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魔法の本を手にしたら  作者: ふりまじん


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アルセナル


「とりあえず、この本は何かを考えるのにはいい本だと思うわ。そして、ここで英子を考えられて良かったわ。例え、この本がインチキだとしても、インチキの上で価値があるってことだもん。」

作者は私に言った。

「インチキと決めるのも、どうかと思いますけれど。」

私の答えに作者は方をすくめた。

「だって、どう考えてもおかしいじゃない。フランス語の写本なんて。二人で色々調べたでしょ?15世紀あたりなら写本に使う言語はラテン語じゃない。ノストラダムスの話を調べて、あの予言書がフランス語って、当時はわりと攻めてる感じだったじゃない。」

作者は渋い顔をする。

そう、メイザースの翻訳したアブラメリンの書はヘブライ語の原文をフランス語に翻訳したものらしいのです。

「確かに、15世紀以降の写本かもしれませんが、それでインチキと決めつけるのもおかしいと思います。」

私の言葉に作者は疑わしそうに私をみた。

「そうね、メイザースを騙すために作ったかどうかは分からないわ。でも、この設定なら、インチキを疑うのは仕方ないでしょ?まずはメイザースを騙す方向で考えてみるわ。」

作者はそう言って紅茶を作り始めた。


「メイザースを騙す?それは誰がするのでしょうか?」

私はティーポットを作者から奪った。ティーバックは手軽に作れる紅茶ですが、丁寧に入れたら香も味も抜群に変わるのです。セイロンはそれでなくても繊細な茶葉なのですから沸騰したお湯を使ってカップも厚みのない繊細なカップを温めて入れなくては。

「知らないわ。金儲けを企む奴らよ。なにしろ、メイザースは秘密結社の首領なんだもの。古書を偽造して騙して高く打ったに違いないわ。」

作者は自分で言って納得していた。

私は砂時計をセットしながら作者を見た。

「彼は貧しかったみたいですよ。確かにパトロンはいたようですけれど。」

私は音もなく流れる白い砂を見つめた。私は、あと、どれくらい作者とこうして話していられるのでしょう?この砂のように、貴女との時間が流れてゆきます。

「別に、メイザースが貧乏でも、彼なら欲しいって駄々こねたら課金してくれる人がいると思うわ。別に、自分のものじゃなくても、借りて読めばいいんだもん。それとも、書籍化でお金を巻き上げようとしたとか?」

作者はそう言って、自費出版の平成のトラブルの話を始めた。

「それはどうでしょう?出版に携わったワトキンスはその後も出版社として様々な本を扱っていますし、彼の初めての仕事ですから失敗はしたくなっかったはずですよ?

それに、この本はアルセナル図書館所蔵の本ですから、メイザースを騙す必要はありません。」

私の言葉に作者は肩をすくめた。

「ああ、そうね。これ、図書館の本なのか。ああ。メイザースも貧乏だったのね。」

作者は自分と重ねるように深くため息をついた。図書館は高い本や珍しい本を誰でも無償で閲覧できます。

古書は高いですし、フランスという異国でメイザースも節約は必要だったのでしょう。

図書館にいれば雨風は凌げますし、そこそこ暖かいですし、安上がりな娯楽ともいえます。

「そうですね。それに自分で所蔵は手間がかかりますし、ね。」

私の言葉に作者は渋い顔になる。

「うん。私もそろそろ、怪しいオカルト本をなんとかしたいわ。自分で処分しないとなぁ。あれは」

作者はため息をついた。

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