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魔法の本を手にしたら  作者: ふりまじん


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セレブレット・オカルティスト4


「それでは、私もお話してもいいでしょうか?」

私の声に作者は頷いた。私は話を始めた。


「貴女は悪魔召喚をボアやブーランがやらない事が気なっているようですが、貴女も異世界のテンプレをあれだけ研究して、設定やあらすじを作れそうなのにどうして書かないのですか?」

私は静かに作者に聞いた。作者は不機嫌そうに私を見る。

「だって、あれはそう簡単じゃないんだもん。私は、どうせ、普通に英文の翻訳とか、本の感想すら書けない人間ですよ。」

作者は少し感情的に叫ぶ。

「そうですよね?どんなに分かりやすいテキストがあってもバズる作品を作るのは至難のわざです。それは悪魔召喚でもそうなのではありませんか?ブーランがどのように悪魔を召喚していたとしても、それとアブラメリンの悪魔召喚で悪魔が呼べるかは違うかもしれないじゃないですか。

何かを作り出したり、召喚するのは熱量がいるのです。そして、たとえ、熟練した上位ランカーだからといって、いつも上位に言われるとは限らないのがWEB小説じゃないですか。

ボアたちは、自分たちに合わないから、ただ、メイザースが最適だったから、アブラメリンの書を託したのであないでしょうか?」

ああ、悪もの召喚なんて、私には知ったことではありません。私はただ、作者はこうして、迷い続けることが心配なのです。

それを聞いて、作者は少し寂しそうに天井を見て、泣きそうな顔でため息をつく。


え、(O_O) 言い過ぎましたか?


私は途端に不安になった。我儘、内弁慶の作者が泣きそうになるなんて、今までなかったことでした。

ああ、どうしましょう?血糖値など気にせずに、もう少し、甘いものをお出ししておけばよかったのでしょうか?


作者は何も言わずにしばらく天井を見つめ、そして、深いため息をひとつつきながら、頭を垂れた。

「すいません。私、言いすぎましたか?」

私は思わず作者の前にひざまづいた。そして、作者と目線を合わせようとした。作者は項垂れたまま私を見てはくれません。初めての事に混乱した。

作者は何も言わず、私に反応を示しませんでしたが、しばらくすると、ゆっくりと顔をあげて私を見た。

私はその悲痛な顔に、何やら不穏な気持ちが込み上げてきました。作者は私を見つめて、それから、ゆっくりと絶望を顔全体に滲ませながらこう聞いた。

「ねえ、時影、私、この作品を何のジャンルで投稿したっけ?」

作者の表情のない顔に、私は恐怖というものを感じながらこう答えた。

「ホラーです。」

この短い言葉がとても長く、感じた。

「そうね。ホラーよね。間違いなく。」

と、作者は悲鳴のように叫んで、そこから、また、俯くと、観念したように私を見て言った。

「時影、どうしよう?ちっとも怖い展開になってないよっ(;ω;)」




「とにかく、落ち着きましょう。」

私は甘い香りの緑茶を入れた。作者は難しい顔で何もかもを観念したように話し始めた。

「落ち着いてるわ。むしろ、落ち着くすぎてるぐらいよっ。オカルトの本を読んでいるのよ。私!

しかも、あの、有名なマグレガー・メイザースの『アブラメリンの書』を原文で読んでいるのよ!

なのに、何も起こらないって何?

あああ、普通、こういうのを読んでいると、怪しい虫が湧いてきたり。」

「現在、冬ですから。」

「触ってもないのに本の山が崩れたり。」

「大掃除で片付けましたよね?」

押し入れに押し込んだを、掃除というのであれば。

「悪い夢を見たりするの。」

作者は渋い顔をする。

「それは、多感な少女時代のことではありませんか。それに、そんな現象が起きなくても、十分にアブラメリンの書で上質なオカルトの話になるはずです。」

私はキッパリと言った。そう、変な超常現象などに頼る必要はないのです。作者はそんな私を一瞥して視線を泳がせる。

「どうなのかしらね?私、紙の本しか読まなかったから、電子の本だからかな?昔、易学にハマっていたクラスメートがいてさ、そいつと話した事があるんだけれど、私、タロットカードとかトランプ占いは理解できたけれど、易は何度読んでも理解できないって言ったら、易学は陽の気が湧いているから女性は合わない人がいるって言われたんだ。女性は隠の気が満ちているから水と相性のいい紙を使うタロットカードが合うんだって。やはり、紙の本じゃないから、何も起こらないのかな?」

作者はナチュラルに怪しいことをさらりと話した。いけません。ここが限界な気がします。

私はそれに答えずにまずは作者にチョコレートを渡した。

「食べてください。血糖値を上げるべきだと思います。そして、緑茶を飲んで深呼吸をしてください。」



作者は、チョコレートを口に入れ、そして、お茶を揉み干すと、私を見て苦笑した。

「心配しないで大丈夫よ。でも、心配してくれるなら、まず、著者のアブラハムはいつの話を書いていたのか教えてくれる?」

「1397年に旅をしていた、14世紀後半から15世紀の前半の話でしょうか。」

「そうね、じゃあ、当時のエジプトの王は誰?」

「バルクークと呼ばれるスルターンですね。」

私の言葉に作者は苦笑した。

「そう、この時期までに既にエジプトは、ローマ、ギリシア、マケドニアなんかの人が移住していて、既に古代エジプトの魔術なんてなかったと思うわ。」

作者は私を見る。

「確かに、そうかもしれませんね。」

私は肩をすくめる。どのような形にしても、メイザースが夢見たようなイシスやオリシスの登場するような魔術は14世紀にあるとは思えませんでした。

「うん。で、エジプトと魔術で14世紀というと、別のものを思い出さない?」

作者の言葉に、14世紀の歴史を調べた思い出が湧いてきました。

「ジプシーですね。」

「うん。何だか、差別用語とかも言われるけれど、今回は語源があるから使うわ。ウィキペディアによると、1419年、エジプト出身の貴族がサボイア公の保護状を持って現れた。と書いてあったわ。

私は、ジプシーの語源はこの時、エジプトの貴族を名乗り、エジプシーから、ジプシーになったって聞いたわ。でも、これは正しいとも言えないみたいだけれどね。

まあ、ともかく、この時代でエジプトが出てくるなら、この一段を疑う方が正しいと思うの。」

作者はすっかり落ち着いて話していた。

「そうですね。確かに、ドイツ人のユダヤ系のアブラハムという人物がヘブライ語で書いたものをフランス語に写本したものというよりも、1419年前後で、フランスの領主か誰かが、彷徨える何者かの話を口語文で書き記したもの。という方が、すっきりしますね。」

私はすっかり落ち着いた作者に安心し、そして、ここからこの話をどう導きべきか、考えていた。

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