内容はオカルト雑誌などで触れたことがあるので理解しやすいですし、どうにもならなけれは、翻訳版も多数出版されています。
それに比べて『アブラメリンの書』は取り上げ方も少ないですし、内容も想像もつきませんでした。
とはいえ、これが本好きと言うものでしょう。
珍しいものを見つけたら、もう、買うしかないのです。
たかが100円。でも、1年を必死に余暇を費やして稼いだ100円です。
大人買いというには、心配になるような賭けを作者はしているように私には見えました。
地味に、あと一年、頑張れば、1杯分のコーヒーのパックは買えたかもしれません。それを、内容不明の英文の本に変えてしまったのです。
そして、変えた途端に他の作品にかまけて放置、それを自覚すると今度は収益に応募する作品を増加させて新しい話の枠を作り始めたのでした。
そして、いざ、書こうと真面目に『アブラメリンの書』を開いた時、学生時代の、作者の人生を駆け巡った英文書籍が意識の底から地獄の亡者の様に訴えたのでいた。
完読しようよ。とりあえず…




