ジョン・M・ワトキンス
「そうね。とりあえず、先に進みましょう。」
作者はパージをめくる。そこには本のタイトルと簡単な説明が書いてあった。
それによると、やはり、この本はアブラハムという人がヘブライ語で書いたものをフランス語で記したものだということと、フランスのアルセナル図書館で見つけたと書いてある。
メイザースが翻訳して、ワトキンスの名前も書いてあった。
この本が共作に当たるのか、それともサポート的なものなのかは私たちには分かりませんが、この人物がこの本を世に出たのはこのワトキンスという人物が大きな役割を果たしはのは確かです。
ワトキンスブック という出版社を立ち上げたのはこの、ジョン・M・ワトキンスといいう人物です。
初めての出版物がこの『大魔術師アブラメリンのイケてる魔法の本』です。
「洋書を読むって面白いわね。ふふ。私、日本の本だったら、こんなに細かいところなんて見ないもん。
ま、それだけ、英語に拒否感があるってことかしら?」
作者は渋い顔をする。
「そうですね。さ、限界突破で次のページに行きましょう。」
私はせかした。この本は思っている以上にボリュームもあるのです。流石にこのペースでは1年では終わりそうもありません。
「待って、このワトキンスって人、怪しさ爆裂よ。あのブラバッキーと知り合いみたいなんだよ。」
作者はため息をつく。ここにきて、この数ページで情報量が満載なのです。
ヘレナ・ペトロヴナ・ブラバァツキー
19世紀のオカルティストである。1874年に活動をするまでの生い立ちは謎のようです。
そして、近代のオカルティストにさまざまな影響を与えた人物です。
神智学協会の創設者の一人としても有名です。
「それにしても、脇の話が勝手に進むわよね。はぁ。この本。本当にすごいわ。」
と、作者は話始めた。
メイザースが生まれたのはロンドンの下町。ハックリーと言うところです。急激な近代化の負の側面があるのです。空気を汚すスモッグ。テームズ川の深刻な汚染。
そして、海外からの移住者です。
インドを領地にしたイギリス人は本国に帰る船に使用人として連れてきた現地人を国に着いた途端に解雇し、帰宅の旅費を稼ぐインド人や黒人、迫害から逃げてきたユダヤ人など、さまざまな人間でごtくたがえしていました。
貧しい家の母子家庭に生まれ、高等教育も受けられなかったメイザースがなぜ、翻訳家として白羽の矢がたったのか?作者はそこが疑問のようでした。
「だって、おかしいと思うでしょ?ゴールデンドーンとか秘密結社の人ってインテリなんだよ?なんで低学歴でちゃんと外国語を学んだこともなさそうなメイザースに翻訳させるのよ?」
作者は渋い顔をする。
「それは、初めに発見したのがメイザースだからではないでしょうか?」
「それだけ?まあ、出版時点でメイザースの名前は知られているとして、翻訳もできるとしてよ?この人の語学力、どう頑張っても怪しいもの。」
作者は眉をひそめた。
「怪しいって。」
「怪しいわよ。いい、確かに複数の言語を操れるなんて人はいるわよ?日本にいるフィリピン人の知り合いは上手に日本語を話すし、他に、英語とフランス語を話せるって言ってるわ。
それは本当だと思うけれど、日常の会話と古文を翻訳するのはスキルが違うのよ。
最近だと、日本でも弥助が問題になったもの。
弥助は果たして侍なのか?これに着いては日本人の大学出のインテリでも意見が分かれているみたいだもの。侍という言葉は、戦時中に一般人にも当てはまるように緩くなっていそうだから、言葉の意味も微妙に違うのよね。今じゃ、スポーツ選手にも侍使うんだから。でも、厳密には違うし、外国人から見た日本の歴史の本なんて、どこか違和感があるじゃない?」
作者は私を見た。
「そうですね。」
「だから、これだけ金持ちでインテリが集まっていたら、低学歴で学のなさそうなメイザースが翻訳するって、それも出版なんてリスクがあると思うし、間違いもたくさんある気がするんだよね。」
作者は渋い顔になる。
「それでも、発見者に初めの権利があるのではありませんか?それに足りない部分はワトキンズが手直ししたのではありませんか?」
私の発言に作者は疑問があるような顔になる。
「手直し、出来れば、ね。私、この本に、世紀末のノストラダムスの色々が見えてくるのよ。」
作者はぼやいた。




