セレブレット・オカルティスト
「著名なオカルティストの事を、セレブレット・オカルティストっていうらしいわ。何だか結婚式みたいね。」
作者は皮肉ぎみにそう言った。
「では、私は貴女をセレブレティな気持ちにしましょうか。」
そう言って私は耐熱ガラスにお茶の塊を投げ込みました。工芸茶と呼ばれるものです。花開く頃には花やっかなジャスミンの香りが部屋を包みます。
「ほんと、素敵ね。イケメンに入れてもらうジャスミン茶。確かにセレブな気分よね。でも、アブラメリンのセレブレットは謎の香を振り撒いているわよ。
私、というか、昭和のオカルト好きでアブラメリンを知っている人は沢山いると思うけれど、ボアとかセレブレットの話までは知らない人は沢山いるんじゃないかしら。」
作者はジャスミン茶を見つめながらため息をつく。
「そうですね。日本語でも、英語の検索でもジュール・ボアはあまり出てきませんから。アブラメリンはゲームからアニメで溢れていて、こちらも検索は難しいですし。」
そうです。漫画やアニメの特異な設定ももっともらしい記事が作られていて、ネットの検索に慣れていない我々のような人間は、間違って事実と混同してしまいそうです。
「そうね。本当に。でも、若い世代でもアブラメリンに関心がある人間が多いって事だから、頑張れば、何かをもらえる可能性はあるわ。」
作者は私に苦笑する。
「何が、もらえるのでしょうね。」
大きな期待が萎んだ時の作者を思うと少し悲しくもあるのです。そして、3万字1円ネタを歌って踊って、駄々をこねた数日を思うと鬱陶しくも思うのです。
「うまくすれば、真実がもらえると思うわ。何もWEB小説は金だけが報酬とは限らないわ。いい?ネットで稼いだお金はね、リアルで稼いだ金とは違う付加価値があるのよ。」
ほーら、始まった。金鉱の試掘に怪しげな法則。そんなものが沢山積まれてゆくのです。
「付加価値。ですか。」
私は困り顔の笑顔で作者を流してみた。
「そうよ。いい?確かに、WEB小説で金を稼ぐのは大変よ。500円に3年かけたもの。私。辛かったし、悲しくなる事もあったけれど、大変だからこそ、その500円には閲覧者って付加価値がついてるのよ。」
作者は少し自慢げに私を見る。
「閲覧者という付加価値?ですか?」
「そうよ!仮に私が500円を手にするために3年、数万PV、数百のユニークを集めなければいけないとするじゃない?」
「はあ。」
「言い換えれば、私が小説で稼いだ500円は数百のユニークがついている500円なのよ。この500円、普通のお店で本を買っても500円の価値しかないけれど、これが小説と同じジャンルの動画の配信者への投げ銭だったら、配信者の見る価値は普通の500円とは違うのではないかしら?」
作者はドヤ顔で私を見つめる。
「そうですね。歴史、知識系の動画の方にこちらの名前で投げ銭したら、それは、一時は沸くかもしれませんが、動画の配信者の方が絶大な人気がある人の場合、汚いWEB作家の売名行為と言われるかもしれません。」
私はため息をつく。まあ、作者は新たな探偵ものでも考えているのでしょう。明智小五郎ものも考えているのですから。でも、今は、アブラメリンに集中していただきたい!
「ば、売名…」
「感想欄で批判されたら、コメント書けますか?」
ふふ、感想欄が出たらこの話はこれで終わりです。
「そうね。怖いわ。売名なんて。私は、ちょっぴり、面倒な調べ物を安く解決して欲しかっただけなのに。」
作者は悲しそうに窓を見る。いけません。このままでは、執筆意欲がなくなってしまいます。
そうしたら、私はまた、作者に放置されてしまう。でも、血糖値が気になり出した作者に甘いものばかり食べさせるわけにもいきません。
どうしましょう?




