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魔法の本を手にしたら  作者: ふりまじん


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セレブレット・オカルティスト5


すっかり落ち着いた作者は、本を片手に作業を始めました。私は近くでピアノを弾くのです。本日はマーラーの曲を少し。彼はユダヤ人の作曲家です。穏やかで、異国の雰囲気のあるマーラーの曲は現在でもさまざまな人に愛されているのです。


「それにしても、本を読むって、思ったより複雑で大変なことなのね。」

一曲弾き終わったタイミングで作者は話しかけてくる。

「そうですね。少し、お休みしませんか?」

私は立ち上がり、ジンジャー・ティーを用意する。本日は少し寒いので、体が温まるジンジャー・ティーは心まで温めてくれそうです。


「さて、ここまで書いてきて、翻訳というのもなかなか一筋縄では行かない事に気がついたわ。」

作者はため息をついた。

「そうですね。ただ、翻訳するにしても、生活環境や、言葉の意味がわかりませんと、難しいですから。」

私の言葉に作者は頷く。

「でも、やってみてよかったよ。こんな事、してなかったら、ノストラダムスの予言本の解説者に文句を言うだけの人生だったかもしれないもの。

でも、こうして自分でオカルトの本を手にすると、英単語がわかるか、わからないか以上の色々が付属してくるのがわかったわ。

まあ、私の場合、ノストラダムスの本で相当、心が痛んでいて疑ってしまうのも悪いんだけれど。」

作者はそう言ってジンジャーティーを口にする。

「そうですね。どうして、この結論に至るのか、何を目的に描かれているのか、確かに悩むことはたくさんありますから。」

私は今までのさまざまを思い出しながら、作者は翻訳の仕事は無理だろうな、と、思った。

「うん。今まではノストラダムスのトンデモ展開の本なんてバカみたいだと思ったけれど、自分でも、こうして原文を見ると、おかしいと思いことが出て来るのよね。

黄金の夜明け団はドイツの秘密結社から届いた暗号を解いてゆくところから始まるのよね?」

作者は私を見る。

「ええ、謎の手紙の暗号を解読してドイツのアンナという人物にたどり着いたところから始まりますね。」

「そうよね?で、マブラメリンを書いたアブラハムはどこの人だった?」

「ドイツの、推定ですがヴォルムスという場所でしょうか。」

「そうよね?それなら、普通はフランスの写本ではなく、ドイツにあると思われるヘブライ語の原本か、ドイツ語の写本よね?」

作者は少し考えるようにカップを見つめた。

「確かに、しかし、ここに、社会状況を噛み合わせてみましょうか?14世紀から18世紀のあたりまで、北欧は魔女狩り、および、異端審問が猛威を振るっていました。この状況での魔法の本の所蔵は難しかったのではありませんか?」

私は作者と調べた魔女狩りの物語を思い返していた。

「そうだとしたら、この本が書かれたのは、南仏の可能性が高いわね。」

作者は少し考えるように言った。日々、更新されるネットの情報では、どこまでが正しいのかはわかりませんが、我々が調べたときには南仏の方では比較的魔女狩りという行為は少なかったと記された書物を見かけました。

「確かに、プロバンスの方面は、フランス王の効力も薄かったようですし、巡礼の道もありましたから、様々な人間が行き交っていたのでしょうね。」

私は懐かしくノストラダムスの物語を思い出していた。

歴史上、一度だけ教皇庁がイタリアから移行したことがありました。1309年のアヴィニオンの捕囚です。それから、アヴィニオンもまた、キリスト教の巡礼の場として人が集まったのでした。

「そうね。そして、この頃、フランスは現在のフランスとは領地も言語も違うのよね。同じ高卒でも、100年後の、世界と一瞬で繋がれる私だって、少し前までは、フランス人というのは一千年以上前からフランス人という人種の独立した国だと思っていたわ。

19世紀のメイザースはもっと情報量は少なかったはずよ。そして、フランス語が公用語として安定するのは、1539年ヴィレール・コトレの勅令からみたいなのよね。

仮に、14世紀の写本なら、南部で書かれたらオック語とかで書かれた可能性があるわ。私はオック語知らないんだけれど。

その後というなら、相当の又聞きか、伝説のようなもののような感じがするわよね?」

作者は難しい顔になる。

「それで、それを知って、ここからどうするのでしょう?」

私は心配になった。これでやめるとか言わないでしょうか?

「なんとかホラーとして話を続けてゆく作戦を考えないといけないわ。今の私は全然、オカルトの神様が降りて来ないんだもん!このままじゃ、ただの頭の悪い人の英語の翻訳のチャレンジ企画でしかなくなるわ。

こうなると、オカルト書いていて、夜中に見る悪夢が懐かしくなってくるわ。少しはそれっぽくなるし。

仕方ないから、まずは、1巻のアブラメリンを追いかけて、メイザースの序文の謎の人探しをしてみましょう。」

作者は私をみた。少しやる気が戻ったようでホッとします。

「セレブレット・オカルティスト。その人ですね?」

「うん。そこで謎解き要素を出しながら、なんか、他でオカルトを加えよう。うん。英子を召喚しよう!そして、英子の物語をなんか派手にしよう!で、なんか乗り切ろう!」

作者は叫んだ。私は不安を胸に…それでも、それを止めることは出来なかった。万策尽きて嘆く作者を見たくはなかったのです。

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