チャプター
作者は本を見つめていたが、少しして私を見た。
「本当に面白いわね。私、文字が読めないと本なんて読めないんだと思ったわ。」
「それが普通ではないのでしょうか?」
「そう思うでしょ?でも、読むって、文字をそのまま読むだけではないのね。例えば、この章ごとの解説。
一章、一章に細かい説明を書いてあるんだけれど、見てよ。あとの方は大して書いてないのよ。
なんか、原稿を書き終わって、最後の解説に力が入ってるメイザースが見えるようじゃない?そこから、急かされて慌てて短くまとめる様子も。」
作者は嬉しそうに笑った。
「確かに、初めの方が説明が多いみたいですね。」
私も本を見た。確かに、長い文章があとの方では短くはなっています。
「そうでしょ?なんか、文字が読めないと、今まで観察してなかった事が見えてくるのね。
そして、何度も日本語訳を見ていると、なんだか英語が読めてる気がするのよ!!」
作者は嬉しそうです。私はこんな可愛らしい作者の笑顔が大好きなのです。
「よかったですね。」
思わず、抱きしめたくなるなんて、それを言ったら嫌われるのでしょうね。言えません。
「うん!なんかね、少女時代に読んだファンタジーを思い出すの。ほら、村娘として育てられたお姫様が古代文字を読めたりするやつ。あれ、どんな感じなのかって思っていたけれど、今、それを実感してる感じなのっ。」
作者は嬉しそうです。
「ふふ。そのような物語がありましたね。」
ああ、そういった、可愛らしい物語を、私も作者と考えたいのです。少年と姫、宝物と悪者。そして、恋。
なんで、この様な冴えない話を解説する事になるのでしょうか。
「どうしたの?」
作者が聞いていました。
「いいえ。なんでも…」私はそういって、それから、思い切って聞いてみました。「お姫様の登場するファンタジーを書いてみたいと思わないのですか?」
私の質問に作者はあからさまに嫌な顔になる。
「は、ははは。書いてるよ。可愛い、剛がTSしたお姫様のお話。」
作者は暗い顔で天井を見た。いけません。他の連載のことなんて考えさせたら、また、私は置いてゆかれてしまいます。
「ええと。コーヒーのおかわりはいかがですか?」
「そうね、わかるわよ。こんな魔術の本を書いても人気にはなりそうもないもんね。でも、それは素人考えよ。ほら、見てよ。この長ーい解説コメントの章。アブラメリンとアブラハムのお話なんだよ。
これ、何か面白そうだと思うんだ。そして、メイザースとクロウリーはこの本に何かを感じて夢中になったんだよね?何か面白い話ができるかもしれないわ。」
作者はそい売って笑った。
「そうですね。では、そろそろ、次を読みましょうか。」
私は作者にそういった。




