ファーストブック
なんだかんだと揉めながらも、我々はアブラメリンの書を読み始めていました。
メイザースは、この本を本当に大切にしていたのだと思います。目次にあらすじを付けるくらいなのですから。
私の作者はそれほど、この本に思い入れがある訳でもなさそうでした。が、それでも、この本を調べながらさまざまな物語を乱造するくらいには思い入れがあるようでした。
現在、この作者の頭の中で動いているのは
20世紀末の英子の物語
19世紀末のメイザースの物語
アブラメリンと著者のアブラハムの物語
アブラメリンの物語を偽造する男の物語
昔、考えたジャンヌダルクの物語
まあ、主だったところでこれが回っているのです。
英語が苦手だったのは、何だか良きわかる気がします。
「何を書いているのよ?」
と作者は私を見るので、箇条書きのメモを作者に見せた。
「すごいわね。こうして視覚化すると、何だか話が終わらなそうな気持ちになるわ。」
作者は渋い顔になる。
「そうですね。普通に読んで少し話を進めませんか?」
私は提案した。メイザースが騙されようがそうでなかろうが、そんなことは現在、我々には関係ないのです。
「それが出来たら、私も苦労はしないわよ。でも、そうよね。私、一体、何してるんだろう?何だか悲しくなるわ。考えれば、外国語の教科書って、書き方よりも、物語の方ばかり考えていた気がするんだもの。
でもさ、本って、動詞や現在進行形かどうかを知ることではないと思うのよ。本を理解するって、もっと、内容の話だと思うのよ。
この本は誰が、何のために書いたものかがわからないと、それは本を読んだ事にならない気がするの。」
真顔の作者を私は切なく見つめました。
「そうですね。中学の英語の教科書も、英文を作成する為に書かれた本だと理解来て、貴女がそう行動していれば、今頃、もう少し、英語を読めるようになっていたかもしれません。」
私は英語の教科書を手にキャシーの恋模様を得意げに解説する中学生の作者を思い出していた。作文の才能は昔からわりとあったとは思えるのが残念です。
「痛いところをつくわね。もう。わかったわよ。そうよね。この本は、メイザースが魔術を極めたい人の為に英文にした本なのよね。多分、ロンドンのドーンの仲間とかに向けて翻訳したのよね。
そこに、ジャンヌダルクも、英子も登場はしないのよね!!
わかってるわ。仕方ないな。まあ、とりあえず、1巻まで話を飛ばそうか。
このアブラメリンの書は2部の構成になっているの。
なんか、昔の本は、一冊を複数の人が読めるように分けられていたって聞いたけれど、ファースト、セカンドブックで分けているのはそのせいかしらね。
第一巻は、アブラハムの物語のようなの。まあ、普通に物語として読めそうだから、これで頑張ってみようかな。」
作者は諦めたようにそう呟いた。
「そうです。そのイキですよ。まずは第一巻を紐解きましょう。」
私は作者の気持ちが変わらないうちにページを進めた。




