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魔法の本を手にしたら  作者: ふりまじん


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テーブルオブコンテンツ・オブザイントゥルダクション


「テーブルオブザコンテンツ・オブザイントゥルダクション…日本だと『前書き』って感じよね。

英語って長いし、オブ・ザ が多いわよね。」

作者はため息をついた。

「まあ、言語が違えば色々ありますから。英語圏の方から見れば、漢字・カタカナ・ひらがな・ローマ字・英語・絵文字・その他の言語を扱う我々の方が面倒に見えると思いますし。」

私は本を見つめる作者を励ますように言った。

そう、前書きなのです。まだ。前書き。本文には至りません。もう少し、スピードを上げる必要を感じるのです。しかし、作者は本文を見つめながらまた、何やら考え始め、調べ始めました。


「ねえ、時影、あなたの英子の話、わりといける気がしてきたわよ。」

作者は真顔で私を見る。

「それは良かった。さあ、翻訳してみましょう。」

私はそれを無視して先を急ごうとした。が、作者はしつこく英子の亡霊にしがみつく。

「いや、マジで。この話って、日本の高度成長期からバブルの世紀末の話であって、メイザースの人生、19世紀の英国の話を筋にしてるから、外国人にも受け入れやすいし、考察勢にも活躍の場があるし、コミックの原作ならいけると思うのよ。」

作者は私を責めるようにいう。

「そう言う事は、まずはこの本を読んでからにしませんか?」

「この本を読むのにも必要よ。英子。この本を読者が興味を持ち続けるように翻訳するにはね。」

作者は何かを考えるような難しい顔になる。

「十分、メイザースの翻訳本と言うだけで興味はイケてると思いますが。」

私は心配になる。ここからバブル期の占い師の話を書いている暇があるとは思えません。

「いいえ!これは大学でのオカルトの専門家が既に日本に翻訳本を出版してるし、私なんかよりこの世界に詳しい読者もたくさんいるはずよ。

普通に翻訳しても面白くはならないわ。そして、誰もメイザースの物語で爆裂人気をとってないと思うの。」

作者は企むように笑った。

「十分、人気ですよ。ネットで調べるとイケメンのイラストと物語がたくさん出てきますから。」

私はうんざりしながら言う。本当に、メイザースとクロウリーを調べるのは、サブカルの情報を慎重に取り除かないと失敗します。

初めの頃、フィクションのメイザースとクロウリーの物語を本気にして数ヶ月混乱したことを思い出しました。まあ、それはそれで楽しい思い出になってしまいましたが。

「そうね。でも、本当のメイザースの時代の雰囲気を醸すものではなかったわ。

少なくとも、私はあなたの英子の話でそう思ったもの。ついでに、オリジナルとしても面白いわ。

調べたの。英子が占い師として独立する1988年。その前の年よ。NTT株の上場で一般人にも投資の波が襲うのよ。予想外の波を感知するのが得意な占いという分野は輝いた時代よね?

それが1987年なのよ。すごいわね。まるでうまく設定したような話だわ。株の投資で当時のブラックマンデーとかを切りぬけて行けたとしたら、英子は本当にセレブにパトロンになってもらって外国に行ったりできたかもしれないわね。」

作者は夢見るように天井を見ました。

「確かにそんな話は面白いとは思いますが、今から我々が書き始めるのは無理があります。

それに、案だけでは著作権になりませんから、誰かにパクられてもどうんもなりませんよ。」

私は少し脅すように言った。が、作者は悠々と言い返す。

「丸パクリなんてしたら、メイザースに呪われるわよ。まあ、それはそれで見てみたい気もするけれど。」

作者は達観したように言う。


そう、この『大魔術師アブラメリンのイケてる魔法の書』は、メイザースが資金を集めて自費出版をしたものです。しかし、メイザースの夢は虚しく120部程度の爆死となったのでした。

「このエピソード、胸がいたくなるわ。WEB小説家なら、その読者なら、きっと、メイザースに同情せずにはいられないわ。なんかさ、書籍化したWEB作家の爆死の水準に似てる気がするんだもの。」

作者は悲しそうにため息をつく。

「そうですね。」

WEB作家はもう少し部数があるのではないかとは言いづらい雰囲気がしました。

「そうよ。で、よ。この本は後にクロウリーにパクられて出版されるのっ!!

大学でのおぼっちゃまの、放蕩息子のクロウリーにね!もう、腹立つわ。みてよ、この前書き!

その後の細かい説明。一章づつ書いてあるの。説明をよ。

メイザースが初めての書籍にどんなに期待と夢を込めたのか、英語が読めなくてもわかるわよぅ(T-T)

きっと、メイザースは自作をパクるやつを許さないわ。」

作者は興奮気味に言いました。

「でも、我々も著作権が切れて勝手に使っていますし、メイザースも没後100年を経てすっかり丸くなっていますよ。」

そう言った私を作者は少し不満げにみました。とはいえ、私も、丁寧な説明書にメイザースのときめきを感じないわけには行きません。

基本、あらすじを書くのは面倒な作業なのです。なんとなく、気恥ずかしいし、面倒なものです。

そして、あらすじや説明書は本の初めに書かれてはいますが、制作されるのは本を書き終わってからだと思います。全てが終わり、スペルのミスなどを確認、そして、書かれた前書きには書き終わった作者の思いが色濃く浮かんでくるものなのかもしれません。


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