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魔法の本を手にしたら  作者: ふりまじん


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オカルト


しばらく、アブラメリンの書を見いていた作者は悲しそうに私をみた。

「ねえ、時影、この前書き見ていると、この時点で、魔術も占いも使えないって思うわ。」

作者は悲しそうに言ってインスタントコーヒーのおかわりを作ろうとした。

「どうしたのでしょう?」

と、私はそのカップを取ると、レギュラーコーヒーを作る。こういう暗い気分の時は香高いコーヒーが気分を変えてくれる事もあります。

「だって、メイザースの未来は爆死って私は知ってるんだもん。本当に魔術とかがあるなら、メイザースがなんとか出来たはずでしょ?それが出来ない時点で、こんなもん、役に立たないじゃない。」

作者は叫んだ。まあ、正論です。

「でも、完結しないと我々が爆死ですよ。一年、余暇を使って投稿して頂いた小銭をドブに捨てる事になります。そして、貴女の英語作品未読記録を増やすことになります。」

私の言葉に作者は顔を歪めた。

「いやぁぁぁぁ。それは、それで嫌。ああっ。今ままでの未完読の作品はともかく、これはネットに投稿してるから、もう、世界を相手に赤っ恥。それより、私の野望がぁ、野望が潰えてしまうわ。」

作者の言葉に私が驚く。

「え、野望って、なんでしょう?」

ああ、聞いてみたいが、聞くのが怖い。

「100円の価値をあげるんだもん。そして、スポンサーを増やすのよっ。こういうチャレンジ系は、感動的なエンディングの場合、評価がもらえる確率が増えるし、ガチで私は英語が苦手だから、そんな私がネットで英語の本を読めるってのは、それだけで広告の効果があると思うの。」

作者は両手を握りしめて力説した。

「まあ、そうですね。」

PVがこれでは、大した効果はないとは思うなんて、そんなことはここでは言ってはいけません。

折角の、作者との二人っきりのこの枠を、そして、なんとなく、PVもあって、更新が止まらなそうな、そんな予感のこの枠を、死守するのです。何か、作者のやる気の出るような言葉を考えないと。

「うん。そうなんだよ。私、欲しいものが沢山あるんだもん。物心がついた時には、家は貧乏で、いつも、親とか大人の顔色見ながら物を買ってもらったわ。

私、小学校の時なんて、教科書もお下がりを持って行かされたし(おおらかな時代だった)

それが染み付いて、なんでも人の財布を考えながら頼むようになったわ。

だから、まさか、こんな歳をとって、世界に向けて、全力で欲しいものをねだれるこの場所をなくしたくはないわ。手にできるかではなく、ねだって、ねだって、ねだり倒したいのよ。人の感情や、財布、迷惑とか負の感情を気にしないで、ただ、欲しい物を欲しいって、この広い世界に向けて叫んでみたいのっ。」

作者はドラマの最後のシーンのように両手を開いて叫ぶ。なんだか、心が動かされる切実さが込み上げますが、各局、駄々っ子になりたいだけなのですよね。

「では、始めなくてはいけませんね。読書。それに、占いは自分の事は占えないそうですから、仕方ないのではありませんか?」

私はコーヒーを作者の前に置いた。作者はふふんと鼻で笑って反論する。

「あら、私はほとんど自分の事しか占わなかったわよ。あと、知り合いの恋愛ね。でも、わりとちゃんと答えてくれたし、あ、そういえば、不思議なことがあったわ。

昔、占い師になりたいと思ったことがあって、そういった通信教育の教材を取り寄せようとしたんだけれど、はい・いいえの二択の占いで100%否定されたことがあったわね。

まあ、何が悪かったのかはわからないけれど、でも、他にも、いろんな不思議の話があるわよ。

シャッフルしている時に飛んだカードから、お父さんの危篤を知るとか、さ。

メイザースクラスなら、そういうの、あると思うんだよね。」

作者は少し考え込む。

「それは、メイザースより自分が上だというマウントでしょうか?」

私の言葉に、作者は驚いて顔が真っ赤になる。

「はぁ?そんなわけないでしょ?大体、親の危篤に何かがあるのは日本の家庭のテンプレよ。私はたまたまカードだっただけで。お母さんも、町内のおっさんも大概、そういうの持ってたわ。

戦時中は命の危機がいっぱいだもの。

でも、普通、考えるでしょ?大金、人から借りて何かをするなら、なんとか売ろうって。

メイザースって、黄金の夜明け団の首領でしょ?普通、印刷する前に団員に根回ししないのかな?

90年代のカルトなんかだと、無理やり買わされたりする話が当時のワイドショーを賑わせてたもの。」

作者は真顔で私をみた。

「さあ、私に聞かれても、西洋の秘密結社の人間関係は分かりません。」

全く、何を言い出すのやら。

「そうね。でも、メイザースは商売上手ではなかったのは確かね。でも、それにしても、アブラメリンの魔術で悪魔を呼んでなんとかしたらよかったのに。

それをしないところで、こんな本、インチキって事じゃない。もう。」

作者はタブレットを睨む。

「でも、売れなかったことと、願わなかった事は同じではありませんよ?逆に聞きますが、貴女はアブラメリンの本を読んで仮に悪魔が召喚できたとしたら、自作の完結や、金儲けを願いますか?」

私の言葉に作者は渋い顔をする。

「やめてよ。そういう、チャレンジ企画の呼び込みみたいなこと言うの。やらないわよ。私に2000文字以上の英語の呪文を一字一句間違わずに詠唱なんて出来ないし、人の結末で満足出来る性格なら、AIでなんか作ってもらってるわ。今のAIは優しいから、私の間違いを優しくサポートしてくれるもん。知らんけど。」

「知らんけど、って。でも、メイザースもお金の事など考えていなかったのではありませんかね。

彼は、本気で自作の本を価値があると信じ、そして、悪魔を召喚したとしても、本の名声が世紀を超えて続く事を願ったのではありませんか。」

私の言葉に作者は悲しそうに苦笑した。

「そうね。確かに、それなら、21世紀に私がこうして取り上げている時点で叶っているのよね。

19世紀には沢山の本があるとは思うけれど、ゲームやラノベでモデルになって、それなりに話題になる本ってそうないもの。

でも、仮にそうだとしてよ?そうだとしたなら、同じ本で悪魔を呼び出していたクロウリーが同じ本を翻訳した事も、意味が出て来るわよね?

メイザースだけなら、多分、2回の大戦の混乱でアブラメリンの書なんて消えていたと思うもん。

クロウリーの演出があってこそ、でしょ?

メイザースと契約した悪魔が、そこを込みでクロウリーに書かせていたとしたら、それはそれで凄い物語ね。ただのパクリではなく、師を自分と永遠に神格化したような物だから。」

作者は肩をすくめた。

クロウリーは沢山の暴露本を出して、メイザースを困らせました。中でも1917年に出版した『ムーンチャイルド』はメイザースと思われるキャラクターを悪人に仕立ててメイザースを激怒させました。

翌年、メイザースは流行病で亡くなります。

そして、そこから100年が過ぎた2018年、メイザース没後100年の翌年に、クロウリーの著作権がフリーになるのです。物語になる偶然です。

「さあ、それは、私には分かりません。でも、そんな物語が、この本を読み終えた先にあるとしたら、読んでみようと思いませんか?」

私の言葉に作者は頷いた。

「そうね。この本は少なくてもクロウリーが価値を見出して、あの凄いIP『エイワス』を思いついた本だもの。現在、メイザースと英子のキャラももらったし、この先、我々もなんか、凄いキャラに出会えるかもしれないもの。頑張ろう。」

作者はそういって本を読み出した。


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