ベデガー
ベデガーは19世紀で信頼のあったドイツの旅行雑誌のことです。メイザースは序文でこの名前と共にフランスのアルセナル図書館の説明を書いてます。
「なんだかさ、序文が長いよね。これ、読みとばしていいのかな?」
作者は面倒くさそうに私を見る。
「そうですね。まずは本文にいかれたらどうでしょう?」
私は強くそれを勧める。
「うーん。でも、なんだかこれを読むと、メイザースもこの『アブラメリンの書』に違和感があったみたいだよ。」
作者はそう言って、翻訳を始める。
「なんて書いてあるのでしょう?」
私は興味深くタブレットを見た。
「うーんとね。まず、この本は1700年代あたりの文体ではないかって書いてるよ。高卒といっても、さすがはマスターメイソンにまで上りつめたただけあるわね。」
作者は上から目線でそう言いながらダブレットをみている。
「はぁ?」
「なんか、英国の図書館とかでいろんな古書を読んだけれど、これはなんだか不思議だって書いてあるんだ。句読点とかが無いらしいよ。」
作者はそこで私をみた。
「温かいコーヒーが飲みたいわ。」
作者は私に甘えるように言いました。私は二つ返事でそれに答えます。なぜって、それは私とお話ししたいということですから。
温かいコーヒーと、今日はジンジャークッキーを用意しました。作者は美味しそうにそれを飲んで、そして食べた。
「それで、どうしたのでしょう?」
私は穏やかな気持ちで聞きました。こんな顔を作者がしている時はとても話したがっているのです。
「メイザースは案外、勉強家だと思った。文字も事もちゃんと考えていたわ。おかしいとは思っていたのよね。ただの低学歴で浮かれポンチではなかった。むしろ、私がぽんつくだって思ったよ。
はぁ。やっぱり、マスターメーソンに上りつめるくらいなんだから、頭はいいんだよね。」
作者はそう言いながら、自分の考えたメイザースの物語を話してくれた。気のいい、オカルト好きの彼を、私はなんだかほのぼのと聞いていました。
「ぽんつくでもいいじゃありませんか。なかなか楽しい考察だと思いますよ。」
私は真実、そう思いました。まるで童話のような、少し間抜けで優しい世界がそこにありました。あと、もう一つ、何かを工夫すれば、これはこれで冒険ものにできそうな気がしました。
「そう?ありがとう。とにかく、早く終わらせないとね。次は『ゲーティア』が待っているんだもん。」
作者は嬉しそうだった。
「そうですね。本当に、本文にいきましょうね。」
私は真実そう思った。作者は苦笑して、そこから、思い出したように話をした。
「うん。でも、その前に、一つ、気になることがあったんだよね。」
作者は少し考えるように真顔になる。
「なんでしょう?」
「メイザースは『アブラメリンの書』のフランス語版の写しに違和感を感じていたようなの。
字体もそうだけれど、読点がないとか書いてあるんだようね。」
作者は難しい顔になる。
「それが、どうしたのですか?」
私の答えに、作者は考えてから、困った顔でこう聞いた。
「読点がない古書で、思い出したのよ。『ヴォイニッチ手稿』これって、いつの本だっけ?」
作者の言葉が、新しい謎を呼び込みます。
ヴォイニッチ手稿 ポーランド系アメリカ人のウィルフィリッド・ヴォイニッチが見つけた古本で、解読不能と言われています。
「この本は、近年、炭素年代測定により、15世紀初めの方で作られたという説が有力のようですね?」
私は少しロマンティックな気持ちになる。さあ、この事実でどんなフィクションを作り出すのでしょうか?
「そうよね。はぁ。関係はないけれど、なんだか気になるわよね。まあ、序文は少しずつ読みながら先に進もう。」
作者は元気にページをクリックした。




